実録!!保育士、保育園に預け始めました〜慣らし保育の苦悩〜頭ではわかっていたのに・・・
息子、4月から保育園に通い始めました。保育士である私にとっては「母」として初めて毎日保育園に通う日々が始まったのです。保育園側の事情や4月の子どもの様子はよくわかっているはずだった私ですが、思った以上にハラハラドキドキの慣らし保育期間を過ごすこととなりました。何が大変だったのか…慣らし保育の日々を振り返ってみたいと思います。
相原 里紗
保育士・のあそびっこプロジェクト 主宰
早稲田大学国際教養学部卒。(株)オールアバウトを経て国家試験で保育士に。親子×のあそび×地域を軸とした「のあそびっこプロジェクト」他、親子向けイベントを多数企画・運営している。1歳男児の母。
そもそも慣らし保育って何?どうやってするの?
4月は新入園、新入学のシーズンです。いわゆる「保活」をくぐり抜けた保育園児たちも、それぞれ新しい園に入園していきます。保育園の新入園児は、4月1日からフルタイムで預かってもらえるわけではありません。「慣らし保育」という、少しずつ園での滞在時間を延ばす日々を経てフルタイムの保育へと移行していきます。
<慣らし保育のスケジュール 息子の園の場合>
ステップ1 9時〜11時(朝おやつ、午前の活動)
ステップ2 9時〜12時(ステップ1+お昼ごはん)
ステップ3 9時〜15時(ステップ2+お昼寝)
ステップ4 9時〜16時半(ステップ3+午後おやつ、午後の活動)
ステップ5 通常保育
保護者の仕事復帰のスケジュールはもちろん、子どもの様子を見ながらステップを踏んで進めていくため、期間はその親子によってまちまちですが、初めて保育園に通う場合は少なくとも1週間、最大で1ヶ月ほどかけて慣らし保育を進めていきます。
初めて親と離れて過ごす子どものストレスはとても大きく、それを少しでも軽減させるのはもちろんのこと、保育園側も少しずつ子どもの様子を知っていき、保護者とコミュニケーションを構築していくための期間として重要な期間でもあります。
さらに、SIDS(乳幼児突然死症候群)の発生は保育園入園から1週間が29.0%を占めており、「乳児の環境変化に伴うストレスが、SIDS発症要因となっていることが強く疑われる」と言われています(※)。このことからも、子どもにとって大き過ぎる負担をかけずにこの時期を過ごしていくことはとても重要なことです。
※CHILD RESEARCH NET:「小児保健研究」2006年第65巻第6号 836-839「保育預かり初期のストレスとSIDS危険因子の関係について」を転載
実録!慣らし保育の2週間、全記録
保育士としては何度も0〜2歳児担当を経験し、「初めてのお預かり」を受け入れてきた私ですが、母としては初めての「慣らし保育」の日々。「いつかは慣れる」「4月の保育園はカオス」「先生たちも大変!」「保護者もドキドキしている…」と、言葉ではわかっていました。それでも思った以上に苦悩した2週間(土日を挟むので実質9日間)の日々を、少し長くなりますが実録で振り返っていきます。
DAY0:入園式 固まる息子と安心する母
1日目は入園式。10時〜11時と短時間で、前半で全体の説明と先生たちからの出し物、後半で各クラスに分かれて他の保護者の人たちと自己紹介、持ち物などの説明がありました。息子と同じ1歳児クラスには既に6名在籍していて、6名の新入園児さんが入ります。息子は初めての空間、人が刺激的だったようで、園を出るまで終始真顔。母はアットホームな雰囲気にちょっと安心した時間でした。
DAY1:9〜11時 当たり前だけど、息子、泣く
慣らし保育1日目。一時保育に通っていたこともあり、朝はスムーズに出発し、保育園にも率先して突入していった息子。何度か一緒に来ていたけど別れたことがなかったので、この時点ではまさか置いていかれるなんて思っていなかったのでしょう。初めてのお支度で右往左往する母の横にたたずむこと数分、「じゃ、行ってくるね〜」と言うと、「え?」という顔をし、離れると大号泣。一時保育にすっかり慣れていたのでそこまで泣くとは思わず、こちらもちょっと戸惑い、後ろ髪を引かれながら園をあとに。
お迎えに行くとお散歩帰り。息子、私を発見しても「お!」くらいの反応。お散歩で気持ちが切り替わって、その後は無事に泣かずに過ごせたようです。ほっとして1日目終了。
DAY2:9〜11時 息子、おやつをボイコットする
2日目も1日目同様大号泣。お散歩で切り替わるだろう、とさらっとバイバイしてきました。お迎えに行くと、この日もお散歩帰りで、落ち着いた様子。
ただ、2日目にして発生した問題。なんと息子、大泣きして朝おやつを2日連続で食べていないというのです。半年間、週に3回一時保育に行き、爆食いを誉められて?いた息子。おやつを残すなんて考えられない…朝おやつを食べないとなるとお昼ご飯も心配なので、ということで、12時お迎えのはずだった翌日も、引き続き11時お迎えに。
