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子どもが生まれたから、仕事も夢も「両方追える」。アートディレクター・千原徹也さんが考えるこれからの育児

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創刊29周年を迎えた「たまごクラブ」「ひよこクラブ」は2022年4月、妊娠期3誌+育児期3誌の計6冊の雑誌に生まれ変わります。そのポスターやWEBなど新創刊ビジュアルを担当したのが、今最も注目を集めているアートディレクター、れもんらいふ代表の千原徹也さんです。後編では3人のお子さんの千原さん流の子育てについて、たまひよ編集統括ディレクターの米谷明子がうかがいます。

ただ不安だった長男誕生時。生後3カ月で僕を目で追うようになって父になれた実感があった

米谷:話題の著書『これはデザインではない「勝てない」僕の人生〈徹〉学』は、千原さんの人生について書かれた本でもあり、家族やお子さんの話も少し書かれています。他ではあまり聞けないと思うので、子育ての話を聞かせてください。まずは今、8才の長男くんが生まれたときのことを教えてください。

千原:会社を立ち上げて1年目とかで、仕事面ではまだまだこれからの時期でしたし、そうじゃなくても、最初の子どもの誕生って不安が大きいですよね。僕は「今までみたいに自由に働けるのかな」とか「生活がどれだけ大変になるんだろう」とかそういうことばっかり考えていたかも。正直な話、長男が生まれた瞬間って「おめでとう」もあったけど、不安の方が大きかった。これから妻とどういう風に接して、この子をどういう人間に育てて、仕事に対してどう向き合っていくのか。全部わからないから、不安な材料が生まれたみたいなのがすごくあったんですけど、3カ月くらいすると、ただ泣くだけだった赤ちゃんが僕を目で追うようになって。「この人と向き合っていけるかも」って思えて、初めて涙が出ました。それがお父さんになった一つの瞬間だったかもしれないです。そういう経験をしたから、これから父になる男友達には「最初の3カ月はわかんないよ」って言ってます(笑)。

米谷:お子さんと認め合う存在になったとき、千原さんの気持ちにどんな変化がありました?

千原:初めて喜びが生まれたかな。家族を持つ喜び、「この人と生きていくんだな」って喜びというか。

米谷:ご結婚されたときもそういう気持ちになられたと思うのですが、子どもが生まれるとまた喜びが増えていきますよね。

千原:子どもに「おめでとう」もあるんですけど、自分への「おめでとう」もあるというか。育てていく中で日々学ぶこともたくさんあるから、実感という意味では長男が目で追い始めたときが一番大きかったです。

米谷:現在6才のお二人目の長女が生まれたときはどうでしたか?

千原:長男のとき以上に不安が勝っていました。「こんなにがちゃがちゃした子育てで大変なのに、2人になったらどうなんの、この家!?」って。ただ、2番目が生まれたことで、長男がお兄ちゃんになるんだな、とは思いました。一緒に育てているけど、今は違いが出てきて、長男はホラー映画も平気だけど、2番目の長女は戦隊ものでも怖い、好きじゃないって。最近はバレエを習い始めたり、きゃりーぱみゅぱみゅの大ファンで朝から晩までずっと踊っているんですよ。育て方はもちろん同じですが、きょうだいでも違っておもしろいなって。

米谷:3番目のお子さんは、上二人のお子さんと少し年が離れていますね。

千原:もう少しで2才になります。二人育てて僕も妻も育児の仕方がだんだん見えてきたから、三人目って純粋にかわいいに特化できますね。あと3番目の子は、「夏十(なっと)」って名付けができたことが、より彼女に対して思い入れを持てたというか。僕は市川崑監督に影響を受けていて、夏十は奥様で脚本家の和田夏十さんからとっています。和田夏十さんは脚本もおもしろいし、その生き方も素晴らしい。夏十って名前を思いついたら、和田夏十さんみたいになってほしいって確固たるものが生まれたんです。仕事でも最初にネーミングをすると言いましたが、やっぱり名前をつけるのは大事。珍しい名前ではあるから、将来「納豆さん」って言われるようになると思うんですよ。でもそのときがきたら谷川俊太郎さんが編集した『和田夏十の本』(晶文社刊)を読ませて説明します。

これからは男性も仕事と育児を混ぜていくことが必要

米谷:お子さん、特に一人目のお子さんが生まれて、千原さん自身も次のステージに進んだ感じはありましたか?

千原:ありましたね。それまでは自分の夢である映画を作りたいとかサザン・オールスターズのジャケットを手掛けたいとか、自分の人生の方が勝っていましたが、だんだん育児と夢の両方があるからがんばれるってことがわかりました。子育てだけだと苦しいこともあるかもしれないし、夢だけ追っているとしんどいこともあるかもしれない。でも育児をしながら夢も追うことが相乗効果になって、両方がんばれる。僕はそういうタイプなんだって気づかされました。両方乗り切れることは、これから妊娠・出産で自分のしたいことを諦めないといけないと考えている女性にも希望だと思います。

米谷:今はチームで育児をする時代。男性にとっても仕事と子育ては両輪になると思います?

