甘えん坊・内弁慶・泣き虫・おっとり 集団生活についていけているか心配です
甘えん坊・内弁慶・泣き虫・おっとりといった、どちらかというと内向的な子どものママ・パパは、「うちの子、集団生活でちゃんとやっていけているかな?」と心配になることもあるかもしれません。子どもにとっては、新しいことが始まる期待の一方で、環境が変わることへのストレスや不安もいっぱい。のびのびと過ごし、お友だちとも仲よく遊ぶために、ママ・パパがしてあげられることはないでしょうか。子どもの社会性の発達に詳しい白百合女子大学人間総合学部の秦野悦子先生(発達心理学)にお話を聞きました。
甘えん坊の子は「ママとの決別」がカギ
「ママじゃなきゃヤダ!」という甘えん坊の子は、ママの「私じゃなきゃこの子はダメ!」という思いが強すぎるということが少なくありません。そういったママの感情や気持ちは、ママの表情や行動、しぐさでメッセージを発していることがあります。まずはママ自身が、園を信頼して「母子分離」をする覚悟を持つ必要があります。具体的には、園に子どもを預けたら、きっぱりと「決別」すること。そのときに甘えん坊の子は泣いてしまうかもしれませんが、泣いて感情を出した後は、ママがいなくても園で楽しく遊んでいる場合がほとんどです。園の先生は子どもの楽しい活動をつくりだすプロ。朝も「はい、ママ、もう行っていいですよー」と引き取ってくれるので、信頼して子どもを預けましょう。「幼稚園(保育園)では先生がママの代わりだよ」と言って、先生に甘えさせるのもOK。子どもは保育園・幼稚園で自分の好きな遊びを見つけると、ママがいなくても大丈夫になります。
内弁慶の子には近所の子どもと遊ぶ経験を
家の中では大いばり。でも外では意気地なし。そんな、いわゆる「内弁慶」の子も、園で普段の自分を出せるのか、ちょっと心配ですよね。でも心配しすぎる必要はありません。内弁慶をいい意味でとらえれば、それは自分をよくわかっているという証拠。その場所がホームなのか、アウェーなのか、子どもながらによく理解しているのです。家でちゃんと自分の言いたいことを言えているのであれば大丈夫。あわてずにゆっくりと、人とかかわる経験をさせてあげましょう。園生活以外でも、近所の子とおたがいの家を行き来して遊ぶ、公園で遊ぶといった経験を積めば、自分の言いたいこともだんだんと言えるようになります。
泣き虫の子は、選択させて前向きに
泣き虫の子も、「この調子で園でも泣いてたら、みんなに迷惑かかりそう…」と心配になりますよね。年少のうちは、思いが通らないと泣くことで気持ちを表すので、園で泣くのは許容の範囲。でも年中までには泣き虫を卒業したいところ。よく泣く子どもは、思い通りに気持ちが通じない、どうしていいのかわからなくて困って泣き出すことが多いようです。そんな子の場合は、あらかじめ先生に、「うちの子は自分の気持ちを出すのが苦手なんです」と伝えておくようにしましょう。あとは先生にお任せして大丈夫です。家で子どもの“泣きグセ”を克服したい場合、生活の中で自分で決める、自分で選ぶという機会をつくってあげましょう。どちらの洋服を着たいか子どもに選ばせる。ごはんの量を多めか少なめかいつも通りか選ばせる。自分の意思で決めたことに対しては、子どもも前向きな気持ちで取り組めます。ただし、無理に頑張らせる必要はありません。
おっとりな子には時間の余裕をつくってあげる
おっとりマイペースな子も、親としてはクラスの子どもたちのペースについていけるか、心配ですよね。一方で子ども本人はまったく困ってないという…。おっとりな子の場合、のんびり、ゆっくり、あわてないので、じれったい気持ちがするかもしれませんが、幼児期の間に、急いで何かをさせる必要はありません。慎重なタイプの子も多いもの。もし日常生活の中で物事がうまく進まないと感じることが多いのであれば、生活時間に余裕をつくってあげましょう。たとえば、いつも30分の準備で出かけたいのにそれができないのであれば、45分かけてあげる、といったように、本人のペースに合わせていくことが大切です。「うちの子は競争意識がなさすぎる」というママ・パパも、心配しなくて大丈夫。第一子の場合、ライバルや目標となる兄、姉がいないので、競争意識が芽生えるのは、身近なお友だちにあこがれ始める5歳くらいからでしょう。もちろん、それにも個人差はあります。
もし子どもの園生活で心配なことがあれば、「モンスターペアレントと思われるんじゃないか」などとちゅうちょせず、「園ではどうですか?」と先生に尋ねてみましょう。そのほうが状況を正しく把握できます。また、保育園や幼稚園の先生も、お子さんを気にかけて見てくれるようになるでしょう。内向的な子どもは何かとほかの子の間で埋もれてしまうことが多いかもしれませんが、「急がば回れ」「大器晩成」といった言葉もあるように、ゆっくりでもその子なりの成長を見守る姿勢が大切ですね。(取材・文/香川 誠、ひよこクラブ編集部)
監修/秦野悦子先生
白百合女子大学大学院文学研究科発達心理学専攻、人間総合学部発達心理学科教授(学科長)、発達語用論、障害児のコンサルテーション、子育て支援が専門。『子どもの気になる性格はお母さん次第でみるみる変わる』(PHP研究所)など著書多数。