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「美人だね」はタブー表現!?スウェーデンの『比べない子育て』とは

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笑顔若い多民族学校グループ子供着てコートやカメラ、完全な長さ、正面に手を振って自分の幼児学校の外の通路の行に立っているランドセル キャリング
monkeybusinessimages/gettyimages

「ワンオペ」「孤育て」など育児の大変さを象徴する言葉が次々と生まれてしまう日本…どうすれば子育てしやすい環境を作ることができるのでしょうか?
そのヒントを手に入れるべく、子育てに優しい国として有名なスウェーデンへ家族で移住したのは、『スウェーデンの保育園に待機児童はいない』の著者である久山葉子さん。
育児・共働きを経験して感じたことを、自身の言葉で綴ってもらいます。

自分の中にある「常識」に気付かされた海外生活

早いもので、この連載も最終回になりました。
海外に移住してもっとも大きかった学びは、日本では「こうあるべきだ」と思い込んでいた常識が「海外では全然そうじゃない」と気づかされたこと。日本ではそれが当たり前だと思い込んで、女として妻として母としての自分に勝手な重圧を与えていた気がします。
最終回である今回は、わたしがスウェーデンの子育てでいちばん刺激を受けた「比べない子育て」についてお話させてください。

スウェーデンには受験がない!?

まず驚いたのは、「受験がない」こと。最近は人気の私立小学校や私立中学校もあるのに、どうやって生徒を選ぶのでしょうか。答えはずばり「早いもん順」。スウェーデンでは子どもに順位をつけることは禁じられています。だから、人気の私立校に入学を許可されるのは、ただ単に申し込んだ順なのです。オンラインで子どもの情報を入力するだけで申し込みは完了。

学校に入ってからも、成績別にクラスを分けたり、子どもを成績で順位づけすることは禁じられています。日本では中学受験に参戦し、小学校のときから毎月塾で順位表を配られていたわたしには、信じられないほど穏やかな環境です。

子どもに順位をつけない――つまり「子どもを比べない」という考えは、親たちの普段の子育てにもしっかり根づいています。例えば、「〇〇ちゃんはできてるのに」というように他の子と比べるような発言は絶対にしません。また、「もうお兄ちゃんなんだから~」「もう〇歳なんだから~」といった世間一般の基準と比較するような注意のしかたもしません。わたしもついつい娘に対して「女の子なんだから、もうちょっと部屋をきれいに……」と言いそうになるのを、何度もぐっとこらえたことがあります。親はあくまでその子個人を見てあげるべきであって、女だからとか、何歳だかとか、関係ないという考え方なのです。

「見た目」に言及したら、娘に激怒された話

もうひとつとても印象的だったのは、大人に対しても子どもに対しても、「見た目について言及しない」こと。見た目をけなすのはもちろん、ほめるのもだめ。日本で生まれ育ったわたしは今でも日本に帰ると、友達のお子さんに対して「○○ちゃん可愛いね~」とか「〇〇くんイケメンだね!」なんてほめてしまうのですが、それはスウェーデンではタブーです。人は見た目ではない――というのはこちらでは子どもでも知っているモラルの基本。娘が保育園に通っていたころ、うっかり「○○ちゃんのママ、美人だよね~」と言ってしまったことがあるのですが、しらけた目で「ママ、見た目がどう関係あるの?」ときつく返されました。

去年の夏、こんなこともありました。お友達の誕生日パーティーに娘を送っていったとき、挨拶をしに出てきてくれた男性が誰だかわからなかったので、あとで娘に尋ねたのです。「ねえ、あの男の人って、〇〇ちゃんのママの新しい彼氏だったのかな?」
「あの男の人ってどの男の人のこと?」
「ほら、あの肌の色の濃い……」
そこで娘に激怒されました。「他人の肌の色に言及するもんじゃない! 失礼すぎるよ!」
でもじゃあどう説明すればいいの……と小声で言い訳しつつも(ちなみに髪の毛の色には言及してもいいのだそうです)、わたしは心から嬉しかった! 自分の子どもがそこで激怒したことが。今のスウェーデンの子どもたちは、人間としてモラルに反することがなんなのかをしっかり理解しているのです。この子たちが大人になったとき、未来ははきっと素敵な社会になっている――そう思わずにはいられませんでした。

人種や国籍で差別されるのはもちろん、年齢や性別、見た目の良し悪しで「あなたは〇〇なんだから~」と言われるのは、大人でも嫌なものだなと思います。そうは言いながらも、よく考えてみると、実は自分に対しても他人に対しても、口には出さずともそんな偏見をもってしまっていることがあったのかもしれないと気づきました。それは、わたしたち自身がそんなふうに育てられてきたからなのかもしれません。未来を担う子どもたちにはそんな偏見を植えつけないように、育てていければいいなと思います。

「広い世界には様々な考え方がある」と知るだけで楽になる

振り返ってみれば、日本とはちがう国に住むことで、わたしは重圧から自分を解放することができました。こんな私の経験を伝えることで、日本のママ・パパを精神的に楽にすることができるかも――と、こちらで始めさせてもらった連載。スウェーデンと日本のどちらが正しいかということではなく、広い世界には様々な考え方があることを少しでもお伝えできていたら幸いです。

(文・久山葉子)

連載【スウェーデンでのくらしが気づかせてくれた、大切なこと】最終回は、「比べない子育て」についてお届けしました。集団の中で生きる人間にとって、「くらべない」はとっても難しいことかもしれませんが、「子どもが持つ個性」を見つけていくという意味でとても大事な行為なのかもしれません。
(構成:たまひよONLINE編集部)

Profile●久山葉子(クヤマヨウコ)
1975年兵庫県生まれ。神戸女学院大学文学部英文科卒業。スウェーデン在住。翻訳・現地の高校教師を務める。著書に『スウェーデンの保育園に待機児童はいない(移住して分かった子育てに優しい社会の暮らし)』を執筆、訳書にペーション『許されざる者』、マークルンド『ノーベルの遺志』、カッレントフト『冬の生贄』、ランプソス&スヴァンベリ『生き抜いた私 サダム・フセインに蹂躙され続けた30年間の告白』などがある。

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