早々の変更!息子のペースでいいと思っていたし、この時期は先生達も慎重だし、スムーズにいかないこともあるなんて重々わかっていたはずなのに、いざうまくいかないとなると、「あれ、大丈夫かな?」と途端に動揺した自分に驚きました。理解しているにも関わらず、子どもに対する評価が自分と重なって感じて、戸惑ってしまいました。
先生と相談して、翌日おやつを食べなくても、お腹が空いたら食べると思うので、と、4日目はお昼ごはんお願いして帰宅。
息子におやつを食べなかった理由を聞いてみると、「みんな、えんえーんって」とのこと。確かに、この時期の園は賑やかだよね。その気持ちを聞きながら、いつもよりスキンシップを多めにして午後を過ごしたのでした。
DAY3:9〜11時 息子、朝おやつを抱っこで食べる
朝、先生になんでおやつ食べないのか聞いた話を伝える。
ちょうど始まるところだったのでおやつの場所まで一緒に行ったけどやっぱり座らないと頑な!でも確かに、ギャン泣き王国になっていたお部屋。こりゃ萎縮するねと納得して先生に抱っこでお願いして部屋を出てきました。
お迎えに行くとまたしてもお散歩帰り。「かーちゃん!!」と嬉しそうな顔。2時間、お疲れ様でした。
おやつはその後やっぱり座らなかったようですが、抱っこしたままだったら食べて、お茶も飲んだそう。「明日はお昼にチャレンジしてみましょう!」と先生からご報告いただきました。
抱っこでおやつなんて随分VIPだなと思ったのですが、よく考えたら1日目からお散歩に連れて行ってくれているし、泣いていたら必ず抱っこしてくれていました。当たり前の様に聞こえるかもしれないのですが、なかなか4月のバタバタする時期にこれだけ手厚くできない園も多い。その体制が親としては心底安心できて、本当にありがたいなと思ったのでした。
その夜は、翌日から変わる一日の流れ❨おやつ食べて、散歩でボールとシャボン玉して、着替えて、ごはん食べて、そしたら母が迎えに来るよ!)を何度か伝えてから就寝。
DAY4:9〜12時 初めてのお昼ごはん。ハンバーグをお代わりした!
朝は保育園側の土手に寄って桜や電車を眺めてから保育園へ。別れる瞬間は泣いたけれど、すぐに泣き止んだそうです。朝おやつを無事に食べて公園で遊んだ後は、心配されていたお昼ごはん。大好きなハンバーグ、2回おかわりしたとのことでした。良かった〜!!!
ちなみに慣らし保育期間中、家に帰ってからのお昼寝は平均3時間。日中はやはり刺激が強いみたいです。その後の園での生活のリズムを作るためにも、午後には予定を入れないほうがいいなと思ったのでした。
DAY5:9〜12時 週明け月曜日。初めて泣かずに登園する
初めての土日が明けた月曜日。忘れてるんじゃないかと、実はドキドキしながら向かいました。保育園の玄関で若干躊躇したものの、スムーズな足取りで保育室へ。出るときに声をかけると、母を振り向かず、背中を向けて耐えておりました。
保育園の先生によると、そこからは泣くこともなく、好きな働く車の絵本を三冊自分の回りに並べて固めて遊んでいたようです。登園時は雨模様だったのですが、雨上がりにお散歩にも連れ出してくれてて、「こーえん!ぼーる!」と本人もあとで話してくれました。
お迎えに行くとご飯終わりかけ。息子が気付くまで様子を見ていましたが、しっかり楽しそうに食べておりました。
DAY6:9〜15時 初めてのお昼寝と母の仲間作り
お昼ご飯がスムーズに進んだので、この日からはお昼寝ありの15時お迎えに。バイバイの瞬間だけ泣いて、あとはけろっとしていたとのこと。午前中は外遊びをして、問題のお昼寝!慣らし保育で12時お迎えの子が多く、迎えがこないことに号泣したようですが、先生に抱かれて寝入り、布団の上でも寝て、1時間くらいは寝られたようです。事前に「寝られなかったらご連絡しますので、その時間は待機していてください」と言われていたので、ドキドキしながら待っていた私ですが、杞憂に終わりました。お迎えに行くと、先生とキャッキャと楽しむ姿が。仲良くなってきていて、何よりです。
ちなみにこの日は同時に入園した同じクラスの母たちとお茶へ。入園時のドキドキや疑問をみんなで共有して、有意義な時間でした。
DAY7:9〜15時 雨の日の登園スタイルに悩む
雨×極寒だったので、悩んだ末に車登園。入園が決まってから知ったのですが、駐車場がある園だったので、その恩恵にあずかりました。小雨なら自転車送迎なのですが、土砂降りとなると送迎が大変だ…。
お部屋に着いたら電車が出ていたので、この日はすぐに遊び始めました。前日までは着いたらまず静止だったから、7日間で随分と慣れてきたようです。雨の室内でも滑り台を楽しみ、
お昼寝は抱っこしてもらいましたが、泣かずに1時間15分。昨日より15分延びましたー!と、先生からニコニコで報告を受けました。そうか、この時期は日々の小さな進歩がみんなで嬉しい時期でもあるんだなぁ、としみじみ思ったのでした。
DAY8:9〜16時半 いよいよ最終ステップ!息子、おかわり魔と化す
お昼寝もクリアしたので、最終ステップに。さんぽ、お昼、お昼寝、おやつ、さんぽ、の流れになります。
日中は公園へ行き、お昼は納豆ご飯を2回おかわりして、お昼寝は初めてトントンで寝て、しっかり二時間半!
