【医師監修】予防接種の最新知識2 「生後2カ月スタート」「同時接種」をすすめる理由
予防接種には、法律で決まっているわけではないけれど、小児科のお医者さんなどが推奨している受け方があります。それが「生後2カ月の誕生日から始めよう」と「同時接種をしよう」の2点。
これらがすすめられているのには、どのような理由があるのでしょう?神奈川県川崎市の「かたおか小児科クリニック」院長の片岡正先生にお聞きしました。
予防接種をもっともスムーズに進められるタイミングが“生後2カ月スタート”
――現在、予防接種は“生後2カ月の誕生日から始めよう”ということが推奨されています。ヒブの場合、接種時期は生後2カ月~4歳と長いですが、早く受けたほうがいいということでしょうか?
「乳児は感染症に対する免疫が未発達のため、万一かかってしまうと重症化しやすく、命にかかわる場合も出てきます。その病気を防ぐ、病気から身を守るためには、できるだけ早く免疫をつけることが大切です。
ヒブの接種時期は生後2カ月~4歳ですが、3歳で受け始めればいいということではなく、できるだけ早いほうがいい。予防接種は“受けられる時期になったらできるだけ早く受ける”が原則です」
――生後2カ月より早く受けられるワクチンもありますが、なぜ生後2カ月スタートが推奨されているのでしょう?
「たとえば、ロタウイルスの予防接種は生後6週間目(生後1カ月半)から受けることができます。生後1カ月半で受けた場合、ロタウイルスは生ワクチンなので、今の日本のルールでは接種から4週間空けなければ次の予防接種を受けられません。
そうすると、生後2カ月に受けられるヒブや小児用肺炎球菌の予防接種が、生後2カ月半ごろまで受けられなくなってしまいます。小さい赤ちゃんにとって2週間の差は大きいですから、これでは困ります。
全体のスケジュールや病気にかかるリスクを考えたとき、生後2カ月スタートが予防接種をもっともスムーズに進められるタイミングです」
予防接種経験者の94.9%が2本以上の同時接種をしている

――上のグラフは2016年夏にベネッセコーポレーション「たまひよ生活リサーチ」が、0歳~1歳6カ月未満の子を持つ女性約300人に実施した、予防接種に関するアンケート結果の一部です。これによると、予防接種を受けたことがある人のうち94.9%のかたが2本以上の同時接種の経験があります。
同時接種は多くの小児科医が推奨していますが、なぜですか?
「上の生後2カ月スタートと同じ理由です。生後6カ月までに受けたい予防接種は6種類、接種回数は14~15回もあります。1種類ずつ受けていると接種が少しずつ遅れ、免疫を獲得する時期が遅くなってしまいます。予防接種予定日に熱を出すなどして、ワクチンを打てないことがあると、さらに遅れてしまいます。
受けられるものは全部まとめて早く受けることが、いちばん早く、効率よく免疫をつける方法です。生後2カ月になったらヒブ、小児用肺炎球菌、ロタウイルス、B型肝炎ウイルスの4つを同時に受けるのが、ベストな始め方です」
※2023年4月1日より、定期接種である四種混合ワクチン(ジフテリア・破傷風・百日咳・ポリオ)が生後2か月から接種できるようになりました。これによって、生後2カ月からはヒブ、小児用肺炎球菌、B型肝炎ウイルス、ロタウイルス、四種混合の計5種類のワクチンが同時接種可能となります。
最初のワクチンがヒブ+小児用肺炎球菌+ロタウイルス+B型肝炎の4つ同時の理由
――なぜ、生後2カ月にヒブ、小児用肺炎球菌、ロタウイルス、B型肝炎ウイルスの4つを同時に受けるのがベストなのでしょう?
「ヒブと小児用肺炎球菌は、細菌性髄膜炎を予防します。細菌性髄膜炎は生後6カ月を過ぎるとかかる子どもが増えてきますので、その前に初回3回の接種をすませておくことが大切です。
ロタウイルス感染症も生後5~6カ月から増えるので、2回接種ワクチン・3回接種ワクチンどちらも、生後2カ月の初日から接種を始めたいです。
B型肝炎は母子感染の心配がないお子さんであれば、生後2カ月での接種がおすすめです。
このように、初めての予防接種で4種類を受けるのには、それぞれに理由があるのです」
同時接種でも1種類ずつの接種でも、副反応の内容や程度は変わらない
――同時接種は一度にいくつものウイルスが体に入るから、赤ちゃんには負担なのではないかと心配するかたもいます。
「人間の体は、麻疹(はしか) のウイルスが入ってきたときには麻疹を抑えるための免疫システムが働きます。四種混合ワクチンを接種したときは、ちゃんと4つ別々の系統で、そのシステムが働くようにできています。
たくさんのウイルスが体に入っても、体が対応できないことはありませんし、対応する場所が違うので、体に過度の負担がかかることもありません。人間の免疫システムにはそれくらい余力があるといわれています」
――同時接種をすると、副反応が出る確率が高くなったり、副反応が大きくなることはありませんか?
「はれたり熱が出たりする確率は、同時接種の場合、1種類ずつ注射したときよりも高くなります。でもそれは、4種類を別々に受けたとき、4回のうち1回以上は必ず同じ副反応が起こるということ。4種類の中に、そのお子さんが副反応を示すものがあるということです。1種類ずつバラバラに打ったら副反応がなく、同時接種すると副反応があるということではありません。
同時接種だから副反応が増幅されたり、症状が重くなることはありません。同時接種によるデメリットは何もありませんから、安心して受けてください」
同時接種は、日本ではここ数年で増えてきたのですが、世界では当たりまえの方法で、欧米では生後2カ月の赤ちゃんに6種類のワクチンを接種するのだそうです。同時接種をすることで早く免疫をつけることができるうえ、予防接種スケジュールが簡単になり、接種忘れもなくなるとのこと。赤ちゃんを確実に守るためにも、積極的に同時接種を行いたいですね。
次回は「副反応は? ホントに安全? ワクチンのことをもっと知ろう」をお届けします。お楽しみに。
(取材・文 かきの木のりみ)
※この記事は「たまひよONLINE」で過去に公開されたものです。2023年4月に記事の一部を修正しました。
初回公開日 2017/09/07
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