「コロナ禍」子どもの心のケアのためにしたいこと・専門家に聞く
新型コロナウイルスの感染拡大で、日本中が不安で覆われています。子どもに不安やストレスを感じさせないために、ママ・パパができることは何でしょうか。ひよこクラブでは、乳幼児の心理や親子関係に詳しい、日本女子大学人間社会学部心理学科教授 の塩﨑尚美先生に聞きました。
子どもは、ママ・パパの表情や会話などから不安を感じ取る
感染拡大、外出自粛、マスクや消毒薬の不足など、新型コロナウイルスに関する話題は、不安になることばかりです。そういう世の中の流れを、子どもたちはどう感じているのでしょうか。
「0~2才ごろまでは、『コロナは怖い』という認識はありません。ただ、ママ・パパが抱いている不安や心配は敏感にキャッチするので、その影響で気持ちが不安定になることがあります。
3才以降になると、図書館や児童館などいつも通っていた施設が休館になったり、毎日会社に行っていたパパが家で仕事をしていたりして、『いつもと違う、何かがおかしい』と察知しますし、さらに、ママ・パパの表情や会話などから『コロナは怖いものらしい』と理解し、不安を感じるようになることがあります」(塩﨑先生)
子どもが不安やストレスを感じたときには、どんな行動が見られるの?
コロナに限らず、子どもが不安やストレスを感じたときに現れるサインがあります。
・夜泣き、眠りが浅くなる、
・ぐずる、機嫌が悪くなる
・食欲がなくなる
・ママ・パパから離れなくなる
これらは年齢に関係なく見られるサインです。
さらに、運動の能力が高まると、言葉で表現できない不安やいらだちを行動で表すようになるので、物を壊す、暴れる、たたくなど攻撃的な行動をとることも。きょうだいがいる場合は、きょうだいげんかが増えることもあります。
一方、普段からあまり気持ちを外に出さないタイプの子は、不安になると、余計に気持ちを抑え込む傾向にあるそう。
「普段あまり気持ちを外に出さないタイプの子は、とくに注意して子どもの様子を観察しましょう。おとなしく遊んでいるように見えても、楽しそうにしていなかったり、ぼお~としたりしているときは、不安やストレスをため込んでいる可能性があります」(塩﨑先生)
自分だけでなく、子どもも守らなければいけないママ・パパは、今の状況に大変な不安やストレスを感じていると思います。そのため、どうしても気持ちに余裕がなくなりがちですが、子どもの表情や行動に変化がないか。観察することを忘れないようにしましょう。
「ストレスがあるな…」と思ったら、親子で笑顔になれることをしよう!
わが子が不安になっているな、ストレスを抱えているなと感じたとき、ママ・パパはどうすればいいのでしょうか。
「『何をすれば、この子が笑顔になるのか』を考えること」だと塩﨑先生は言います。
スキンシップをする、ダンスをする、お絵かきをする、一緒に料理をするなど、なんでもいいそう。わが子が喜びそうなことをいろいろ探して、一緒に楽しむことが大切です。
「まず、ママ・パパが『子どもと濃密に過ごせるこの時間を、親子で楽しもう』と前向きになりましょう。子どもの心を明るくするいちばんの処方せんは、ママ・パパの笑顔です。親子で大きな声で笑い合えたら、子どもはもちろん、ママ・パパも元気がわいてきますよ」(塩﨑先生)
また、「生命の力」を感じることも、不安を解消するのにとても有効なんだとか。
「こんな時でも植物はすぐすくと育っていますよね。とくに今は植物が成長し、生命の息吹を感じる季節。窓を開けて外を見ながら、『あの木はお花がどんどん咲いていくね』『昨日より葉っぱの色が濃くなったね』など、ちょっとした変化を感じるだけで十分です。自然のエネルギーを受け取ると、気持ちが前向きになれるものです」(塩﨑先生)
この状況を、子どもの「生きる力」が育つ機会ととらえましょう
「子どもの心から不安を取り去るには、子どもを笑顔にすることが大切」と説明しましたが、「何もかも親が用意する必要はない」とも塩﨑先生は言います。
子どもが3才以降なら、「外に出られなくてたいくつだよね、何をしたら楽しくなると思う?一緒に考えてよ」と提案し、子ども自身に考えさせることも大切だからです。
「どうしたら、不自由なこの状況を楽しくできるかを、子ども自身が考えることで、子どもの想像力や思考力、困難を乗り越える力などが育ちます。それに、親から与えられたものよりも、自分で考えついたことや見つけたものは熱中できるので、集中力も高まります。
今の状況は、子どもの生きる力を育てる機会になると私は考えています。ママ・パパも明るい未来が来ることを信じて、子どもに寄り添ってくださいね」(塩﨑
監修/塩崎尚美先生 取材・文/東裕美、ひよこクラブ編集部
新型コロナウイルスとの戦いは長期戦だと考えられています。不安や心配は常につきまといますが、親子で思いきり笑える時間を作ることで、親子ともに気持ちを前向きにしたいもの。そして、子どもの「生きる力」が育つのを応援しましょう。
塩崎尚美先生(しおざきなおみ)
(日本女子大学人間社会学部心理学科 教授)
Profile
臨床心理士。専門は発達臨床心理学、乳幼児からの親子関係、子育て支援。一男一女のママでもあります。