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スウェーデンの独自コロナ対策、キーワードは「信頼関係」か

医療フェイスマスク。スウェーデンの検疫
Yakobchuk/gettyimages

世界中で猛威をふるい続ける新型コロナウイルス。多くの国は「ロックダウン」に踏み切る中、独自路線をとっているのがスウェーデンです。感染者は増えているものの、店がいつもどおりに営業しており、いまだ一斉休校もしていない状態。その背景には一体どんな理由があるのでしょうか。
今回は、スウェーデンへ家族で移住し、子育てしながら現地で翻訳家・教師として働く久山葉子さんに、コロナウイルス対策において改めて見えた「スウェーデン政府と国民の関係性」について綴ってもらいます。
※この記事は2020年4月20日時点 の情報です。

【久山葉子(クヤマヨウコ)】
1975年兵庫県生まれ。神戸女学院大学文学部英文科卒業。スウェーデン在住。翻訳・現地の高校教師を務める。著書に『スウェーデンの保育園に待機児童はいない(移住して分かった子育てに優しい社会の暮らし)』を執筆、訳書にペーション『許されざる者』、マークルンド『ノーベルの遺志』、カッレントフト『冬の生贄』、ランプソス&スヴァンベリ『生き抜いた私 サダム・フセインに蹂躙され続けた30年間の告白』などがある。

注目されるスウェーデンの「緩い」コロナ対策

スウェーデンでは、4月10日からイースターの連休でした。日本ではあまりなじみがないかもしれませんが、こちらではクリスマスと夏至祭に並ぶ大きな行事で、家族や親せきで集まって過ごすところが日本のお正月のような感覚です。孫に会えるのを楽しみにしているおじいちゃん・おばあちゃんも多い中、今年はコ親戚で集まることは自粛しなければいけませんでした。
スウェーデン王室も、自宅(お城?)に閉じこもる国王夫妻が、孫たちからビデオ通話でイースターの挨拶を受けている様子を公開しました。

イースターには、子どもたちが魔女の格好をしてほうきにまたがって、近所の家にお菓子をもらいにいく風習があるのですが、今年は首相が直々に「今年のイースターは、魔女たちもほうきを駐車場に停めておいてください」と子どもたちに呼びかけました。

とはいえ保育園・小中学校は普通に開いていますし、レストランやショップも営業しています。このかなり「緩い」スウェーデンのコロナ対策に、今世界中から注目が集まっています。スウェーデンで禁止されているのは「老人ホームの訪問」と「50人以上の集会」だけで、それ以外は行政指導と呼ばれる勧告として「屋内外で他の人と距離を開けること」「パーティーや冠婚葬祭など人を多く集める機会を作らないこと」「スポーツ施設では更衣室で着替えないこと」「不要不急の旅行は避けること」が推奨されています。



前回、保育園・小中学校を休校にしていないことを書きました が、少しでも体調がおかしいと感じた場合は、登校・出勤してはいけないという決まりは徹底しています。また、レストランでは座って食事をする人は極端に減っているため、高級レストランまでがテイクアウトを始めています。わが家もイースターには憧れのレストランのコース料理をテイクアウトしてみました。(写真あります。今回写真多すぎかな?)
例年のイースターとは過ごし方を変えなければいけなかったとはいえ、特に不便はないし、ポジティブに捉えれば「自宅で家族とのんびり」過ごせています。

批判があってもスウェーデン政府の方針は変わらない

4月11日前後に「死者増加で、スウェーデンがロックダウンを検討している」という日本語や英語の記事が出ていましたが、現地ではそのような報道は今のところありません。こんなに緩いコロナ対策を取っている国は珍しいので、「スウェーデンもいよいよロックダウンか!」という方向にマスコミがもっていきたいのかもしれませんし、実際に国内でも専門家を中心に多くの反発・批判があります。

それでも、政府関係者の口から出るのは「できるかぎり●●してください」「本当にその旅行が必要かどうか、よく考えてください」といった表現にとどまり、「●●を禁止します」「守れない場合は罰します」という言葉ではありません。

それを聞いたとき、私も最初は「そんなに緩くていいのかな?」と思いました。でもそれからじわじわと「そうか、国民は信用されてるんだ……」と感じたのです。信用されているから、自主性に任されている。最低限の自由を残してもらえている。それぞれが良識ある判断をし、正しい行動を取ると信じていてもらっているからなのだと考えるようになりました。

