つかまり立ちで指を切断した赤ちゃんも。折りたたみ式踏み台の指挟み事故に注意!【専門家】

国民生活センターでは「樹脂製の折りたたみ式踏み台での指挟みに注意――乳幼児が手指の先を切断する事故が発生しています――」と題したリリースを出し、注意喚起をしています。子どもが樹脂製の折りたたみ式の踏み台に指を挟んで、切断するなどの情報が複数寄せられているそうです。子どもの事故に詳しい小児科医 山中龍宏先生に、事故を防ぐポイントと、万一、けがをしたときの応急処置について聞きました。
つかまり立ちをしていて、指を切断した10カ月の赤ちゃんも
事故が報告されている樹脂製の折りたたみ式踏み台(写真参照)は、収納時には天板を持ち上げて折りたたみ、使用時には天板を水平に広げて、天板の上に乗ることができる構造です。ホームセンターや通販サイトなどで販売されています。
高いところにあるものを取ったり、子どもが洗面台で手を洗ったりするときに使うと便利なため「愛用している!」というママやパパもいるのではないでしょうか。
しかし山中先生は、子どもがいる家庭では使わないほうがいいと言います。
「事故が報告されている樹脂製の折りたたみ式踏み台は、乳幼児の力でも容易に天板を持ち上げることができます。
また天板を持ち上げて折りたたんだり、広げたりすることで、天板と脚部、ヒンジのすき間の大きさが変化し、そこに指を挟んでしまうと大けがにつながります」(山中先生)
国民生活センターからは、次のような事故事例が報告されています。
【その1 1歳2カ月の子の事例】
2021年12月、保護者が折りたたみ式踏み台の座面の取っ手部分を持ってたたんだ際に、1歳2カ月の男の子が踏み台の脚部分に手指を挟む。左手小指から出血し、止まらないため受診する。踏み台は、上の子用に購入したものである。
【その2 1歳2カ月の子の事例】
2021年12月、1歳2カ月の男の子が、自宅で折りたたみ式踏み台を触っていたところ、上の子が踏み台を横に引っ張った。保護者が注意すると、上の子がより強く引っ張ってしまい、踏み台が折りたたまれて、1才2カ月の子の右手人差し指が踏み台の側面上部に挟まって切断された。
【その3 10カ月の子の事例】
2021年9月、10カ月の男の子が折りたたみ式踏み台につかまり立ちをしたところ、指の先端が挟まれて切断された。
国民生活センターでは、つかまり立ちの調査をしたところ、1歳児が天板付近につかまり立ちをすると、折りたたみ式踏み台の高さが低いほど、上から体重をかけるような姿勢になることがわかりました。
「指を挟んだときに体重をかければ、子どもの体重でも指を切断する危険性は高まります」(山中先生)
また表示に関して調べたところ「手指等の身体を挟み込んで受傷する危険性について注意事項を記載した銘柄はなかった」としています。
1歳では直径1.4cmの丸い穴だと、人差し指が根元まですっぽり入る
「折りたたみ式踏み台に子どもが指を挟み、まさか指が切断されるなんて!」と驚いたママやパパもいると思います。
「子どもの指の骨は細くてやわらかいため、大きな力が加わらなくても切断されることがあります。
また子どもの指は、小さい穴にも入ってしまいます。
たとえば幅3cm×高さ1.2cmの穴だと、1歳の子は人差し指の根元まですっぽり入ります。2歳、3歳の子では、幅3cm×高さ1.4cmの穴だと人差し指の根元まで入ります。
丸い穴の場合は、1歳では直径1.4cm、2歳では直径1.5cm、3歳では直径1.6cmの穴だと、人差し指の根元まで入ります。
前述の事故事例では、10カ月の男の子がつかまり立ちをして、指の先端を切断していますが、指先ならばもっと小さな穴に入ります。ママやパパが気づかないうちに、小さい穴に指を入れて大けがをすることはよくあります」(山中先生)
それでは、どうしたら事故は防げるのでしょうか。
「国民生活センターから報告されたのは、指を深く切ったり、切断する事故事例ですが、指を骨折する危険性もあります。また子どもだけでなく、ママやパパが指を挟む危険性もあるので大人も注意が必要です。
なかには“よく子どもを見ていれば大大丈夫”と思うママやパパもいるかもしれませんが、常に子どもから目を離さないというのは無理なことです。どうしても踏み台が必要という場合は、折りたたみ式でないものを選んでください」(山中先生)
指を深く切ったとき・切断したときの応急処置
万一、指を挟んで深く切ったり、切断したりした場合の応急処置のしかたを紹介します。
【指を深く切った場合】
1.傷口を水で洗い流す。消毒液は使わない。
2.傷口に清潔なガーゼを当て、その上から包帯を強めに巻いて止血をする。
包帯がない場合は、清潔なタオルを巻いて、しっかり押さえて止血する。
手は心臓より高い位置に上げる。
また止血の際は、傷口だけを押さえるのではなく、指の付け根もしっかり押さえる。
3.10~15分ぐらい止血しても血が止まらない場合は、すぐに外科、形成外科を受診する。
【指を切断した場合】
1.すぐに救急車を呼ぶ。
2.傷口に清潔なガーゼを当て、その上から包帯を強めに巻いて止血をする。
包帯がない場合は、清潔なタオルを巻いて、しっかり押さえて止血する。
手は心臓より高い位置に上げる。
また止血の際は、傷口だけを押さえるのではなく、指の付け根もしっかり押さえる。
3.切断された指は、再接着できる可能性があるので、切断された指を濡れたガーゼに包み、清潔なチャック付きポリ袋などに入れる。それを氷水入りの袋や容器に入れて、医師に渡す。
「指を深く切ったり、切断をしてしまった場合は、かかりつけの小児科に行っても縫合ができません。そのため縫合ができる外科、形成外科などを受診しましょう。近所にない場合は、救急車を呼んで構いません」(山中先生)
お話・監修/山中龍宏先生 協力・写真提供/独立行政法人国民生活センター 取材・文/麻生珠恵、たまひよONLINE編集部
国民生活センターでは、樹脂製の折りたたみ式踏み台に万一、子どもが指を挟んだ場合の実験動画を紹介しています。ウインナーソーセージを子どもの指に見立てて実験を行っていますが、動画を見ると折りたたみ式踏み台に指を挟むことが、いかに危険かがわかります。
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