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若くても脳梗塞の前兆症状を見逃さないで! できるだけ早く専門病院へ(1)

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脳梗塞というと年齢の高い人がかかる病気と思われがちですが、実は働き盛りの年代(30~50代)でも罹患する人が少なくない疾患です。脳梗塞を発症すると、元と同じような生活ができる人は3割に過ぎないとされ、前兆症状を的確に捉え、早期に治療を受けることがその後の“健康寿命”を左右します。若年者と高齢者の原因の違い、自覚症状の見きわめ方、受診方法、予防の仕方(生活習慣や食生活)などを専門の先生に詳しく伺います。


監修:内山 真一郎 先生
うちやま・しんいちろう 医療法人財団順和会山王病院・山王メディカルセンター、脳血管センター長。 国際医療福祉大学教授。東京女子医科大学名誉教授。1974年、北海道大学医学部卒業。1981年、メイヨークリニック(血栓症研究室)に留学 。2001年、東京女子医科大学神経内科教授。2008年、東京女子医科大学神経内科主任教授。2011年、東京女子医科大学脳神経センター所長。2014年 山王病院・山王メディカルセンター脳血管センター長、国際医療福祉大学教授、東京女子医科大学名誉教授。『働き盛りを襲う脳梗塞:ここまで防げる、ここまで治る最新医療』(小学館新書)など著書多数。脳卒中や血栓症の分野における世界的なトップリーダーであり、脳卒中や一過性脳虚血発作の予防や治療の啓発活動をライフワークとしている。また、日本や世界の脳卒中ガイドラインの作成委員として予防や治療の標準化に努めている。

脳梗塞って、どんな病気なの?脳卒中とは違うの?

脳梗塞は、脳卒中のひとつ。脳の血管が詰まることで起きる

脳梗塞とは、脳出血やくも膜下出血を含めた「脳卒中」のひとつです。脳卒中は大きく2タイプに分けられ、(1)脳の血管が詰まるタイプ(虚血性脳卒中)が「脳梗塞」、(2)脳の血管が破れるタイプ(出血性脳卒中)が「脳出血」「くも膜下出血」です。

脳梗塞って、若くても発症することがあるの?

脳梗塞は発症の低年齢化が進んでおり、比較的若い年代で発症するものを “若年性脳梗塞”と呼んでいる

脳卒中は、日本人の5人に1人が発症する疾患で、その中でも「脳梗塞」が脳卒中のうちおよそ75%を占めます。脳卒中は、日本人の死亡原因の第4位ですが、介護が必要な身体障害の原因の第1位です。医療技術の進歩で亡くなる人は減ったものの、身体に障害が残り、以前と同じように暮らせなくなるリスクが高い病気なのです。
また脳梗塞は発症の低年齢化が進んでおり、働きざかりの30~50代でも発症することがあるので、“高齢者の病気”だと思い込まないことが大切です。脳梗塞を発症後、元のように生活できている人は3割程度とされています。若くして発症するほど障害の影響は長期に渡りますので、予防に努め、万が一発症してしまった場合には早期に受診をすることが大切です。


脳梗塞には、どんな種類があるの?若い人に多い原因は?

脳の血管が詰まることで血流が滞り、急激にまひやしびれなどが起きる

脳梗塞は、脳の血管が詰まって血流が途絶えることで、神経細胞に酸素や栄養が届けられなくなって脳細胞が壊れて(死んで)しまう病気です。一度、壊れてしまった脳細胞は、生き返りません。壊れた部分は組織が崩壊し、溶けて穴が開いた状態になります。
脳梗塞はおもに3つのタイプとその他に分けられます。

■太い血管が詰まることで起きる「アテローム血栓性脳梗塞」
動脈硬化*による脳梗塞の一つで、頸動脈など脳の太い血管が狭まることで、血栓が詰まって起きます。別名を「大血管病性脳梗塞」といいます。
このタイプの脳梗塞は、太い血管に起因するものなので症状も重くなることがほとんどです。運動マヒや失語などの発作が起きます。
後ほども触れますが、「一過性脳虚血発作(いっかせいのうきょけつほっさ;TIA)」という予兆がある場合が少なくありません。TIAは脳の動脈が詰まって脳梗塞のような症状が出ますが、血栓が流れ去って血流が再開するために、しばらくすると、何事もなかったかのように生活できるようになります。しかし非常に高い確率で、その後(3カ月以内から早い場合には48時間以内)に脳梗塞を発症するので、必ず医療機関を受診することが大切です。TIAの段階で異変に気づき受診をすれば、脳梗塞の発症を未然に防ぐことができます。
*動脈硬化とは、高血圧や糖尿病の影響、老化や余分なコレステロールなどにより、動脈が硬く、狭く、もろくなること。

