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ジカ熱、デング熱…。虫による「輸入感染症」増の危険大、子どもを守るには? 専門医

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子供の肌に蚊。虫刺されよけ。
FamVeld/gettyimages

2014年、東京で流行したデング熱は、本来、海外で見られる蚊による感染症です。グローバル化が進む中で、今、心配されるのが、こうした虫による輸入感染症です。日本でも注意したほうがいい虫が媒介する感染症について、神奈川県立こども医療センター・皮膚科部長の馬場直子先生に聞きました。
「実はこわい虫刺され。赤ちゃん・子どもを守るには?」連載の最終回です。

虫による輸入感染症は、今後増えていく危険性が!

日本では、2014年に東京を中心にヒトスジシマカが媒介し、デング熱が流行しました。重症型のデング熱は、1970年以前はわずか9カ国での流行でしたが、今ではアフリカ、南北アメリカ大陸、東南アジアなど100カ国以上で流行しています。
こうした状況から馬場先生は「新型コロナウイルスの流行も同様ですが、グローバル化が進み、世界中の人が各国を行き来する時代なので、今後もデング熱のように、これまで日本では見られなかった虫による輸入感染症が流行する危険性は十分あります」と言います。

また虫よけ剤のブランド「バルサン」の発売元、レック株式会社によると「近年、デング熱の主な感染源となるネッタイシマカが、成田空港周辺で見つかっています。人や荷物とともに、日本に入ってきているのでしょう」(主幹技術員 亀崎宏樹さん)とのこと。「本来、ネッタイシマカの生息地は熱帯、亜熱帯地域のため、“日本の冬は寒いから、ネッタイシマカは繁殖できない”と一般的には言えます。しかし冬でも暖かい場所を見つけて、繁殖する可能性は考えられます」(亀崎さん)と危険性を指摘します。

死亡事故にもつながるマダニは、生活圏でも見られるように

日本でも、マダニによる死亡事故が時々報じられます。「マダニは、山深い場所に生息するのでは」と考えるママやパパもいると思いますが、最近は、都市部にもいるそう。
馬場先生によると「マダニは、山奥だけではなく、茂みや河原など緑がある場所に生息します。そうした場所でペットを散歩させていると、ペットを介してマダニにかまれることはあり得える」と言います。

そのためペット用のマダニ駆除剤を使ったり、ペットを家に入れる前にブラッシングしたり、マダニ対策をしたほうが安心です。

マダニによる感染症“SFTS/重症熱性血小板減少症候群”が、日本で初めて報告されたのは2013年。前述のレックによると「それ以前にも“庭仕事をしていたらマダニを見つけた”などの声があった」(亀崎さん)とのこと。

たとえば野生のクマやタヌキ、シカなどが住宅街に現れることがありますが、そうした野生動物がマダニを運んでくるのも一因ではないかと考えられます。

予防接種で防げるのは日本脳炎のみ! 虫よけ対策は必須

こうした虫による感染症の問題点は、日本では日本脳炎以外は予防接種がないことです。
馬場先生は「グローバル化が進む時代、虫による輸入感染症は軽視できません」と言います。

蚊は、日中活動するヤブカ属(ヒトスジシマカ、ネッタイシマカなど)と夜行型のイエカ属(アカイエカ、コガタアカイエカなど)、ハマダラカ族(シナハマダラカ、ガンビエハマダラカなど)がいて、24時間刺される可能性があります。予防は日本脳炎の予防接種以外は、虫よけ対策しかないので、日ごろからの予防が肝心。とくに海外の流行地に行くときは、より注意が必要です。

日本でも見られる! 蚊による感染症

日本でも見られる蚊による感染症を紹介。ジカ熱は、日本では感染例はありませんが、妊娠中の感染はたいへん危険です。そのため流行地に行く場合は、虫よけ対策を!

