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約16万人! 日本のおたふくかぜ感染者数は先進国イチ高い。難聴リスクも

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流行性耳下腺炎ワクチン接種の青い色のテーマ
Teka77/gettyimages

おたふくかぜ(ムンプス)に自然感染すると、合併症として、聴力の回復が望めないムンプス難聴を発症する恐れがあるため、小児科医だけでなく耳鼻咽喉(いんこう)科医も、おたふくかぜワクチンの定期接種化を提言しています。そこで、たまひよONLINEでは小児難聴に詳しい国立成育医療センター耳鼻咽喉科診療部長の守本倫子先生に、日本のおたふくかぜ発症の実態とムンプス難聴のリスク、そして、おたふくかぜワクチンの重要性について教えてもらいました。
※写真はイメージです。

日本のおたふくかぜ感染者数は、「先進国とは思えない」ほど多い!!

(出典:WHO 図版提供/守本倫子先生)

「日本はワクチン後進国」というのは、子どもの病気に携わる医師からよく聞く言葉です。「WHOが調査した国別のおたふくかぜ発症例数は、それを裏付けるような結果」と守本先生は言います。

「2016年に中国では17万5001人、日本では15万9031人がおたふくかぜを発症しています。中国の人口は13億8000万人、日本の人口は1億2000万人。日本より12倍近い人が住んでいる中国と日本の発症例数が、それほど変わらないのは驚きですよね。
日本は先進国とは思えないほど、おたふくかぜ感染者が多い国なのです。それはワクチン接種率の低さが原因です」(守本先生)

ムンプス難聴は、子どもと子育て世代にとくに多いおたふくかぜの合併症

おたふくかぜに自然感染し、ムンプスウイルスが内耳まで侵入してしまうと、内耳に激しい炎症が起き、ムンプス難聴を発症します。急激に聴力が低下し、会話レベルの音が聞き取れない「高度難聴」や、耳元で話されても聞き取れない「重度難聴」となり、回復はほぼ望めません。

守本先生をはじめとする日本耳鼻咽喉科学会の医師が行った、「2015~2016年のムンプス流行時に発症したムンプス難聴症例の全国調査」によって、おたふくかぜの流行時期にムンプス難聴を発症するのは、3、4才~小学生が最も多く、次に子育て世代に多いことがわかりました。

「集団生活が始まる幼児・学童期の子どもの間でおたふくかぜが流行し、それが家庭に持ち込まれることで、ママ・パパも感染します。そのため、この2つの世代でムンプス難聴の発症率が高くなってしまうのです」(守本先生)

おたふくかぜワクチンの接種率が低いから、ムンプス難聴の発症も減らない!

ムンプス難聴はおたふくかぜの合併症で起こる難聴なので、おたふくかぜに感染しなければ、ムンプス難聴になることはありません。そして、おたふくかぜにはワクチンがあります。つまり、おたふくかぜワクチンを接種すれば、ムンプス難聴を防げるということです。
しかし「ムンプス難聴の患者は減少していない」と守本先生は言います。

「1989年にMMR(麻疹(ましん)・風疹(ふうしん)・おたふくかぜ混合ワクチン)が導入されましたが、副反応の無菌性髄膜炎の頻度が問題となり、1993年に中止に。その後、MRワクチンは定期接種、おたふくかぜワクチンは単体で任意接種となりました。
副反応問題の影響で『おたふくかぜワクチンは怖い』と考えたり、『任意=受けなくてもいいワクチン』ととらえたりしてしまうママ・パパも多いことから、おたふくかぜワクチンの接種率は4割程度にとどまっています。
そのため、周期的におたふくかぜが流行し、流行時期にはムンプス難聴の発症が増えてしまうのです」(守本先生)

怖いのは、ワクチンの副反応より自然感染したときの合併症

ムンプス難聴の発症数を減らすには、ワクチンを接種しておたふくかぜの感染者数を減らすことが大切、ということがよくわかりました。
でも、「おたふくかぜワクチンの副反応の無菌性髄膜炎が心配だから、接種に踏み切れない」というママも少なからずいます。副反応についてはどう考えればいいのでしょうか。

「おたふくかぜワクチンの副反応として無菌性髄膜炎は起こりえますが、無菌性髄膜炎の予後は良好ですし、起こす頻度は0.1~0.01%です。無菌性髄膜炎はおたふくかぜに自然感染しても発症するリスクがあり、その頻度は1~10%。ワクチンの副反応よりずっと高い確率です。
しかも、自然感染だとムンプス脳炎を起こす頻度が0.02~0.3%あり、致死率は1.4%です。ワクチンより自然感染のほうが怖いことがわかりますよね」(守本先生)

日本国内では、おたふくかぜは3~4年周期で流行しており、前回の流行は2016年。そろそろまた流行期がやってきそうです。
おたふくかぜワクチンをまだ受けていないお子さんをお持ちのママ・パパは、この機会にぜひ接種を検討してください。

もっと知りたい!おたふくかぜワクチンQ&A

Q 1歳のときおたふくかぜのワクチンを接種しました。これで大丈夫ですか。

A ワクチンは接種後、徐々に効果が減っていき、5年後に有効性が70%程度になります。おたふくかぜが流行しやすい学童期になったとき、ワクチンの有効性を十分に高めておくために、日本小児科学会では、1才と就学前の2回の接種をすすめています。

Q パパは子どものころにワクチンを接種したか、記憶があいまいです。接種したほうがいいですか。

A ママ・パパがおたふくかぜになる原因の大半は、おたふくかぜになったわが子からの二次感染なので、お子さんのワクチン接種を第一に考えてください。ママ・パパがワクチン接種をしていないことが明らかな場合は、お子さんと一緒に受けるといいでしょう。

Q ワクチンの免疫は、おたふくかぜにかかったときにできる免疫より弱いのでは?

A おたふくかぜに自然感染してできる免疫のほうが、ワクチン接種で獲得する免疫より強いのは事実です。でも、自然感染はムンプス難聴や脳炎など重篤な合併症を起こすリスクが高く、メリットよりデメリットのほうが格段に大きい、ということを理解してください。

ムンプス難聴を減らすには、おたふくかぜが流行するのを阻止するしか方法はありません。でも、多くの子どもがおたふくかぜワクチンを接種すれば、いずれはこの世からムンプス難聴がなくなる日がくるかもしれません。(取材・文/東裕美、ひよこクラブ編集部)

■監修/守本倫子先生
(国立成育医療センター耳鼻咽喉科診療部長)
新潟大学医学部卒業。医学博士。日本耳鼻咽喉科専門医、日本気道食道科専門医。臨床遺伝専門医。専門分野は小児耳鼻咽喉科、小児喉頭疾患、小児難聴。

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