■細い血管が詰まって起こる「ラクナ梗塞」
脳の表面から深いところに枝分かれしている細い血管が詰まって起こります。別名を「小血管病性脳梗塞」といいます。
梗塞の起こる範囲が比較的狭いため、大きな発作は起こらず、手足のマヒやしびれなどが単独で起こります。
また、まったく症状のない、俗にいう“隠れ脳梗塞(無症候性脳梗塞)”は、ラクナ脳梗塞がほとんどです。

■心臓にできた血栓が脳の血管をつまらせる「心原性脳塞栓症(しんげんせいのうそくせんしょう)」
心臓の不具合が原因で起こります。心臓の中に血栓ができ、その血栓が頸動脈を通って脳に流れ着き、脳の血管を詰まらせます。心臓にできる血栓はサイズが大きいので脳の太い血管を詰まらせるのが特徴です。そのため重症になりやすく、重い後遺症が残ることが多くなります。
心原性脳塞栓症の3分の2以上は、不整脈の一種である「心房細動」(心拍と心拍の間隔がすべて不規則)が原因です。心房細動の中には、「発作性心房細動」という一過性のタイプがあり、24時間モニターする心電図でも発見されにくく、原因が特定できない若年者の脳梗塞の原因になっているのでは・・・と考えられています。

■その他
若い人の脳梗塞では、特殊な原因が多い!

若年性脳梗塞では、その他の特殊な原因が多くを占め、原因不明のものも少なくありません。
年配者の脳梗塞は、ほとんどが前述の3つのタイプが占めますのでここに違いがあります。若年者に多い原因には、以下のものが挙げられます。

(1)動脈硬化以外の原因で血管壁に問題が起こる「動脈解離(かいり)」
動脈は、外膜、中膜、内膜という3層構造でできています。内膜と中膜の間に裂け目ができるとそこに血液が流れ込み、血管の内側が狭くなります。これが動脈解離で、動脈解離があると脳に十分な血液が送られなくなるので、脳梗塞を発症します。
起きやすい部位は、日本人の場合には、首の骨付近に左右に2本存在し、脳幹部や小脳に栄養を送る椎骨動脈(ついこつどうみゃく)解離が多いのが特徴です。
動脈解離を起こす誘因になるのは、ゴルフや水泳、ヨガ、エアロビクス、カイロプラクティックなどです。美容院での洗髪時に起きたケースもあります。元々血管壁が弱い人が無理な負荷をかけると動脈解離を起こすこともあるので注意が必要です。

また若年者の動脈解離は、中膜の形成不全など先天的な要因もあるとされています。


(2)脳の血管がけいれんを起こして収縮する「血管攣縮(れんしゅく)」
血管攣縮とは、脳の血管がけいれんを起こして収縮することで、血液の通り道が狭くなって脳虚血(脳の血流量が減って障害を起こす)を引き起こす原因になります。一過性で済めばTIAですが、長く続くと脳梗塞になります。
片頭痛は、脳の血管がけいれんを起こすことで起こります。そのため片頭痛持ちの人に血管攣縮は起きやすく、片頭痛を原因として起きた脳梗塞を「片頭痛性脳卒中」と呼びます。女性の3割が片頭痛持ちだといわれていますが、片頭痛に加えて生活習慣病を持っているような場合だと、脳梗塞の発症のリスクは高くなります。
片頭痛持ちの人が脳梗塞を起こす確率はごくわずかですが、片頭痛を持っている人の数が多い(分母が大きい)ので、絶対数としては無視ができない要因になっています。
また、くも膜下出血の合併症として起きる血管攣縮もあります。
それから、最近増えているのは薬物中毒による脳梗塞です。麻薬や覚せい剤などの違法薬物の使用や脱法ハーブにより脳の血管攣縮が起こり、脳梗塞を発症する人が増えています。アメリカでは若年性脳梗塞の最大の原因は薬物使用であるといわれています。薬物は違法薬物だけではなく、睡眠薬や鎮痛薬など治療用の薬剤でも大量に服用すると血管攣縮を誘発して脳梗塞の原因になることがありますので注意が必要です。

(3)普通の人より血液が固まりやすい「血液の凝固異常(ぎょうこいじょう)」
血液の凝固異常には、遺伝子の異常が原因の先天性のものと、病気などが原因でおこる後天性のものがあります。血液が普通の人より固まりやすいことで血栓ができやすく、血管が詰まりやすいため、エコノミークラス症候群(深部静脈血栓症による肺塞栓症)とともに、脳梗塞も起こしやすくなります。

