わがまま・静かにできない・暴れん坊 集団生活でまわりに迷惑をかけていないか心配です…
わがままな子・静かにできない子・暴れん坊。自己主張ができて、元気で活発なのはいいことだけれど、「うちでも手を焼いているのに、園で先生の話をちゃんと聞けるかな?」「お友だちをたたいたりしないかな」と、ママ・パパは心配になるかもしれません。相手にけがでもさせたら一大事。園でまわりに迷惑をかけないためにはどうすればいいのでしょうか。子どもの社会性の発達に詳しい白百合女子大学人間総合学部の秦野悦子先生(発達心理学)にお話を聞きました。
わがままな子には生活ルールをその都度伝える
わがままな子というのは、親が「子どもファースト」が少々過ぎて、子どもの要求を過剰に受け入れすぎた結果、生活ルールを学びそこねている子どもである可能性が考えられます。ソファでいつまでもぴょんぴょん飛び跳ねているのを、そのまま見過ごしていませんか? 子どもが勝手にほかの人の皿に手をつけているのを、そのまま見過ごしていませんか? 子どもが勝手に冷蔵庫から食べ物を取り出すのを、そのまま見過ごしていませんか? こういったことを見過ごしていると、家の外でも同じようなことをしてしまい、「しつけの行き届かない子」「わがままな子」と見られてしまうおそれがあります。
お友だち同士においては、物を借りるときに「貸して」と言う、逆に言われたら「はい、どうぞ」と言って貸してあげる、といったルールも大事。もちろん、順番を守ることなども。ママ・パパは、それができていないことに気づいたら、そのたびに子どもに生活のルールを伝えるようにしましょう。親が子どもにへりくだって甘やかすのも、子どものわがままを助長してしまうので注意が必要です。
静かにできない子にはブロック遊びなどで集中力を養う
先生がお話しているときに、静かにできない子。幼稚園、保育園くらいだと、まだまだとても多いですよね。小さい子どものコミュニケーションは、自分と相手との「1対1」が前提となっています。そのために、先生がみんなにしゃべっているつもりでも、自分と先生が1対1でしゃべっている感覚になって、先生の話を最後まで聞けずにすぐに言葉を返してしまうのです。聞く力は、お集まりや、クラスでお話を聞く機会を積み重ねていきながら育っていきます。聞く力が育つ前の時期に重要なことは、自分ひとりで集中できる遊びを見つけることです。集中する力をつけることで「ここは集中するときだ」「ここは休むときなんだ」といった緩急をつけられるようになります。
暴れん坊の子には「そぉーっと」遊びなどが有効
暴れん坊の子というのは、必ずしも気性が荒くてそうなっているのではありません。本人は触っただけのつもりなのに、力の加減が上手にコントロールできずに友だちを突き飛ばしてしまったということもあります。本人は悪気がなくても加害者になっている場合もあるので、行動が激しい子や体力があり余っている子には、全身を使った運動や「そぉーっと遊び」をさせてみましょう。「そぉーっと遊び」というのは、たとえば忍者の忍び足のように、そぉーっと歩く遊びなどです。言葉による行動調整といって、自分で意識して行動をコントロールする遊びです。自分の力をセーブさせる練習としてはとても効果的です。また、力の強い子は、自分より小さい子にも力強くぎゅーっとやってしまうので、「小さい子にはそっとね」「優しく触ってね」と言っておくようにしましょう。それ以外の理由で暴れん坊だという子の場合は、どんなときに暴れるかを把握しておくことが大切です。おなかがすいたときに暴れやすいなら早めに食事をさせる、疲れているときに暴れやすいなら休息の時間を取るようにするなどしましょう。
もし、保育園や幼稚園でお友だちに迷惑をかけてしまった場合、どうすればいいのか。秦野先生によると、基本的には園の対応にお任せして大丈夫とのこと。一般的に、園で起こったことに対しては、監督責任者としてきちんと対応してくれるからです(逆に「ほかのお子さんに迷惑をかけたので直接謝ってください」と言ってくるような園は、園の保育・教育姿勢が気になります)。わがまま・静かにできない・暴れん坊の子には、遊びや生活の中で社会のルールを教えていくのがいちばん。それでも迷惑をかけることはあるでしょうが、だれにも迷惑をかけずに育つ子どもはいません。親としてできることを心がける一方で、子ども自身と園を信頼して任せることも大切です。(取材・文/香川 誠、ひよこクラブ編集部)
監修/秦野悦子先生
白百合女子大学大学院文学研究科発達心理学専攻、人間総合学部発達心理学科教授(学科長)、発達語用論、障害児のコンサルテーション、子育て支援が専門。『子どもの気になる性格はお母さん次第でみるみる変わる』(PHP研究所)など著書多数。