おやつは3回おかわりして、迎えに行くとちょうどお散歩帰り。「かーちゃんだっこー」と甘えた声で呼ばれましたが、少しずつ落ち着いてきたようで、嬉しい。
DAY9:9〜16時半 慣らし保育最終日。最後までお互い頑張った!
朝のリズムがついてきたのか、朝ご飯を食べたあとにトイレに行こうと誘うと、
なんと、初めてのうんち成功!
園まではスムーズに到着、部屋からわたしが出たら後ろで「ないない!❨して帰る❩」って言っていましたが、泣かずに遊べたようです。もう見慣れた「おかわり」の文字は、基本的に昼おやつ両方に。午前午後両方さんぽにいき、迎えにいくと満足げに出迎えてくれました。「もうすっかり大丈夫ですね、来週から復帰で!」と先生のお墨付きをもらい、2週間の慣らし保育が幕を下ろしたのでした。
慣らし保育を乗り切る4つのポイント
長いようで短かった慣らし保育期間。保育士として、母として、両方を経験したからこそわかった、この時期を安心して乗り切るためのポイントを4つまとめてみます。
先生と密に情報交換をする、でも気にしすぎない!
まだ仕事復帰しておらず、時間的に余裕がある預け始めのこの時期は、先生たちと情報交換するのに最適な時期。保育園側も新入園児に敏感に対応してくれる期間なので、小さなことでも相談をしたり、帰ってからのエピソードを話したり、子育てでこだわっていることをさりげなく伝えたりすると、先生側も理解を深めてくれます。先生と親が仲良くしている姿を見て子どもも安心しますし、親自身も園に慣れることに繋がります。一方で、先生が何気なく放った一言が胸に突き刺さるのもこの時期です。親子共に慣れていないので、うまくいかないことも多く、指摘や要望が積み重なって不安を煽られることもあります。そういうケースに出会ったら、思い切って話半分で聞くようにしてみてください。一度にたくさんのことは、親も子も出来るようにはなりませんし、これから続く長い保育園生活、マイペースに徐々に慣れていけばいいのです。
いずれにせよ、子どもを育てるパートナーとしてのスタートです。送迎時はちょっと多めに会話をする気持ちで行ってみてくださいね。
一緒に慣らし保育をする保護者と仲良くなっておく
保育士の時には気づかなかったのですが、この期間は他の保護者と仲良くなれる絶好のチャンスです。いざ仕事復帰するとリズムも全然違って送迎の時間が一緒の人以外は会うことも少なくなりますが、この時期は預かりが短いこともあって予定を入れていない人も多く、会いやすいと思います。お茶やランチをして、話をすることで慣らし保育や保育園のことはもちろん、子育て、仕事復帰にまつわる小さな疑問や悩みを共有できます。基本的に家も近いので、その後の園生活においても強い味方になってくれるはず!
家族との役割分担を再確認する
慣らし保育の間は気持ちにも余裕があるので、送迎や保育園準備、家事分担などの役割分担を自分だけではなく家族を巻き込んでシミュレーションしておきましょう。それまでと違って時間が決まっているので、朝や帰ってきてからのリズムをどう作っていくか、持ち物の準備を1日のどのタイミングでするかなど、仕事復帰後の生活をイメージして試行錯誤してみましょう。いざ始まってからだと体力的にも精神的にも話し合いの時間を取れないこともあります。同時に、子どもの日中の様子や慣らし保育の進み具合、そして親自身の気持ちの変化に関してもぜひ共有をしてみてくださいね。
子どもといつも以上にスキンシップをとる
順調にいっているように見える子でも、大なり小なり環境の変化にストレスを感じています。落ち着くまでは、いつもよりスキンシップを多めにしたり、ゆっくり様子を観察したり、話を聞いたり、一緒に遊んだりといった子どもだけに意識を向ける時間を、1日に数十分でもいいので確保するようにしましょう。体調も崩しやすいので、事前に察知するきっかけにもなりますよ。
親にとっても初めての保育園。子どもと一緒に少しずつ新しい生活に慣れていく日々こそ、実は親にとってて必要な時間だとひしひしと痛感しました。この慣らし保育期間で少しずつ気持ちや環境を整えて、体と頭を社会復帰させていく。本当に緊張感のある数週間でした…。これから発熱お呼び出しや、集団保育だからこその事故等の洗礼もあることでしょう。それでも、せっかくもらった日々だから、息子は保育園で楽しみ、私は仕事を楽しむ!仕事復帰をした皆様、一緒に頑張りましょう!