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絵本に描かれる「眠り」のいろいろな意味

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Choreograph/gettyimages

夢と現実の間をふわふわと行ったり来たり。眠るってとっても幸せですね。
まだまだ空気が冷たいこの季節はとくに、お布団のあたたかさが恋しいものです。
絵本のなかでも「眠り」は数多く取り上げられるテーマです。
今回は、絵本教室主宰の中川たかこさんに、その中に込められたメッセージを読み解きながら紹介いただきました。

関連:快眠セラピストに聞く★子どもの寝つきをよくする基本ルール5

中川 たかこ
なかがわ創作えほん教室主宰

創作えほん教室主宰19年目。高校、中学、専門学校などでえほんの読み解き方、えほんの創り方の講師として活動中。

眠い子どもと大人すてきな関係

「あっ、そこで寝ないで!」というところで寝てしまったり、「もう寝なさい」と言っても寝なかったり・・・絵本の世界にも、そんなこどもたちの日々が描かれていますよ。
子どもたちにとって、眠ることは特別なこと。ただ、目を閉じるだけではないのです。
子犬のクークー、パリに住む少女、そして小さなライオンの子・・・さて、どんな「眠り」のメッセージが読み取れるでしょうか?

【眠るからこそ、目覚める意味がある】

子犬のクークーは、いつもねむたい、どこでもねむたいおとこのこ。
勉強していても、おてつだいをしていてもうとうと寝てしまいます。
勉強やお手伝いの最中に寝てしまうのは、だれでも経験があることだろう・・・と思いますよね。
ところがクークーは、遊んでいてもごはんをたべていても、うとうとと寝てしまうのです。目の前にごちそうや、美味しそうなお菓子があってもクークーを起こすことはできません!
寝てばかりのクークーを、どうにかして友だちと遊ばせてあげたいと思っているパパとママはすっかり困ってしまいます。

そんな毎日でしたが、変化はあるとき急に訪れます。
なんと、寝ながら歩いていたクークーは木にぶつかってしまうのです。
そこからがたいへん。
あんなに眠ってばかりだったクークーが、今度はまったく眠れなくなってしまうのです。

作家の吉本ばなな氏も高校生の間じゅう、ずっと寝ていたとのこと。まさに三年寝太郎で、卒業後、突然小説を書き始めたんだそうです。この、思春期特有の睡眠欲求のことを、臨床心理学者の河合隼雄先生が「さなぎの季節」と名付けてみました。眠りのなかでこどもが成長していくだいじな時期である。だから、さなぎのあいだは、大人が見守り、羽化するのを待ってあげることが重要であると。

この絵本はこのふたつのエピソードを思い出すきっかけになりました。
こどもにとって、寝る、眠るというのは、想像力を羽ばたかせる時間や、あるいは一日の気持ちの整理や、大切なことがつまっていると思います。
日々、変化のある思春期であるならなおのことでしょう。

そして、ある時期がきたらとつぜん、ぱっと目が覚めるのです。クークーがどしんと木にぶつかったときのように。

眠りがあるからこその、目覚め。
そこには深い意味があると思います。

【おませな少女の優しい夜】

今江祥智先生の翻訳が素晴らしい、パリに住む少女の夕方から眠るまでの数時間を描いた絵本作品。
作家はアン・グットマンとゲオルグ・ハレンスレーベン・・・リサとガスパールの作者です。
彼らはキャラクターもので有名ですが、画家のハレンスレーベンはパリの夕暮れや、何気ない日常を描きたいと希望していたと翻訳を受けた今江祥智先生からお聞きしたことがありました。
そのことを聞いてから数年後、出版されたこの絵本を手に取ることができました。版型も大きく、見開きで57センチの大画面に描かれた、パリの慌ただしくもリアルな人々 の生活や、そこで成長していく一人の少女のとある夜。画家のハレンスレーベンがずっとこれを描きたかったのだろうと思われる風景は、暖かい色使いと、暮れ 行く街に灯る街灯の明かりから伝わってきます。
4歳から5歳くらいと思わしきおませな主人公の少女は、ホームパーティーの前にベッドでおやすみなさいと言われます。
大人と子どもがはっきり分かれているフランスらしいストーリーの流れですが、だからといってさっさと寝なさいではなく、ちゃんとパパとママが交代で絵本を読んでくれたり、寄り添ってくれます。
その前にはもちろん、まだお絵描きしたいの、ぬいぐるみを持ってきてほしいのと可愛らしいわがままも言います。
今江祥智先生の翻訳は、語尾に付く 母音の長音表現が特徴的で、「おおいそぎできがえなくっちゃあ」「わたしが寝つくまでいてくれるっていってたのにィ」など、少女のおませな性格や、幼さが伝わってくる愛らしい言葉づかいになっています。
声に出して読むと、そのやわらかな発音に、やさしい気持ちになります。
ゆるやかな夜、部屋の向こうは大人たちのパーティー、おませな少女はそこに入りたいのだけれど、寝心地のよいベッドで、明日のことを考えながらゆるやかに眠りにおちていきます
この眠りに孤独はありません。それは、描かれた少女の幸福そうな頬のふくらみや、暗闇なのに、温かみを感じる青い夜の表現から伝わってきます。

【眠りと平和】

この絵本は1947年につくられたもので、日本では2009年に出版されました。
写真でつづられる絵本の中で、モノクロのものは現代ではめずらしいのではないかと思います。
しかし、モノクロであることを忘れそうになるほど主人公のライオンの子は生き生きと動き、あたたかな公園の陽の光を感じることができます。

絵本のことばは、「おやすみなさいおつきさま」のマーガレット・ワイズ・ブラウン。翻訳は、イーラの写真に惚れ込んだとあとがきに書いてらっしゃる、ふしみみさお氏。ひらがなのみの、みじかいことばの中に、ライオンの子のなんとも甘えんぼうで、こわいもの知らずな様子が表現されています。
ある日、冒険がしたくなった動物園のライオンの子は、お母さんに「くらくなるまでに かえってくるからね」と出かけて行きます。おかあさんはすぐに眠くなってしまう我が子が心配で引き止めますが、いますぐいきたいんだと決心のかたい彼を止めることはできません。
さあ、冒険のはじまりです!
はりきって外に出たライオンの子は、犬に会ったり猫に会ったり、さらには人間の子に拾われたりします。そのたびにうつらうつら・・・そしてすやすやと眠ってしまいます。
その様子がとても平和に描かれており、誰と居ても、どんな場所でも、安心して眠っていいんだよと言われているかのようです。
絵本が出版されたのは第二次世界大戦のすぐあとというところから、わたしはゆっくり平和に眠ることの幸せ、そしてそれを子どもたちに提供してやれる環境の大切さをひしひしと感じました。
おだやかに眠れるというのは、安全が約束されているからこそ。このライオンの子のように、自由に冒険ができて、種類の違う動物、人間とも仲良くできることの幸せ。
この絵本で描かれている眠りは、単純に目を閉じて眠るという行為だけでなく、それができる平和への願いを強く感じるのです。

関連:寝かしつけのタイミングがわかる“赤ちゃんの眠いサイン”

絵本の中に出て来る眠りは、じっくり掘り下げるとたくさんの意味を持っていると気づかされます。でも、自分自身はな〜んにも考えずにスヤスヤと寝てしまいたいのが本音ですけどね!

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