親は毅然とした態度で。子どもにへりくだるのはNG!小児脳科学者による乳幼児のための子育てメソッド
小児脳科学者の成田奈緒子先生は、「その時々の子どもの発達において、何が大事なのか。目の前のわが子が一生幸せに暮らすための軸を何にするかを考えてみてください」と話します。
乳幼児は、どのような軸を持って育てるといいのでしょうか。新刊『高学歴親という病』が話題になっている、成田先生に聞きました。
子どもに「謝りなさい」と言う前に、ママ・パパが謝る姿を見せて
子どもは親の姿を見て、まねして育ちます。幼児期から、親の姿を見て学んでほしいことの一つに礼儀があります。
――乳幼児の子育てで、まず親が心がけたほうがいい、大切なことを教えてください。
成田先生(以下敬称略) まず礼儀として、ママ・パパ自身が素直に謝れる人になりましょう。ママ・パパは、何かあったとき子どもに「謝りなさい」「ごめんねは?」などというのに、自分自身は謝れない人が多いと感じています。
私が代表を務める、子育て支援事業「子育て科学アクシス」に相談に来る方の中にも、「うちの子、謝らないんです」と言う母親がいました。しかし、その母親は私たちとの約束の時間に10分ほど遅刻して到着したのに、私たちにはいっさい謝りませんでした。何事もなかったかのように、子どもの相談をし始めるのです。
子どもはママ・パパの姿を見て育ちます。ママ・パパが謝らなければ、子どもだって謝らなくなります。
――ほかに乳幼児の子育てて心がけたほうがいいことはありますか?
成田 遊びへの過干渉もやめたほうがいいことの一つです。積み木やブロックなどのおもちゃは、子どもにとっては正しい遊び方なんてありません。ビニールに入っているブロックを振って、ガチャガチャする音を楽しんだりするだけのこともあります。それでいいんです。
でも「〇〇くん、ブロックってこうやって遊ぶのよ」と、正しい遊び方を教えがちなママ・パパがいます。こうしたかかわり方を続けていると、自分で考えながら遊ぶ力が養われません。
乳幼児の遊びは、型にはめる必要はないのです。自由に遊ばせてあげてください。
――子どもが遊んでいる間、ママ・パパは横で見守っているほうがいいのでしょうか。
成田 もし親子で遊ぶならば、失敗する姿を見せてあげてください。積み木を積んで、わざと失敗して崩し「〇〇くんなら、ママより高く積めるかも~」と言うと、子どもはワクワクしながらチャレンジすると思います。
ママ・パパが子どもに失敗する姿を見せたり、自分の失敗談を話したりすることは、小学生以降の子育てでも取り入れてほしいです。親が完璧すぎるのは、子どもにとって重荷です。
2歳になったら、危険なことは毅然とした態度で厳しくしかって
成田先生の著書『高学歴親という病』の中では、「親として毅然(きぜん)とした態度を貫く」とあります。友だち親子が増えている昨今、親として毅然とした態度を貫くことの必要性を聞きました。
――乳幼児の場合も、親が毅然とした態度を貫いたのほうがいいのでしょうか。
成田 しかり方がその一つです。2歳になったら、危険なときはしっかりしかってください。赤信号なのに飛び出そうとしたり、車から降りた途端に、1人で走って行ってしまうなど命の危険があるときは、厳しく言い聞かせてください。
なかには、命の危険があっても「ダメよ~。危ないよ~」と優しく言い聞かせるママ・パパがいます。その割には、「お友だちに謝りなさい。ごめんねは?」などと厳しく注意をしたりします。
前述のとおり、ママ・パパが謝る姿を見せていれば、自然と子どもは友だちに謝れるようになります。
お願い事のときは敬語を使わせて! 子どもにへりくだる必要はありません
成田先生は、親子間での言葉づかいも気になると言います。
――「親として毅然とした態度を貫く」というと、友だち親子はダメなのでしょうか。
成田 親子の仲が円満なのはいいことです。しかし親子であっても礼儀は必要です。
2歳ごろからは、ママ・パパにお願いするときだけは、子どもに敬語を使わせたほうがいいと思います。「お茶ください」「絵本取ってください」など、簡単な敬語でいいです。
