園長と保育士の関係が良好?保育士の声かけは?いい保育園ってどんなとこ?
「子どもを保育園に預けてもいいのかな…?」「いい保育園の基準は?」「子どもが安心して過ごすために何をすればいい?」「預けるとき、お迎えのとき、子どもや保育士さんにどう声かけをすればいい?」子どもを保育園に預けている、あるいはこれから預けようとするママ・パパの悩みや疑問は尽きることがありません。
神奈川県横浜市都筑区で保育園のお迎えつき夜間保育所&学童保育所「あっとほーむ」を営む小栗ショウコさんは、さまざまな保育問題に20年以上向き合ってきたエキスパート。ママ・パパが抱えるさまざまな悩みや疑問に答えてもらいました。
毎朝保育園の先生に声をかけたほうがいい理由
保育園を選ぶ際、そして保育園が決まって子どもを預ける際、大事なのは「子どもファースト」であるということ。そして、親自身の明るいあいさつです。
子どもに対しては、「お仕事行ってきます」「今日も楽しんでね」。
保育園の先生に対しては、「おはようございます」「よろしくお願いします」。
「保育園の先生には、一言でいいから声をかけてください。先生は親の様子を見て、その日の子どもの状態を確かめています。声かけをしないと、先生は何の情報も与えられないまま子どもを預かることになってしまいます」(小栗ショウコさん)
こんなふうに、親のちょっとしたふるまいや判断一つで、大きな差が出ます。子どもを保育園に預けるメリットを少しでも大きくするためには、どんなことに気をつければいいのでしょうか。小栗さんのアドバイスを参考にしてみてください。
Q1. 職場復帰のため、子どもを保育園に預けなければなりませんが、他人に任せることに対してまだ不安があります。
小栗さん:保育士に任せることは決してマイナスではありません。むしろ、保育の専門家の立場から、同じ月齢の子どもとの違いや、子どもの小さな変化にも気づいてくれることもあります。お友だちや先生とのコミュニケーションの取り方なども身につかせることもできます。家でママと一緒にいるだけでは学べないことも多いので、0歳から3歳までの間に保育園や保育施設に預けることも貴重な教育になっているといえるでしょう。
Q2. 認可外保育施設に預けることになりそうですが、認可保育園に比べて保育の質に差がないか心配です。
小栗さん:そのような心配をする方は、「認可」と「認可外」の違いを理解していないことが多いように思います。心配なら、そこがなぜ認可外なのかを調べてみるといいでしょう。私が代表を務める「あっとほーむ」も、認可保育園では対応しきれない夜間保育を目的としているため、認可外の施設となっています。午前中開いていない、園庭がないなど、認可保育施設の条件を満たしていませんが、私はもともと「ママが働きやすくするために実家の代わりになる場所をつくりたい」と思って始めたことなので、認可保育施設のような園庭などは必要ないのです。認可外の保育施設には、このようなこだわりがあるはずなので、検討している施設があれば、そこのこだわりを聞いてみるといいでしょう。認可外でも行政の厳しい現地の立ち入り調査を毎年受けていて、その結果は行政のホームページで確認できます。そちらも確認してみてください。
Q3. いい保育園かどうか、見極めるポイントはありますか?
小栗さん:保育園探しの際に、多くの親は「便利か、便利じゃないか」を重視しがちです。何時から開園しているか、通勤途中にあるか、設備は新しいか、そういったハード面ばかりを気にしていると思いますが、子どもにとってそれらの要素はあまり関係ありません。子どもにとって大事なのは、「どういう人が自分を見てくれるのか」ということ。0歳から6歳の間の過ごし方が、子どもの価値観に大きな影響を与えるので、その園が子どもに合っているかどうか、ソフト面から見るようにしましょう。具体的には、園長と保育士さんの関係が良好か、保育士さんが子どもにどのような声かけをしているかを見ておくといいと思います。そして、子どもがその園に行くことを楽しみにしているかはいちばん重要です。
Q4. 子どもが安心して通園するために、どういった準備が必要でしょうか。
小栗さん:親が「ここはいい先生がいるから安心だよ」「お友だちと遊べる楽しいところだよ」と言うと、子どもは安心します。逆に「ここ本当に大丈夫かな?」と不安がっている様子を表に出してしまうと、子どもにもその不安が伝染してしまいます。まずは親が保育園を信頼していることを伝えましょう。入園前の「慣らし保育」というものがありますが、あれは子どもが慣れるためというだけでなく、親が慣れるためという目的もあるのです。子どもは自然にその環境に慣れるので心配いりません。
Q5. 保育園でのお迎えの際には、子どもにどのような声かけをしたらいいでしょう? 先生とはどんな会話を交わしたらいいですか?
小栗さん:朝と同様に、お迎えの際も、先生には一言だけでもいいのであいさつをしましょう。そして会話ができそうな時間があれば、「今日はどうでしたか?」と聞いてみてください。何か言ってくれるのを待っている親が多いんですが、それでは子どもが保育園でどう過ごしているか、生活の様子を知るために、積極的に声かけをしましょう。
子どもへの声かけでNGなのは、少し遅くなったときの「遅くなってゴメンね」。子どもは敏感なので、こういう言葉を聞くと、「保育園はママやパパがしかたなく自分を預けている場所」というニュアンスを感じ取ります。園が楽しいところだという前提が崩れてしまうので気をつけましょう。お迎えに遅れたときでも、「待っててくれてありがとう」「どうだった? 楽しかった?」と前向きな言葉をかけてください。
Q6. 子どもが寝ている時間に帰宅することもありそうで、そうなるとその日は子どもと一緒にいる時間が朝しかありません。短い時間でコミュニケーションを取るコツはありますか?
小栗さん:朝食を必ず一緒に取るようにするなど、子どもとちゃんと向き合う時間を10分でもいいから死守することが大切です。その間は、家事などもやらなくて大丈夫。子どもと二人だけの時間をつくってください。朝、自分が送り担当である場合は、通園途中にもたくさんコミュニケーションを取るようにしましょう。自分が送り担当でない場合は、「いってらっしゃい」と言って見送ることも忘れずに。その一言が、子どもにとっては、とてもうれしいことなのです。
保育園選びの際、そして預けてからも、主役はあくまで子どもです。小栗さんのご指摘のように、ハード面ばかりにこだわりすぎると、子どもが主役という大前提を忘れてしまいます。お迎えの際のNGワード「遅くなってゴメンね」は、言ったことのある人、言いそうな人も多いのではないでしょうか? 子どもには「保育園で長く遊べて今日は楽しかったでしょ」といったように、「ママが遅くなって今日はラッキーだったね」くらいのニュアンスで伝えたほうがよさそうです。「遅れてゴメンね」「次は遅れないよ」といった気持ちは、心のうちに秘めておきましょう。(取材・文/香川 誠、ひよこクラブ編集部)
監修/小栗ショウコさん
認定NPO法人あっとほーむ代表。女性が出産後も働きやすい環境をつくるために、1998年に保育園のお迎え付き夜間保育所&学童保育所「あっとほーむ」(神奈川県横浜市都筑区)を創設。同様の施設をつくりたい人を募り、起業支援にも力を入れている。