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10カ月のときにSMAと判明し、すぐに治療を開始。しかし発見が遅れたため、息子は介助生活に【医師監修・体験談】

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10カ月で診断がついたときの桜佑くん。寝返りができず、首すわりも後退。

脊髄性筋萎縮症(以下SMA・エスエムエー)は、遺伝子の病的変異によって起きるまれな病気で、しだいに筋力が低下していき、治療薬がなかった時代は、多くは生涯立つことも歩くこともできなくなる病気でした。出生2万人に対して1人前後の発症率といわれています。
西陽子さん(仮名)は、5歳と3歳の子どもがいて、2人ともSMAと診断されています。上の子・桜佑(おうすけ)くん(仮名)がSMAと診断されたときのことや、下の子・凛桜(りお)ちゃん(仮名)を授かったときのことについて聞きました。3回シリーズの2回目です。

こども病院では、最初から神経内科へ。遺伝子検査を受けて10カ月でSMAと判明

11カ月の桜佑くん。SMAの治療のため入院する当日。

桜佑くんがSMAと診断されたのは、10カ月になってからです。陽子さんは里帰り出産をしていますが、実家にいる間、発達の遅れが気になったものの、実家近くの総合病院の小児科で「発達には個人差があるから、経過観察」といわれていて、様子を見ていました。そのためSMAと判明するまでにだいぶ時間がたってしまいました。

「里帰り出産から自宅に戻り、夫と一緒に9カ月の桜佑を連れて、こども病院に行きました。こども病院は、実家にいるときにかかっていた総合病院の小児科で紹介してもらいました。私たちが案内されたのは、最初から小児神経内科です」(陽子さん)

小児神経内科は、運動・知能・感覚・行動または言葉の障害など脳、神経、筋に何らかの異常がある小児の診断、治療を行う科です。

「桜佑は9カ月になっても、おすわりができないだけでなく、首すわりも後退していました。3カ月ごろに首がすわったはずなのに、しだいに首がやわらかくなっていきました。おふろに入れるときも、まるで低月齢の赤ちゃんのように、ベビー用のバスベッドに寝かせながら、私が体を洗ってあげたりしていました。起き上がったり、はいはいで移動したりしないので、ベビー用のバスベッドをずっと使っていられました。

こども病院では、そうした桜佑の発達の様子を診たり、血液検査、神経伝導速度の検査などをしました。初診から約1カ月後に受けた遺伝子検査でSMAと判明。遺伝子検査を受けてから、SMAと判明するまで10日ほどかかりました。土曜日に先生から直接電話をもらって、『検査の結果が出たので、週明けの月曜日、病院に来てください』と言われました」(陽子さん)

たまたま見つけたSMAの子の画像と、わが子の症状が似ていて激しく動揺

6カ月ごろの桜佑くん。歌が大好きで、ママが歌ってあげるといつもにこにこ笑顔に。

陽子さんは検査を受けたあと、SMAと診断される前に「もしかしてSMAでは?」と疑ったことがありました。

「発達遅滞とか、桜佑の気になる様子を入力してネット検索しているうちに、たまたまSMAをもつ子の画像を見つけました。あお向けに寝かせるとカエルのように足が開いて、ペタッと足が床についたりする姿が桜佑と同じで、『もしかして桜佑もSMA?』と思いました。後から知ったのですが、カエルのように足が開くのは、SMAの代表的な症状です。その画像を見たときは、心臓がバクバクして動揺しました。あのときのことは、今でも忘れられません」(陽子さん)

SMAと判明したら、すぐに入院して「スピンラザ」を投与し治療を開始

リハビリのため入院中の1歳8カ月の桜佑くん。座るとき姿勢を保つことがまだできず、胸にある青いベルトで姿勢を固定。

陽子さんと夫が月曜日、こども病院に行くと先生からSMAと病名を告げられ、治療の説明を受けました。2023年5月現在、SMAには3種類の治療薬がありますが、当時は、2017年7月に製造・販売が承認された「スピンラザ」しかありませんでした。

