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スマホ、タブレットにあやされて育つと、子どもはスマホ、タブレットと愛着形成を築く!?【専門家】

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リビングルームでスマートフォンを使用して若いアジアの母と赤ちゃん
●写真はイメージです
itakayuki/gettyimages

令和4年3月、内閣府が発表した「令和3年度 青少年のインターネット利用環境実態調査」によると、0~2歳代でもインターネットを利用している子が多くいました。0~2歳代のスマホ、タブレットの使用について東京女子医科大学名誉教授の村田光範先生に聞きました。村田先生は、『デジタル時代の子育て 年齢に応じたスマホ・パソコンとのつきあい方』(イザラ書房)の監修も務めています。

子どもは、スマホやタブレットで動画などを見ると現実世界と誤認しやすい

令和4年3月、内閣府が発表した「令和3年度 青少年のインターネット利用環境実態調査」によると、「インターネットを利用している」と答えた、0歳は95人中約11人(11.6%)、1歳は163人中約55人(33.7%)、2歳は195人中約122人(62.6%)でした。
2歳になると60%以上の子が、インターネットを利用しています。

「0~2歳代で、スマホやタブレット、パソコンなどを見ることの問題点は、健やかな成長の妨げになるのではないかということです。スマホやタブレットを見ることは、テレビの視聴と同じように思われがちですが、スマホやタブレットはすぐにインターネットにつながります。動画を見ていると“おすすめ動画”が次々と出たりしてキリがありませんし、親がそばで見守っていなければ、子どもがどんな動画に夢中になっているかもわかりません。
もちろん子どものテレビの視聴にも注意点はありますが、スマホやタブレットはより注意が必要です」(村田先生)

0~2歳代のスマホやタブレットの使用は、親子のコミュニケーションなどにも影響を与えるのではないか、と村田先生は言います。

「脳は動くものを実物と認識する特性があります。スマホやタブレットなどの画面で、とくに音声つきの動画などを見続けていると、それは現実世界のできごとだと脳は誤認しやすいのです。
大人は現実世界を知っているので大きな問題は生じないのですが、現実世界での経験が未熟な0~2歳代の子への影響は計りしれません。
機嫌が悪くなったり、泣いたり、暇なときなどに、子どもにスマホやタブレットなどを見せる習慣がつくと、0~2歳代の子どもはいつしかスマホやタブレットと愛着形成を築くようになってしまいます。
愛着形成とは、子どもの心の発達の基礎となるもので、特定の養育者(ママやパパなど)と結ぶ心の絆(きずな)です。“機嫌が悪いときに、いつもあやしてくれるのはスマホやタブレット”“いつも遊んでくれるのはスマホやタブレット”という関係性が定着すると、子どもはしだいにママやパパではなく、スマホやタブレットと愛着形成を築いてしまいます」(村田先生)

スマホやタブレットの習慣化で愛着形成が築けないと、子どもの心に影響が

0~2歳代の子育てで、親子でしっかり愛着形成を築くことは、その後の子どもの育ちや親子関係に深く影響します。
愛着形成を築くことは、決して難しいことではありません。子どもが泣いたときに「どうしたの?」と優しく言葉をかけたり、転んだとき「大丈夫?」となぐさめて抱っこしたり・・・。日々のお世話やスキンシップを通して、子どもは自然とママやパパに信頼感を寄せて、愛着形成を築きます。

しかし村田先生は、0~2歳代でスマホやタブレットなどを見せ続けていると、親子の愛着形成が築きにくくなると言います。

「スマホやタブレットを見ていると、機嫌がよくておとなしいため、ママやパパがあやしたりして、子どもの心に寄り添う機会が減ってしまいます。
子どもがスマホやタブレットにばかり夢中になっていれば、スキンシップも減ります。
愛着形成は0~2歳代でしっかり築いておくことが大切だと考えられています。愛着形成が築けていないと、情緒不安定になりやすいなど、子どもの心に影響が出てきます」(村田先生)

1年後、2年後、3年後、4年後・・・のわが子の成長を考えて

0~2歳代は発達が著しい時期です。手指を使って遊んだり、体全体を使って遊んだり、人とさまざまに触れ合うことなどで成長が促されます。

「乳児期は、家の中でもはいはいをしたり、つかまり立ちをしたり、伝い歩きをたくさんしてほしいのですが、住環境によっては家の中ではいはいや伝い歩きが十分にできないこともあります。
そうした環境の中で、スマホやタブレットなどを見せる習慣がつくと、0~2歳代の成長で必要な体を動かす時間も減ってしまいます。

子どものスマホやタブレットの使用は、本来はママやパパがルールを決めることが必要ですが、ママやパパ自身、スマホやタブレットを多用している現代においては、ルールもあいまいになりがちです。また小学校に入学すれば1人1台タブレットが配布されるなどして、ICT教育が行われます。スマホやタブレットに触れる機会は、どんどん低年齢化していますが、せめて心や体、脳の発達の基礎を築く0~2歳代はスマホやタブレットなどにはできるだけ触れさせないでほしいと思います」(村田先生)

なかには「スマホやタブレットを見せないと、家事などができない!」というママやパパもいると思います。

「“ママやパパが忙しいときは、時間を決めてスマホやタブレットを見せてもいい。ただし長時間にならないように注意しましょう”という専門家もいますが、私は1年後、2年後、3年後、4年後・・・のわが子の成長のことを考えてみてほしいと思います。

たとえば0~2歳代では、微細運動の発達が必要です。微細運動とは、積み木、ブロック、パズル、シール貼り、ひも通しなど手指を使った遊びをすることではぐくまれ、目で見たものをつまむなど、体の複数の部分を連携させる重要な運動です。
0~2歳代は、スマホやタブレットなどをやめて、積み木やブロックなど指先を使うおもちゃで遊ばせたり、親子で公園遊びをする時間を増やしたり、お散歩を楽しむなどしましょう。現実の世界での体験が、子どもの健やかな成長には欠かせません」(村田先生)

お話・監修/村田光範先生 取材・文/麻生珠恵、たまひよONLINE編集部

村田先生は、乳幼児期すべての年齢でスマホ、タブレットの使用はやめたほうがいいとは言いません。「3歳からならルールを決めたうえで、適切に与えてもいい」と言います。ただし0~2歳代で親子の愛着形成がしっかり築けていないと、3歳以上になってスマホやタブレットを使用したとき「ごはんだから、もうやめなさい!」とママやパパが声をかけても、「もう少し待って」と言ったり、かんしゃくを起こすなど困る場面が増えることも心配されるそうです。

●記事の内容は記事執筆当時の情報であり、現在と異なる場合があります。

村田光範先生(むらたみつのり)

PROFILE
小児科医。医学博士。東京女子医科大学名誉教授。現在は、和洋女子大学大学院 総合生活研究科客員教授。長年、子どもの成長研究に取り組む。著書は「子どもが太りはじめたら読む本」(PHP研究所)など多数。

『デジタル時代の子育て 年齢に応じたスマホ・パソコンとのつきあい方』

ドイツで出版され、英語、オランダ語、アラビア語などに訳された注目の本。子どもへのスマホ、タブレット、パソコンなどの弊害や使わせるときの注意点がわかる。ミヒャエラ・グレックラー、村田光範・監修、内村真澄・翻訳/2090円(イザラ書房)

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