子どもと一緒の外出先で、異性のトイレを使うのは何歳までいいの?【ママ泌尿器科医】
ママであり泌尿器科医でもある岡田百合香先生の連載第34回。今回のテーマは、「異性の親子での外出先のトイレ使用について」。ママ・パパなら1度は考えたことがあるのではないでしょうか。明確な答えはないものの、子ども本人の意思を大切にしながらも安心して使用できるトイレについて考えます。「お母さんのためのおちんちん講座」ママ泌尿器科医#34です。
異性の親子での外出先のトイレ、どうしてる?
「異性の親子の入浴は何歳まで?」というのはよく話題になるテーマですが、同様に「異性の親子での外出先のトイレ」も悩ましい問題。
異性の親子でお出かけして、子どもがトイレに行く場合、皆さんはどうしていますか?
2011年3月に熊本のスーパーで、父親と買い物をしていた3歳の女の子がトイレで殺害されるという衝撃的な事件がありました。
トイレで起こる犯罪は後を絶たず、私自身も幼少期に親から「公園のトイレは不審者がいるから、絶対に使ってはダメ」と言い聞かされてきました。
私の場合は、トイレ=危険な場所という認識があり、息子と外出先でトイレに行くとき、これまでは息子を女子トイレに連れて行っていました。しかし、最近は「ぼくは男の子なんだから、女の子のトイレには行かない!」と言うことも。
その主張は、至極当然で大切にしてあげたいと思う反面、やはりまだ5才の息子を一人で男子トイレに行かせることには大きな不安があります。
トイレの外から「ママ外で待ってるからね!」と声をかける方法もあります。子どもだけでトイレを利用するしかない状況下では、やらないよりやったほうが良いのはもちろんです。
ただ、「捕まっても構わないから、欲望を満たしたい」「騒がれたら傷つけてしまおう」と考えている人間が中にいた場合、外から声をかけるだけでは防ぐことはできません。
熊本の事件でも、父親がほんの一瞬目を離したすきにわいせつ目的の男に個室に連れ込まれ、その場で殺されてしまっています。
私は、トイレでの犯罪から子どもを守るために、多目的トイレがある場合は多目的トイレを使うようにしています。
多くの多目的トイレにはオムツ交換台が置いてあり、子連れ利用も想定されていることが分かります。
ただ、異性の親子やベビーカーの方が多目的トイレを利用しようとすると、「障害者じゃないのに使うな!」と心無い言葉をぶつけられたという体験談もちらほら。
少し前までは「障害者用」トイレと言われていましたが、今は「多目的」トイレ。
身体的な障害に限らず、色々な事情を持つ方が心地よく利用することが目的とされています。
目に見えるものだけがすべてではない
それぞれの必要度を他人が勝手にジャッジするのも問題。
以前、外出先のトイレで並んでいた時、多目的トイレから若い男性が出て来ました。
それを見て、隣で並ぶ女性たちが「あの人、若くて元気そうなのに多目的トイレ使ってたね」とヒソヒソ話しているのが耳に入りました。
泌尿器科で働いていると膀胱がんの手術で膀胱を摘出した人や、排泄の病気を持っている人にたくさん出会います。そのような方々はストーマやカテーテルの処理のために多目的トイレを使う必要があります。
ただ、外見だけでは全く分かりません。若くてパッと見は健康で元気にしか見えない方もいます。
その若い男性も、外からは分からない排泄の病気や障害を持っていたかもしれません。そうでなくても、その時多目的トイレを使いたい何か事情があったのかもしれません。
多くの人がイメージする「困っている人像」に当てはまらなくても、人はそれぞれ困りごとや事情を抱えています。
「あなたは困っているから多目的トイレを使える」「あなたの困り具合は大したことないから我慢して普通のトイレを使いなさい」なんてジャッジして、使用を制限するのではなく、それぞれの立場の人がみんな快適に安全に安心して使えるトイレを普及させる方向で協力していきたいものですね。
最近は子ども専用トイレや親子トイレを設置する施設や駅も増えてきています。
保護者や子ども自身が安心して使えるトイレがこれからどんどん増えていくことを願っています。
構成/たまひよONLINE編集部
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