それでも住みたいタワーマンション。選ぶときの注意点は?
台風19号による被害で取りざたされた際には、リスク面がフォーカスされることも多かった「タワーマンション」。しかし、そうしたリスクがある一方で、当然ながら魅力やメリットもあります。ここでは不動産コンサルタントの秋津智幸さんに、タワーマンションの魅力と注意点、選ぶときのポイントを整理していただきました。
秋津 智幸(不動産コンサルタント)
不動産サポートオフィス 代表コンサルタント
不動産サポート.jp
横浜国立大学卒業。公認不動産コンサルティングマスター・宅地建物取引士・ファイナンシャルプランナー(AFP)。自宅購入、不動産投資、賃貸住宅等不動産全般に関する相談・コンサルティングを行う他、企業研修や各種セミナー講師、書籍、コラム等の執筆・監修にも取り組む。著書:「賃貸生活A to Z」(アスペクト)、「〔2019~2020年版〕30年後に絶対後悔しない中古マンションの選び方」(監修)(河出書房新社)他。
タワーマンションに正式な定義はない?
今人気のタワーマンションですが、実はタワーマンションという言葉は正式な用語ではなく、法律的な基準や階数による定義などもありません。一般的には高さ60m以上の建物を超高層建築物とする考え方があり、これに該当する住居用建築物(マンション)をタワーマンションと呼んでいます。ちなみに高さ60m以上のマンションというと、階数に換算しておおよそ20階建て以上となります。
タワーマンションに住む魅力・メリットは?
・(上層階であれば)窓からの眺望
・便利な立地
・充実した共用施設
・優れた防犯対策
・プライバシー対策など
タワーマンションの魅力と言えば、やはり“高さ”から連想されるように窓からの眺望です。
眺望だけでなく、タワーマンションの特徴として一棟の建物の総戸数は、数百戸、多いものになると千戸を超え、この規模ならではの充実した共用施設も大きなメリットとなっています。マンションにもよりますが、スポーツジムやプール、託児施設、キッズルーム、ゲストルーム、眺望ラウンジなどが挙げられます。こうした施設がマンション内にあれば、子育て世帯には雨の日でもマンション内で子どもと一緒に過ごせるうえ、居住者専用なので混雑も少なく、不審者の侵入もないためより安心感がありますね。また、マンションの1階や下層階が商業施設となっているマンションなら、すぐに買い物ができるのも助かります。
さらに、この高さや規模の建物を建てることができる場所は中心地の駅前など非常に限られ、多くのタワーマンションが非常に便利な場所に立地していることも魅力になっています。
また、最近のタワーマンションは、防犯対策も優れており、ダブルオートロック(エントランスだけでなく、エレベーターホールなどに複数のオートロックがある)や要所要所に防犯カメラが設置され、24時間有人管理などセキュリティ面も厳重に対策されています。
加えて、階数が高くなるほど、周辺からの目線がなくプライバシーが守られるうえ、蚊などの虫が出にくいということも子育ての視点ではメリットになります。
タワーマンションで気を付ける点は?
・自然災害時
・(上層階であれば)洗濯物や布団が干せないこと
・通勤時間帯のエレベーター混雑
・大規模修繕費
タワーマンションにもやはり注意すべき点があります。
まずは自然災害時の注意点。タワーマンションは超高層建物であるがゆえに、上層階ほど地震発生時には揺れが大きくなることや避難に時間がかかるという点は理解しておかなければなりません。また、最近も台風による浸水の被害にあったタワーマンションがあり、このとき話題になったのが浸水による停電でした。タワーマンション内の移動はエレベーターが主になりますが、停電で電気が使用できなくなるとやはり上層階ほど移動が困難になってしまいます。
次に普段の生活では、上層階ほど洗濯物や布団が干せないことや朝の通勤時間帯のエレベーターの待ち時間なども気になる点です。
さらに、将来の大規模修繕や建替えがタワーマンションは容易ではなく、将来その費用が高額になるなどの不安も指摘されています。特に大規模修繕費が高額になることが想定され、毎月の修繕積立金が高いこと、加えて共用施設が充実している分、管理費も高くなる傾向があります。この点は毎月の家計に関係しますので、注意が必要です。
ワーマンションを選ぶときのポイント
タワーマンションを選ぶ際は、前述の注意点を意識して選ぶことがポイントになりそうです。
自然災害時
地震のときにタワーマンションが揺れるのは、地震に対して配慮されていることの裏返しです。建物が揺れることによって地震力を逃がし、建物やそこに住む人を守ることになります。したがって、タワーマンションが地震時に揺れるのは、ある程度は覚悟するしかありません。ただ、構造的にタワーマンションでも中低層階なら揺れは少ない傾向がありますので、地震の揺れが気になる人は低層階を選ぶという方法があります。
津波や浸水被害などに関しては、タワーマンションでは1階、2階が住宅のケースは少ないので、浸水自体はそれほど気にしなくていいのですが、気になる人は考慮して階を選ぶといいでしょう。
なお、タワーマンションによっては規模が大きいことから自然災害に備えて、非常用発電機器、非常食や水、毛布など居住者用の災害備品を備蓄庫に備えている物件もあります。この点を入居前などに確認すると安心かもしれません。先日の災害報道などを踏まえると、発電設備がマンションのどこにあるかを確認することも欠かせないでしょう。
(上層階であれば)洗濯物や布団が干せないこと
洗濯物や布団が干せない点を気にする人がいますが、低層階であれば干せるタワーマンションもあります。
通勤時間帯のエレベーター混雑
朝の通勤時間帯のエレベータ―の混雑ですが、混雑を避けることができる場合も。仮に、災害による停電が発生した際でも低層階ならエレベーターを利用しなくても往来が容易です。
大規模修繕費
最後にタワーマンションの修繕積立金や管理費が高い点については、その金額が部屋の面積に応じて決まるので、不要に広い面積の部屋は避け、必要な面積の部屋にすることで支出を抑えることができます。共用施設は物件によって異なるので、本当に利用するかどうかしっかり考えて物件選びをすることも重要です。
タワーマンションを選ぶ際は、眺望を求めて上層階を選ぶか、気になる点を避けて中低層階を選ぶかなど、譲れない条件とのすり合わせが大切といえそうです。考え方は人それぞれ。自分たちにあったコストパフォーマンスを探すことをおすすめします。