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こころが不安定…。マルトリ(不適切な養育)のサインに気づいたら、周囲にSOSを! 小児神経科医

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家族の問題のための悲しい少女。
Moostocker/gettyimages

子育て中は「私、怒ってばかり…」「子どもの前で、夫婦で大げんかしてしまった」など落ち込むこともあると思います。しかし完璧なママやパパはいません。大切なのは、子どもに対する避けたいかかわり“マルトリートメント”(不適切な養育、以下マルトリ)を日常化しない術を知っておくことです。脳やココロにダメージを負った子どもたちの相談や治療に当たる、小児神経科医・友田明美先生に、子ども側からのマルトリのサインとママやパパがマルトリから抜け出す方法を教えてもらいました。

激しい夫婦げんかを見て育った子は、怒鳴って問題を解決するように

マルトリの中には「面前(めんぜん)DV」というものがあります。これは、子どもの前で夫婦げんかやDVが日常的に行われている状態です。そうした親の姿を見聞きして育つと、子どもは何かあると怒鳴り、暴力で解決するようになります。
友田先生が診察した中でも、次のようなケースがありました。

【3歳の女の子・Aちゃんの場合】

Aちゃんのママは、妊娠中からパパにDVを受けていました。Aちゃんが生まれたあとも、Aちゃんの前で、パパはママを事あるごとに怒鳴ったり、なじったりを繰り返していました。
そうしたパパの姿を見ながら育ったAちゃんは、成長するにつれて、自分が思い通りにならないと大きな声で怒鳴るように。心配したママはAちゃんを連れて受診。Aちゃんは怒鳴るような攻撃的な面がある一方で、夜中に目を覚まして「怖い」と泣き出すなど、ココロが不安定な状態でした。
Aちゃんにとって、まず必要なのは医療的なケアはもちろんですが、一刻も早くマルトリの環境から救い出し、安心して暮らせる環境を整えてあげることでした。そのため心理的な治療を行うかたわら、両親は話し合いのもと別居し、現在、離婚調停中です。Aちゃんには「もう心配ないよ。怖くないよ」とまわりの大人が根気よく伝えて、これからもフラッシュバック(嫌な思い出が急によみがえること)が起きないように慎重にケアしていくことが必要です。

マルトリが習慣化すると、健やかなココロの発達は阻害されます

ほかにもマルトリの中には、「心理的マルトリ」といって、子どもに対する言葉の暴力があります。言葉の暴力が習慣化すると「自分は、どうせダメだから…」とすぐにあきらめたり、何か失敗するたびに「自分のせいだ!」と自分を責めるようになる子もいます。
また、たたくなど「身体的マルトリ」を受け続けた子は、ママやパパのマネをして、何か問題が起きるとすぐに暴力で解決しようとします。就学後は、いじめる側に加担するケースも少なくありません。
マルトリには「ネグレクト」も含まれますが、ネグレクトを継続的に受けていた子は、自己肯定感が育たず、自分を否定する傾向が強くなります。自分を追い込んでしまう結果、思春期以降、「うつ」になる場合もあります。

マルトリが習慣化したら、第三者の力を借りて負の連鎖を断ち切ることがカギ!

ママやパパがマルトリをするには、必ず原因があります。なかには「忙しくてイライラすると、つい子どもに当たってしまう」など、原因がわかっていても止められず、自己嫌悪に陥るママ・パパもいます。
もし「負のスパイラルに陥っている」と思ったときは、市区町村で行われている子育て相談などを気軽に利用してみてください。もし子どもから離れて気分をリフレッシュしたいときは、一時保育などを利用するのもいいでしょう。第三者の力を借りると、子育て環境が大きく変わり、マルトリによる負の連鎖を断ち切れることが多々あります。(取材・文/麻生珠恵、ひよこクラブ編集部)

ママやパパの中には、子育て相談などを利用すると“自分の子育てのしかたを注意されるのではないか!?”と心配する人もいるかもしれません。しかし基本的には、そうしたことはない、と友田先生は言います。先生によると、ママやパパが育児ストレスを抱えていると、脳の前頭前野の活動が低下し、子どもの気持ちが読み取りづらくなります。そうすると子育てが空回りし、より育児ストレスがたまる悪循環を招くことに。そうした負の連鎖を断ち切るためにも、第三者の力を借りる“きょうどう子育て(とも育て)”つまり“チーム育児”を、ぜひ取り入れてみてください。

■監修/友田明美先生
(福井大学 子どものこころの発達研究センター 教授)

小児神経科医、医学博士。専門は、小児発達学、小児精神神経学。2009~2011年および2017年~2019年に日米科学技術協力事業「脳研究」分野グループ共同研究日本側代表を務める。著書に「親の脳を癒やせば子どもの脳は変わる 」(NHK出版新書)、「実は危ない! その育児が子どもの脳を変形させる」(PHP研究所)、「脳を傷つけない子育て」(河出書房新社)などがある。

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