先天性の血液凝固異常症には、「プロテインC欠乏症」、「プロテインS欠乏症」、「アンチトロンビンⅢ欠乏症」があります。プロテインC、プロテインS、アンチトロンビンⅢは血液が固まるのを防ぐたんぱく質ですが、このたんぱく質のどれかが欠乏すると血液凝固が止まらなくなり、固まった血液が血管を詰まらせてしまいます。日本人には、プロテインS欠乏症が多いといわれています。

後天性の血液凝固異常症でよくみられるのは、「抗リン脂質抗体症候群」です。この病気は、自己免疫疾患のひとつで、自分の体を異物とみなして異常免疫反応が起こることで発症します。血液中に抗リン脂質抗体ができることで血液を凝固させてしまい、血栓ができやすくなります。脳梗塞を発症して入院した人の10%は、なんらかの抗リン脂質抗体をもっているほど頻度が高い疾患です。また片頭痛を伴う人が多いのも特徴です。

抗リン脂質抗体症候群は、習慣性流産(不育症)の原因にもなっており(胎盤に血栓ができてしまうことで流産を起こす)、もし何度か流産を繰り返している場合には、抗リン脂質抗体が陽性ではないか検査を受けてみることが重要です。
その他、抗リン脂質抗体症候群は血小板減少症の原因ともなります。自己免疫疾患は、女性に多い傾向がありますので、若年性脳梗塞の原因として注意が必要です。

☆ピルは、血液が凝固しやすくなる要因に…
動脈硬化の危険因子を持っていたり、すでに脳梗塞や一過性虚血発作を起こしたことがある人は低用量でもピルの服用は避ける

月経困難症や過多月経の治療や、避妊のために低用量ピルを服用している女性は多いかもしれません。ピルには血液凝固作用のあるエストロゲン(卵胞ホルモン)が含まれており、ピルにはアンチトロンビンⅢ(血液が固まるのを防ぐたんぱく質)を減らす作用があることから、血液が固まりやすくなるという特性があります。脳梗塞につながる可能性は否定できません。
肥満や高血圧、糖尿病、脂質異常症など動脈硬化のリスクが高い人や、すでに脳梗塞やTIAを起こしたことがある人、脳ドックなどの画像診断で脳梗塞が見つかった人は、低用量でもピルの服用は避けたほうが無難です。産婦人科医も脳梗塞の危険因子までは考えず「若いから大丈夫」と考えて処方している場合があるので、自分で注意することが大切です。


(4)心臓の左右を隔てる壁に孔のあいている「卵円孔開存(らんえんこうかいぞん)」
原因不明の脳梗塞として処理されることが多いのが「卵円孔開存」です。
心臓の右心房と左心房のあいだを隔てる壁に、生まれた時はどの人も孔(あな)があいています。通常は成長するに従い閉じるのですが、4~5人に1人くらいの割合で大人になっても閉じずに開いたままの人がいます。これを「卵円孔開存」といいます。普通は孔があいていても何事もなく過ごすことができるのですが、悪条件が重なると脳梗塞につながります。

悪条件とは、飛行機に長時間乗っていたり、同じ姿勢で仕事をしていて下肢が圧迫されて下肢静脈に血栓ができます(エコノミークラス症候群)。この血栓は、普通なら下大静脈、上大静脈を経て心臓の右心房、右心室に至り、最終的に肺に飛んでいき肺塞栓症を発症します。しかしなんらかの“きっかけ”で右心房の圧が左心房より高くなり、血栓を含む血液が右心房から左心房に流れると、左心室から大動脈に流れ、さらには頸動脈を通じて脳動脈に流れ着き脳梗塞を起こします。
“きっかけ”とは、くしゃみや激しい咳、スポーツで力を入れた時、便秘症でいきんだとき、布団をあげたとき、長時間座って居て急に立ったときなどです。もしこのようなときに、脳梗塞や前兆症状(TIA)があれば、急いで脳卒中の専門医を受診することが大切です。

妊娠中は、血栓ができやすいってほんと?

出産時には出血リスクが高くなるので、妊娠中は血液を固まりやすくして出血から母体を守ろうとする

妊娠中は、出産時などの出血リスクから体を守るために血液の凝固阻止因子が減って、何もしなくても自然に血栓ができやすくなります。血栓症を発症しないように、水分を多めに摂る、同じ姿勢で長時間過ごさない、足がむくみやすい人は弾性ストッキングを身につけるなど、普段から血栓症を起こさないように気をつけることが大切です。これが脳梗塞の予防にもつながります。

次回は、脳梗塞の前兆症状を早期に見きわめる方法、医療機関への受診の仕方、普段からできる予防方法などをご紹介します。

取材・文/渡邉由希 イラスト/森のくじら

ウィメンズパーク「健康カレンダー」(2017年2月8日掲載)より

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