年々増加する食物アレルギー、皮膚トラブルとの関係は?
「皮膚トラブルがあると食物アレルギーになりやすい」という研究結果があることを知っていますか?4回にわたり、赤ちゃんの「秋冬のスキンケアとアレルギー」との関係について特集する2回目。子どものアレルギーに詳しい、国立病院機構相模原病院の佐藤さくら先生に皮膚トラブルと食物アレルギーとの関係について聞きました。
年々増加する食物アレルギー
東京都の「アレルギー疾患に関する3歳児全都調査」によると、平成11年度から26年度まで5年おきにアレルギー疾患のり患状況を調査したところ、児童全体の約4割が何らかのアレルギー疾患を持っていることがわかりました。中でも食物アレルギーは、平成11年には全体の7.1%だったのが平成26年には16.5%と、少しずつ増加し続けている結果となりました。
そもそも、アレルギーとはどんな病気なの?
アレルギーとは、卵や牛乳などのタンパク質、花粉、ダニ、ほこり、動物の毛など特定の物質(アレルゲン)に体の免疫が過剰に反応する病気のことです。過剰な反応として、せき、くしゃみ、鼻水、発疹(ほっしん)、皮膚のかゆみなどが起こります。
乳幼児に多いアレルギーは食物アレルギーとアトピー性皮膚炎です。
食物アレルギーは、食物が原因で起こるアレルギー症状。唇や舌、のどの腫(は)れ、じんましん、下痢、嘔吐(おうと)、鼻炎、せき、呼吸がゼーゼーするなど、症状や程度はさまざまです。
一方のアトピー性皮膚炎は、慢性的にかゆみの強い湿疹(しっしん)を繰り返す病気。湿疹は頭から脚のどこにでも出ることがあり、左右対称に繰り返して出ることが多いのが特徴です。
この2つの病気は、赤ちゃんでは同時に起こりやすいのが特徴です。つまり食物アレルギーのある赤ちゃんはアトピー性皮膚炎であることが多いのです。
皮膚トラブルが食物アレルギーの一因だった!
これまでも、食物アレルギーのある子はアトピー性皮膚炎を発症している子が多いことはわかっていました。とくに乳児では、食物アレルギーがアトピー性皮膚炎の原因のひとつと考えられています。
また、最近の研究結果では、アトピー性皮膚炎や乳児湿疹などの皮膚トラブルにかかっていると食物アレルギーになりやすい、ということがわかってきました。アトピー性皮膚炎のある食物アレルギーの治療も、スキンケア指導からスタートすることが一般的になっています。
口から入る食材にアレルギーを起こすのが食物アレルギーなのに、どうして皮膚が関係するのでしょうか?
皮膚から侵入するアレルゲンが 食物アレルギーの原因に!
アトピー性皮膚炎など湿疹がある皮膚は、バリア機能が低下しています。皮膚のバリア機能とは、外部からの刺激や有害物質の侵入を防ぐ角質層の働き。もともと赤ちゃんの皮膚は未発達で、角質層の細胞と細胞の間にすき間ができたり、はがれやすかったりして、水分を上手に保てません。バリア機能の働きが大人よりも弱いといえます。
もともと未発達な上に湿疹がありバリア機能が壊れていると、そこから家のほこりなどに含まれる、食物抗原(食物アレルギーのアレルゲン)が取り込まれ、アレルギーを起こしやすい体質になることがあります。これを皮膚からの感作(かんさ)といいます。
食物アレルゲンに感作されると、アレルゲン含んだ食材の離乳食を食べることでその食材に反応し、アレルギー反応を起こすことがあることがわかってきたのです。
スキンケアが食物アレルギーを予防!?
食物のアレルゲンが部屋のほこりにつくからといって、卵やパンなどを家族がまったく食べない、ということは不可能です。
ですから、皮膚から食物アレルゲンを取り込まないためには、皮膚のバリア機能を高めることが大切です。
つまり、皮膚の乾燥を防ぐスキンケアをしっかり行って湿疹を予防することで、食物アレルギーを予防できる可能性があるのです。
スキンケアは、生まれてすぐからが効果的
さらに、スキンケアは生まれてからなるべく早くから始めることが効果的であることもわかっています。新生児期からの保湿剤によるスキンケアをすることで、アトピー性皮膚炎を予防できる可能性がある、と注目されているのです。
佐藤先生教えて
ママ・パパたちから寄せられた、ちょっとした気がかり・疑問について、佐藤先生にお聞きしました!
Q 乳幼児にアレルギーが出やすい食物はありますか?
A 最新の即時型食物アレルギー全国モニタリング調査の結果によれば、0才代は鶏卵がトップで牛乳、小麦と続きます。1才代も鶏卵、牛乳、小麦がトップ3で、続いてナッツ、魚卵となります。
Q 食物アレルギーは成長とともによくなると聞きました。それなら卵や乳を食べ始める時期を遅らせたいのですが大丈夫?
A 卵は6カ月から与えたほうがアレルギーになりにくい、という研究データが発表されています。ただこれは非常にこまかくルールを決めて食べた場合ですが、少なくとも遅く始めることは発症の予防になりません。2019年春に改定された「授乳・離乳の支援ガイド」でも、卵の与え始めは離乳初期(5~6カ月)からとなっています。自己判断で遅らせないほうがいいでしょう。
(取材・文/岩崎緑、ひよこクラブ編集部)
お話/佐藤さくら先生
(独立行政法人国立病院機構相模原病院 臨床研究センター 病態総合研究部 病因・病態研究室長)
小児科医。日本アレルギー学会代議員。日本小児アレルギー学会評議員。診察と同時に食物アレルギーの現状、原因の研究を重ね、アレルギーに悩む親子に寄り添う。