住宅ローン借り換え“タイプ別”ベストタイミング
家計の支出のうち大きな金額は住宅に関するもの。なかでも、一度契約したら長いお付き合いになる「住宅ローン」を見直すことができたら、家計は大助かりですよね。でも、どのタイミングで見直すとよいのでしょうか。ファイナンシャルプランナーの中村諭さんに聞きました。
中村諭
ファイナンシャルプランナー[CFP(R)認定者]、オールアバウト「住宅ローン」ガイド[住宅ローンソムリエ(R)]
住宅ローンの専門家「住宅ローンソムリエ(R)」との商標を掲げ、FP歴20年。子育て応援FP事務所(赤ちゃん同伴勤務OKのFP事務所)を経営。ローン相談は年間200件を超える。自身も3人の子を持つ父
タイプ別! 住宅ローン借り換えを検討するベストタイミング
住宅ローンは、毎年のように新しいものがさまざまな金融機関から出ています。そのため、返済中の住宅ローンと、最新の内容との差を毎年見直してもよいくらいです。そうはいっても、現実的に実践するのはなかなか難しいので、各ご家庭のタイプに応じた、おすすめの住宅ローン見直しタイミングをご紹介します。
(1)よく考えて今の住宅ローンを決めた人
今の住宅ローンを借りるときに、よくよく考えて比較検討した人(借り換えした人もここに当てはまります)の場合、もし5年以上経過していたら見直すとよいでしょう。なぜなら、ローン返済開始から5年間程度は「借り換えメリット」が出にくいためです。
住宅ローンの借り換え時には、最初にローンを組んだとき同じく諸費用がかかります。そのため、借り換えに要した費用を上まわるメリットがある場合にのみ、借り換えを検討するとよいでしょう。
(2)住宅購入時に不動産屋さんの紹介で住宅ローンを決めた人
今すぐ見直ししましょう。
不動産屋さんに紹介された住宅ローンが「提携ローン(特別な金利が使えるローン)」であった場合は「ベストな選択だった」と認識できるかもしれません。しかし、単に担当者の使い勝手がよいだけのローンを顧客に紹介していた場合(例えば、融資の審査が早いことが決め手であった場合など)、実はそれほどよい条件ではない可能性もあるからです。
(3)住宅購入時に不本意なローンになってしまった人
今すぐ見直ししましょう。
何らかの理由で、住宅ローンの審査がなかなか通らなかった人は、不本意なローン返済を続けているかもしれません。時間の経過とともに、自分の古傷(個人信用情報の記録)がクリアになっているかもしれないので、ぜひ定期的に見直したいところです。見直した結果、今年はNGでも翌年はOK、ということもありえます。私のお客さんのなかにも、2年越しで借り換えに成功したケースがありました。
ライフイベントから考える、借り換えのベストタイミング
この先のライフイベントをむかえる際に次のキーワードが出てきたら、住宅ローンは見直しのタイミングです。
(1)地震保険の更新時
地震保険の更新タイミングに合わせて、例えば5年ごとに見直すなどと決めるのがおすすめです。
(2)自動車ローンの完済時(自動車ローンを組む前)
ローンが複数あると融資の審査に通らないことがあるので、ローンの本数が少ない時期は見直しのタイミングでしょう。
(3)転職を考え始めたとき
転職後しばらくはローンを組めないので、転職を考え始めたときは住宅ローンを見直すタイミングでもあるといえるでしょう。
(4)定年退職
定年退職後、収入は減ったのにもかかわらず住宅ローンの返済が続く人は少なくありません。定年退職時は見直しのタイミングといえるでしょう。
(5)49歳
50歳になると好条件のローンを組みにくくなるので、49歳は見直しのタイミングでしょう。
(6)転勤・引越しのタイミング
転勤などによる引越し時も、実は見直すべきタイミングです。自宅を「賃貸」として活用するのであれば、住宅ローンからアパートローンへの借り換えが必要です。
(7)出産・育休取得時期
産休・育休の取得や時短勤務により、世帯年収がダウンした場合も見直しのタイミングです。
金利だけで選んではいけない
住宅ローン選びの際は、ローンにまつわる諸費用や団体信用生命保険も一緒に考えるべきなので、金利だけに目を奪われると損をする可能性もあります。広告などで、とても魅力的な金利が書いてあっても、その金利をあなたが使えるとは限らないので注意しましょう。
住宅ローン返済中にやってはいけないこと
住宅ローンの返済中は、以下の行為に気を付けましょう。もし返済中に以下の行為をすると、銀行からローンの一括返済を請求されたり、老後の家計が困窮したりする可能性があります。
・「賃貸物件」に転用し家賃収入を得る行為
…住宅ローンの不正利用として、金融機関から一括返済を要求される可能性があります。
・中途半端な繰上返済
定年退職後にもっとも困るのは、家計が「ローンあり & 預金無し」である状態です。この状態よりも「ローンあり & 貯金あり」の家計のほうが、対処方法の選択肢があります。目先の損得勘定で繰上返済をするのは考えものです。
人生100年時代ともいわれる現代、住宅ローンの返済が定年退職後も続くことも珍しくありません。自分にあったタイミングで賢く見直すことで、早いうちから「老後資金積立て」に資金をまわすことも大事です。「繰上返済」で手元資金を銀行に渡すよりも、まずは賢いローンの借り換えを検討しましょう。