●デング熱
蚊が媒介するウイルス感染症。2014年に、東京を中心に日本でも発生。そのときは、日本のほとんどの地域で見られるヒトスジシマカによって流行。海外の流行地でウイルスに感染した人が帰国後、日本国内で蚊に刺され、その蚊が違う人を刺した場合、確率は低いものの感染する可能性がある。
主な症状/刺されてから数日後に発症。急な高熱、頭痛、目の充血などが2~7日続いたあと、発疹(ほっしん)や出血斑が出る。
赤ちゃんの場合は、36度以下の低体温、食欲低下、発疹、機嫌が悪くなる、ぐったりするなどの症状が現れ、早めの受診が必要。

●日本脳炎
蚊の一種であるコガタアカイエカに刺されて、ウイルス感染し発症。日本脳炎は、予防接種(定期)で防ぐことができるため必ず接種を。
主な症状/無症状の人も多いが、発熱、頭痛などが出る人も。けいれん、意識障害を起こすなど重症化したり、重度の後遺症を残したり、死亡に至るケースもある。

●番外編 ジカ熱
ジカウイルスを持った蚊に刺されることで感染。流行地域は、バージン諸島、アルゼンチン、キューバ、サモア、トンガなど。とくに近年は、中南米で流行が見られる。日本国内の感染例はないが、日本に多いヒトスジシマカが、ウイルスを媒介する可能性はある。
主な症状/軽度の発熱、頭痛、関節痛、目の充血、発疹など。
とくに注意が必要なのは妊娠期で、妊娠中、ジカウイルスに感染すると胎児や新生児の5%に先天性異常が見られることがわかっている。男性がジカウイルスに感染した場合は、精液中にもウイルスが確認される。ジカウイルスが95%消失するのは120日が目安なので、パートナーが感染した場合も注意を!

日本でも見られる! ダニによる感染症

日本でも見られる、ダニによる感染症を紹介。これらのダニは、主に春から秋が活動期です。

●SFTS/重症熱性血小板減少症候群
2011年に中国の研究者らによって発表された、ダニ媒介による感染症。マダニにかまれて感染する。またSFTSに感染した犬やネコにかまれて感染することも。日本では、年間60~90人ぐらいが発症している。
主な症状/発熱、頭痛、下痢、嘔吐(おうと)など。致死率は約20%。

●ダニ媒介性脳炎(TBE)
ウイルスをもつマダニにかまれることで感染。また感染したヤギやヒツジなどの未殺菌の乳を飲んで感染することもある。
主な症状/頭痛、発熱、嘔吐など。重症化すると髄膜炎や脳炎を起こす。回復後も頭痛や集中力の低下などを引き起こすことも。

●日本紅斑(こうはん)熱
病原体をもったマダニにかまれることで感染。日本では増加傾向にあり、感染報告は1999年には約40例だったが、2017年には約330例に急増。とくに西日本の広い範囲で感染例が確認されている。
主な症状/発熱、発疹、頭痛、倦怠(けんたい)感など。

●つつがむし病
細菌オリエンティア・ツツガムシに感染したダニの一種ツツガムシにかまれることで感染。日本では、公園での野外活動で感染した子どもの例もある。
主な症状/38~40度ぐらいの発熱、発疹、リンパ節の腫れなど。重症化すると肺炎や脳炎を起こすこともある。

お話・監修/馬場直子先生 取材・文/麻生珠恵、ひよこクラブ編集部

蚊やダニが媒介する感染症の病名を「初めて聞いた」というママやパパは多いと思います。また虫による感染症は都市部では無縁と思うかも知れませんが、2014年に流行したデング熱は、東京の代々木公園で多くの人が感染しています。緑豊かな公園で、子どもと遊んでいるうちに感染するケースは十分、考えられるので、けしてひとごととは思わないで! 日ごろから予防意識をもつことが大切です。

馬場直子先生(ばばなおこ)
Profile
神奈川県立こども医療センター・皮膚科部長 滋賀医科大学医学部卒業後、横浜市立大学医学部附属病院皮膚科講師を経て、現職。日本皮膚科学会、日本小児皮膚科学会会員。とくに血管腫、母斑をはじめとする先天性皮膚疾患およびアトピー性皮膚炎を専門とする。

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