それはなんだか、この国の親や教育のようでもあります。子どもを信じて、自主性に任せる。考えてみると、スウェーデンの学校には細かい校則はありません。スウェーデンでは校則が〝皆で気持ちよく過ごすためのルール〟という名前になっていて、まずは学校がどういう場所であるべきかが説明され、それを実現するために各自が考えて行動しましょうというのが基本にあります。

たとえば娘の小学校の校則を読んでみると、服装に関するルールのところでは、厳しく禁止されているのは「差別的なメッセージや民主主義に反するメッセージが書かれた服は着てきてはいけません」ということだけ。化粧や髪の色や靴下の長さで他人を不愉快にすることはありませんが、差別的なメッセージは人を傷つけます。このような絶対に守らなければいけない決まり事以外は、皆が気持ちよく過ごせるよう自分の頭で考えて行動することを小学校のころから自然に学ぶようになっているのです。
そんなことから、今回のコロナの件も国が国民を信頼し、最低限のことを要請するにとどまっているのではないかと思いました。国民は国の判断を信じ、それを遵守する。つまり今回の対応は、国と国民の信頼関係の上に成り立っているものなのだろうと考えます。

懸念されていたイースター前後の休暇。結果は…

緩い一方で、政府が最低限のルールをしつこく繰り返したのも印象的でした。子どもにしても国民にしても、全員が一度言っただけでルールを守るわけではありません。親なら誰しも覚えがあると思いますが、本当に大切なことは、言わなくても自分からできるようになるまで子どもに言い続けますよね。スウェーデンの政府も同じでした。「今出ている勧告を皆で守り、国民で一丸となって乗り越えましょう」王様も首相も登場して、国民にそう訴えました。毎日の政府定例記者会見でも「しっかり手を洗いましょう」「少しでも体調が悪いと感じたら、学校や職場には絶対に行かないでください。家にいてください」「お年寄りを訪問しないでください」「イースターの旅行も、本当に必要かどうか二度でも三度でも考えてください」という基本的な要請がしつこく繰り返されました。本当に、毎日毎日言い続けたのです。

とりわけ懸念されていたのがこの〝イースターの旅行〟でした。イースターの連休前後は十日間学校が休みになり、日本の春休みのような存在です。例年なら、近場のヨーロッパや国内旅行に出かける家族も多くなる時期。今年は海外旅行はもちろん無理ですが、国内の旅行については〝不要不急の旅行は避ける〟指示をされているだけで、禁止されているわけではありません。行こうと思えば、人気のスキー場に行ったり、遠くの親せきを訪ねることができます。

しかしこのように都会から地方に人が動くというのは、医療崩壊を起こすリスクがあります。地方の県にはもともと総合病院が一軒ないし数軒しかありませんし、ICU病床数も限られています。都会から来た観光客の治療をする余裕はないかもしれないし、ましてや都会からコロナを持ってこられてそのエリアで感染が広まってしまったらとんでもないことになります。

それを危惧して、政府はもっと厳しい規制を敷くべきだという意見も多くありました。きっちり禁止した方がいい。国民がルールを守らなかったら、それこそ多数の命が奪われることになる。わたし自身もはらはらしながら進展を見守ることになりました。

そしていよいよイースターがやってきました。公衆衛生局は携帯電話会社テリアの協力を得て、人々がどのように動いたかを分析しました。その結果、イースターの期間中、旅行地へと出かけた人の数が例年より90%も減ったことがわかりました。つまり、ほとんどの国民が政府の要請を受けて、旅行を控えたのです。イメージ的には、国から出されたテストで国民が90点を取ったような感じでしょうか? 100点ではありませんでしたが、充分に国からの信頼に応えた点数だと言えるでしょう。

スウェーデンにとってのコロナ危機

各国のコロナの対応は様々です。人口密度や生活スタイル、国民性がちがうわけですから、どの国の政策が正しいかという議論は無意味だと思います。スウェーデン政府は他国の方針を批判するようなことはしていませんし、記者会見で他国の例について質問されても「各国それぞれにちがった状況があり、タイミングも違うのだから、比較するのは無駄だ」とはっきり答えています。
緊急事態には、良くも悪くもその国の底力が試されます。スウェーデンでは今回、改めて国と国民の信頼度が問い直されました。この信頼関係が崩れたとき、スウェーデンはスウェーデンでなくなってしまうのではないか、そんな風に感じました。
次回は逆に、国民がなぜ国を信頼できているのかという点についてお話したいと思います。

(文・久山葉子)

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