過剰な上下関係を求めている訳ではないのですが、友だち親子の関係がずっと続くと、子どもがどんどんエスカレートしていきます。子育て支援事業「子育て科学アクシス」に相談に来る親子でも、子どもが小学校高学年ぐらいになると、ママが話しかけても無視したり、「ウザイ」「知らない」しか答えない子がいます。しかもママも怒りません。こうした親子関係が築かれてしまうと、ここから立て直すのはかなり大変です。
――ほかに親子の会話で気になることはありますか。
成田 ママ・パパが、子どもにへりくだることも気になります。
子どもが「今日のカレーおいしくない」と言ったとき、「今日は、りんご入れなかったからだ! ごめんね」などと謝るママがいるのですが、謝る必要なんてありません。カレーを作ってあげたのですから、それで十分です。「おいしくないなら食べなくていいよ」と言っても構いません。
子どもとのかかわり方を見直して、心配を信頼に変えよう
子どもが自立していくためには、心配を信頼に変えることが必要です。ママ・パパがかかわり方を見直すことで、心配は少しずつ信頼に変わっていくそうです。
――著書の中に「子育ては心配を信頼に変える旅」とありました。乳幼児をもつママ・パパは、どのようなことを心がけていくといいのでしょうか。
成田 子育てが不安だから心配になるんですよね。乳幼児のうちは、心配事が多くて当たり前なのですが、ママ・パパの考え方一つで心配はやわらいでいきます。
たとえば理想の育児にとらわれ過ぎていませんか? 育児は、ママ・パパの思うようにはいかないものです。
心配だからと、ママ・パパが過干渉になると子どもの成長に影響を及ぼします。「私は過干渉になっていない!」と思っていても、知らず知らずのうちに子どもの意見を聞きもせず、「〇〇ちゃんはオレンジジュースだよね」「こうすると線路がつながるよ」などと、先回りして言ってしまったり、教えてしまうことはありませんか。
子どもが考えたり、選んだりする前に“最適解”を提示してしまうのはよくありません。こうしたかかわり方を繰り返していると、しだいに子どもは自分で考えなくなるし、自分の気持ちが言えなくなってしまいます。
そうするとママ・パパは「うちの子、自分が思っていること言えないから・・・。幼稚園で友だちにいじめられないかしら?」とますます心配するようになります。
乳幼児期から、子どもとのかかわり方を見直して、子どもへの心配を信頼に変えていってほしいと思います。
――最後に乳幼児期に必要な子育ての軸について教えてください。
成田 これまで話して来たように「親の背中・姿を見せる」「過干渉にならない」「子どもに毅然とした態度をとる」「子どもにへりくだらない」「先回りしない」ことです。
過干渉と先回りは同じようなことですが、頭のいいママ・パパほど先の見通しがつくので、過干渉になったり、先回りしたりする傾向があります。しかし子育ては見通しを立てると、心配が増えるだけでいい結果に結びつきません。
乳幼児期から、ママ・パパがしっかりした子育ての軸をもって、自分の気持ちを言葉に出して言えて、自分で考えて行動できる子に育ててほしいと思います。
取材・文/麻生珠恵、たまひよONLINE編集部
成田先生が代表を務める、子育て支援事業「子育て科学アクシス」には、子育てに悩みを抱えた小、中、高校生のママ・パパたちが相談に訪れます。成績優秀だった子が不登校になったり、学校での問題行動が増えて、先生から親が注意を受けることが多くなり、追い詰められて成田先生のところに相談に来るそうです。しかしこうした問題は、急に起こるわけではなく「乳幼児期からの育て方や親子関係にも原因がある」と成田先生は言います。
●記事の内容は記事執筆当時の情報であり、現在と異なる場合があります。
『高学歴親という病』
高学歴な親はなぜ子育てに失敗しやすいのか? 高学歴家庭に引きこもりが多いのはなぜか? 具体的な事例を交えた高学歴親のための育児メソッド。成田奈緒子著/990円(講談社+α新書)