「先生はSMAの病気の説明が書かれたパンフレットを私たちに見せながら、ていねいに病気のことを説明してくれ、すぐに治療が必要だということを強調して話してくれました。
先生の話を聞きながら、私はやっぱり画像で見た子と同じでSMAだった・・・と思い、動揺しました。
しかし同時に治療ができるということで、これでやっと前に進める!という希望も感じました。夫も私と同じ思いだったようです。

桜佑は、すぐに入院して治療を開始しましたが、もう11カ月になっていました。スピンラザは、一定期間ごとに背中から脊髄のところに注射をします。桜佑は5歳になった今でも、定期的にスピンラザを投与しています」(陽子さん)

桜佑くんの生活は介助が必要で、ママはSMAの発見が遅れたことを後悔

車いすで外出する4歳の桜佑くん。

SMAは、早期に発見し、早期に治療を開始するほど治療効果が高まります。早期発見、早期治療ができると、1人で歩けるようになる子もいます。

「桜佑は、診断が遅れてしまったため現在生活のほぼすべてに介助が必要で、車いすを使っています。

幼稚園に在籍していて、2023年4月からは年長さんです。でも、新型コロナが流行してからは、ほとんど幼稚園には行っていません。桜佑は風邪をひくだけで食べられなくなり、体力が落ちてしまうので入院が必要になることもあります。ひどいときは2~3週間おきに入院していたことも・・・」(陽子さん)

陽子さんは、SMAの発見が遅れたことを本当に後悔していて、「ほかのママ・パパには、私と同じ思いはしてほしくない」といいます。

上の子がSMAだと、次の子もSMAの可能性が。2人目に迷い、専門医に相談

桜佑くんは、凛桜ちゃんが大好き!「こんな日が来るとは思わなかった」と陽子さん。

5歳の桜佑くんには、3歳になる妹・凛桜ちゃんがいます。

「結婚したころから、子どもが何人ほしいと明確に考えていたわけではないのですが、桜佑を育てていてもう1人、子どもがほしいと考えるようになりました。桜佑に、きょうだいを作ってあげたいと思いました」(陽子さん)

しかしSMAは遺伝子がかかわる病気で、ママ、パパの両方が病気の因子をもつ保因者の場合は、4分の1の確率でSMAをもつ子が生まれる可能性があります。迷った陽子さんは、下の子を妊娠する前から、東京女子医科大学ゲノム診療科 齋藤加代子先生に相談することに。齋藤先生は、日本国内のSMAの第一人者です。

「齋藤先生は、『出生前診断を受ければおなかの赤ちゃんがSMAかどうかわかるし、もしSMAならば発症前から治療する準備ができます。発症前に治療ができれば、治療効果はより期待できます』と教えてくれました。私は夫と話し合って、できる準備はすべてして2人目を作ろうと決めました」(陽子さん)

そして2020年3月に第2子の凛桜ちゃんが生まれます。

【齋藤先生から】上の子がSMAをもっている場合は、下の子も4分の1の確率でSMAに

上のお子さんがSMAをもっている場合に下のお子さんは4分の1(25%)の確率でSMAになります。おなかの赤ちゃんがSMAをもっているかどうかを検査する出生前診断により、赤ちゃんがSMAをもっていると診断された場合には、分娩前からSMAの専門の医師とよく相談をして、分娩の準備をしてください。生まれてから迅速に治療を開始することにより、SMAの発病を抑えたり、症状が軽くなる可能性があります。妊娠前からママとパパが「遺伝カウンセリング」を受けて、十分な情報のもとで最善策を決めいただくことが重要です。

監修/齋藤加代子先生 

お話/西陽子さん 協力/SMA(脊髄性筋萎縮症)家族の会 取材・文/麻生珠恵、たまひよONLINE編集部

陽子さんは、桜佑くんが生まれてから母子健康手帳に発達の不安をたくさん記していました。今、母子健康手帳を見返すたびに「SMAを疑うサインが、こんなにいろいろあったのに・・・」と後悔するといいます。SMAの治療は早期発見・早期治療がカギとなります。

「たまひよ 家族を考える」では、すべての赤ちゃんや家族にとって、よりよい社会・環境となることを目指してさまざまな課題を取材し、発信していきます。

●この記事は個人の体験を取材し、編集したものです。
●記事の内容は2023年4月の情報であり、現在と異なる場合があります。

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