千原:できるはずです。僕も子どもが生まれる前は、疾走し続けることが仕事に命を注ぐことだと思っていました。だって映画監督のインタビューとか周辺の人から語られるエピソードって、家庭を顧みずに子どもたちが成長して初めて会話したとか、海外にロケハンに行ったら一生帰ってこないとか、そんな人多いですもん。でも日々子どもと接していると変わりますよね。僕の場合は仕事か育児の片方だけにすると、どっちも中途半端になる。僕は映画を作りたい夢を抱えながら、子どもをちゃんと育てる。両方を混ぜながら仕事をしていくと腹をくくりました。

米谷:子どもを持ったから、たどり着いた考えですね。

千原:子どもがいなかったら、無茶苦茶していたかもしれないですね(笑)。でも仕事と育児を混ぜていくってのはすごく大事だなって思います。
僕はいい意味でその場でアイデアと瞬発力で仕事をしてるから、あまり戦略的には子育ても考えてないですが、時々僕は撮影とか打ち合わせに子どもを連れて行くんですよ。学校では仕事のことを教えてくれないじゃないですか。だったらいろんな職業の人に会わせて、世の中にはこういう仕事もあるんだよって教えると選択肢も広がる。それに父親がどんな仕事をしているのかを見せるのは、子どもにとっても大事なこと。僕は、言葉でも伝えていますよ。長男には「自分で何かをなし得ないと、何も依頼されない人生になってしまう。与えられた仕事だけをしていたら、定年退職後に誰からも年賀状が来なくなるよ(笑)。自分で選択していくのは大事だよ」って。

米谷:そういう姿を見せたり、話しをすると、お子さんはどういう反応をしますか?

千原:ふんふんって聞いていますよ。でも間違って受け取っていることもあるので、そういう場合は理解できるように伝え直しもします。この間もだめなことをしているのを発見したから「自分がされてどう思うの? 自分が嫌な気持ちになることを、友達にもしてはいけないよね」って1時間くらい話したり。僕もそうでしたけど、子どもは間違いを犯すから、コミュニケーションしながら発見しないといけない。間違いに気づかないで放置して成長するのはよくないので、その場でしっかり伝えています。

米谷:千原さんのお話をうかがっていると、お子さんとしっかり時間をとってコミュニケーションをとっているのがわかりますね。こんなにオファーが多いアートディレクターで、忙しいと、ピリピリしたムードを家庭に持ち込みそうなことはありませんか?(笑)

千原:職業病かもしれないんですけど、撮影現場の僕の一番の仕事は空気をよくすることだと思っていて。現場で打ち合わせと違っていたら、どんどん空気が悪くなっていく。いいムードで進めるためには、事前の準備がちゃんとできているかどうか。だからカメラマンとしっかり打ち合わせして、スタッフにはお弁当についてまで伝えます。そして家では、休日だからと家でダラダラしていると、空気が険悪になること、ありますよね。僕はそれが嫌で休日でもスケジュールを決めておきます。前夜に「明日の朝は、朝ごはんを買いに行こうよ」って子どもに提案すると子どもはワクワクしながら寝るし、パッと起きます。妻も作らずにすむし、何を買ってくるのか楽しみになるじゃないですか。だから家庭でも空気を悪くしないのは事前準備が大切です(笑)。

米谷:なかなか聞けない千原さんの育児のお話を、たまひよに教えていただきました。今、子育てしている人や将来妊娠・育児をする若い世代に伝えたいことはありますか?

千原:いろんな視点で育てることが大人にも子どもにも大事で、みんなで子育てをした方がいいと信じています。子どもには自分の家をスタンダードにせず、家庭ごとにルールがあり、みんなそれぞれ違うことを理解してほしい。育児中の人も自分以外の考えを取り入れながら育てる方がいいし、子どものいない人も子どもに触れる機会はあった方がいい。そういった点では、仕事場に子どもがいるっていいことじゃないかな。事務所にうちの子どもが遊びにくることもあって、スタッフと子どもが一緒に昼食を買いに行ったりする。スタッフは仕事の中で子育てを理解できるし、育児の予行練習になるかもしれない。巻き込まれた側は、戸惑うかもしれないですけど、仕事の中に育児を入れ込んでいくのはこれから必要なスタイルなんじゃないかなと思っています。

千原さんが手がけた「たまひよ6」のビジュアル

千原徹也

PROFILE
アートディレクター/株式会社れもんらいふ代表
広告、ブランディング、CDジャケット、装丁、雑誌エディトリアル、ドラマ、CMなど、アートディレクションするジャンルは様々。 その他に、テレビ東京 水ドラ25「東京デザインが生まれる日」監督、「勝手にサザンDAY」企画主催、J-WAVE「Lypo-C DESIGN ENERGY」ナビゲーター、東京応援ロゴ「KISS,TOKYO」発起人、富士吉田市×れもんらいふのコミュニティ「喫茶檸檬」運営など、活動は多岐に渡る。 れもんらいふは2022年、新たな展開として映画制作を進めている。 https://lemonlife.jp/


撮影/柳原久子(water fish)
文/津島千佳

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