時短とフルタイムでの復帰、どっちがいいの?ママの職場復帰Q&A
出産を終えて、育児もひと段落。さあ、仕事復帰…と言いたいところだけれど、出産前と同じ働き方を続けるのは、現実として難しいところ。フルタイムにすべきか、時短勤務にすべきか。時短からフルタイムへの切り替え時期はどのタイミングがいいか。家事は? お迎えは? 子どもが病気のときはどうしたらいい? 考えないといけないことはたくさんあります。
「自分に合った働き方を見つけたい」というママの疑問に、働くママの支援をしてきた保育の専門家はどう答えるのでしょうか。神奈川県横浜市都筑区で保育園のお迎え付き夜間保育所&学童保育所「あっとほーむ」を営む小栗ショウコさんにお話を聞きました。
家事に手が回らない! みんなはどうしてるの?
小栗ショウコさんが運営する「あっとほーむ」は、閑静な住宅街にある一軒家。子どもが過ごす部屋にはピアノが置いてあります。聞けば「あっとほーむ」には、ピアノ教室の先生が定期的に訪れているのだとか。
「以前は『子どもにピアノを習わせたい』というママからのリクエストに応じて、ピアノ教室まで私が子どもの送り迎えをしていました。でも、ほかにもそういう子が多いんじゃないかな、と思って、ここにピアノを設置して、ピアノの先生に来てもらうようにしました。希望者のみですが、現在10数名がピアノを受講しています。『自分が働いたら習いごとはできないと思っていた』というママたちにも喜ばれています」(小栗さん)
働き始めると、何か諦めないといけないことがあるかもしれません。しかし、このように人の手を借りれば、できないと思っていたこともできるようになることも。
Q1. フルタイムで働きたいのですが、私がいないと子どもが不安がります。時短勤務にしたほうがいいでしょうか?
小栗さん:選択肢があるのであればママの体力的にも、できれば最初は時短勤務がいいと思います。フルタイムへの切り替えは、仕事のリズムに体が慣れてから考えてもいいと思います。時短でもフルタイムでも子どもが不安がることについては、さほど心配する必要はありません。最初は不安ですぐ泣いてしまう子も、そのうち慣れます。
それよりもママが「子どもと離れたくない」という自分の気持ちに折り合いをつけられるかどうか。実は子どもよりも、ママ自身が不安になっていることが多いのです。
Q2. フルタイムで働きたいのですが、これまで通り家事ができる自信がありません。
小栗さん:まず、これまで通りに家事はできないと思ってください。大事なのは、全部やることではなく、「ここまででいい」という最低ラインを決めておくこと。夫婦二人で分担して家事をしても手が回らない場合は、家事代行サービスや料理の作りおきサービスなどを利用するのも手です。世間体などは気にせずに、苦手なことはプロに任てみて。もしそれで批判されることがあっても、そういう考えは時代遅れだと思って気にしないようにしましょう。
Q3. 子どもが小さいうちは時短勤務で働き、小学校に入ったらフルタイムに復帰しようと思いますが、復帰時期の見極めポイントはありますか?
小栗さん:「子どもが落ち着くタイミング」がベストですが、実際には小学校に入っても1年生の1学期は不安な状態が続くので、できれば夏休みくらいまではフルタイム復帰は待ったほうがいいでしょうね。
入学前にフルタイム復帰している場合も、小学校入学後2週間はママとパパが有給休暇を取り合って、どちらかが家にいるべきです。そこまでやる必要があるのかと思われるかもれませんが、小学校入学という環境が変わる時期はそれだけ大切な時期なのです。
Q4. 出産前は残業の多い仕事をしていました。再就職しようと思いますが、職種よりも働きやすさを優先したほうがいいでしょうか?
小栗さん:ある大学生は、二十歳くらいになったときに母親から「あなたのせいで仕事をあきらめた」と言われて、とてもショックを受けて傷ついたのだそうです。自分が将来「子どものせい」と思わない自信があるなら変えてもいいと思います。仕事への「やりがい」も感じたいのであれば、まずは以前と同じ仕事をやってみて、無理そうであれば、地域のファミリーサポートセンター、シルバー人材センター、ベビーシッターなどのサービスを使って調整するという方法もあります。「あっとほーむ」のような夜間保育施設も近くにあるかもしれないので、一度探してみてください。こうしたサービスを使うことに抵抗がある人も多いと思いますが、地域に頼れる大人がいるのはむしろいいことです。
Q5. 保育園のお迎えが遅くなってしまうと、子どもに寂しい思いをさせていないか心配です。
小栗さん:ママが働くことに否定的なことを言う人はまだまだ少なくありません。子どもをなるべく、そういった大人に近づけないようにしましょう。たとえば「ママのお迎えが遅くて寂しいね」と大人から言われると、子どもは「自分はかわいそうな子なのかな」「ママは自分よりも仕事が大事なんだな」と勘違いしかねません。逆に「ママすごいね、会社でみんなから頼りにされているんだね」と肯定的に言ってくれる大人がいると、子どもはママのことを誇りに思えるようになります。
仕事復帰を予定している筆者の妻は「復帰したら今みたいに家事はできない、どうしよう」と言うので、わが家も「全部できなくていい」路線でいこうと思います。ネットで調べてみると、家事代行サービスや料理代行サービスも、手ごろな料金からあるようです(もちろん、高いものもあります…)。最近は便利な電化製品も増えているので、それも強い味方になりそう。「他人に家事を任せるのは恥ずかしいこと」という考えから、「任せられるものは任せる」という考えにシフトチェンジすることが、これからの育児・家事には欠かせないのかもしれません。
(取材・文/香川 誠、ひよこクラブ編集部)
監修/小栗ショウコさん
認定NPO法人あっとほーむ代表。女性が出産後も働きやすい環境をつくるために、1998年に保育園のお迎え付き夜間保育所&学童保育所「あっとほーむ」(神奈川県横浜市都筑区)を創設。同様の施設をつくりたい人を募り、起業支援にも力を入れている。