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幸福度世界1位の国フィンランド、キーワードは「安定、バランス、身近な自然」と「子育て」

漁師と息子
写真はイメージです
Scharfsinn86/gettyimages

国連が発表する「世界幸福度報告書(World Happiness Report)」(2020年版)で、3年連続幸福度世界一に輝いた北欧の国、フィンランド。この国の人々、こと子育て世代がどのような価値観で生活をしているのか、幸福度62位の日本に住む子育て世代にとっても興味深いところではないでしょうか。フィンランドで暮らしていた経験もある、フィンランド大使館広報の堀内都喜子さんに聞きました。

幸福感は自然とともにはぐくまれる

写真提供/Markus Kokko

――フィンランドの幸福度が高い理由として、堀内さんのまわりでは「安定」「バランス」「身近な自然」といったものが挙がったそうですが、子育て世代はどのようなことに幸せを感じていると思われますか?

堀内さん(以下敬称略) 子どもとのかかわりを大切にしながら、仕事も趣味も楽しむのが理想の形としてあり、みんながそれを貪欲(どんよく)に求めているように感じます。その中に、やはり自然というものも含まれます。フィンランドはコロナ禍における生活満足度がヨーロッパで2位となりましたが、その理由の一つとして「自由に外に出て自然と触れ合えた」ということも挙げられました。

――フィンランドでは、子どものころから自然と触れ合う機会が多いのでしょうか?

堀内 フィンランド人は夏休みをコテージで過ごす人が多く、私の上司もこの夏、お子さんと森に入ってブルーベリー摘みを楽しんできたようです(上記写真提供/Markus Kokkoさん)。スーパーにも売っているものなのに、フィンランド人はわざわざ自分で採りに行くほどベリー摘みが大好きです。「こういうことがやりたい」「こういう暮らしがしたい」と思い描いたことがある程度実現できるところが、フィンランド人の幸せにつながっているのかもしれません。

教育にお金はかからないが、こだわりがある

――日本では、子どもの将来的な教育費など、お金の心配をするママ・パパが多くいます。フィンランドの子育て世代も、お金の心配はしていますか?

堀内 子どもの成長がいちばんの心配ごとで、2番目に経済的なことが出てきます。ただフィンランドでは、特殊な病気の治療以外は医療費がかかりません。また、博士課程までの授業料も無償です。そういう意味で、「子どものためにいっぱい貯金しなきゃ」という感覚は日本の子育て世代よりも薄いかもしれません。

――授業料がかからない分、どういうことにお金を使っているんでしょう?

堀内 日本と大きく異なるのは習いごとです。フィンランドでは塾に通う習慣はありませんが、学校の部活がないので、多くの子どもが地域のスポーツクラブに入ります。そこでコーチ料や施設利用料などがかかります。フィンランドといえばアイスホッケーが盛んですが、お金は結構かかります。
あまりお金がかからないスポーツもありますが、いいコーチのいるクラブでトレーニングさせたいとか、いい道具をそろえたいとなればお金はかかります。子どもにいい機会を与えることが親の喜びにもなっていますが、最近は過熱気味で問題視されていることでもあります。送り迎えが負担になっている親もいます。

――幼児期間中の教育は熱心なほうですか?

堀内 フィンランドでは「子どもは子どもであるべき」という考え方が強く、保育園などであまり早くから教育をすることをよしとしない風潮があります。日本でインターナショナルな幼稚園や保育園に通わせているフィンランド人は、「こんなに早くからいろいろなことをやらせているのか」とみんな衝撃を受けているくらいです。ただ、そんなフィンランドでも小学校に入る一年前の就学前教育が義務化されました。ここでは先生の話を聞く練習など、学校で学ぶための準備をします。簡単な文字の勉強などはありますが宿題はなく、基本的には小学校に上がってから学び始めるという考え方です。また最近は発達障がいの子どもに対して、必要であれば早めに介入していきたいという動きもあります。

「半々ずつ」から生まれる育児中の納得感

――フィンランドは、男女平等の社会制度が進んでいるそうですが、男性も育児をするということが当たり前になっていますか?

堀内 公園でパパを見かけても「男性が育児している」と思わないほど自然にありふれた光景になっています。私があるとき公園に行ったら、パパしかいないこともありました。フィンランドの人たちは夫婦で半々ずつ分担しているという印象です。送り迎えも「朝はパパ、帰りはママ」としたり、一日交代にしたりして、ちょうど半々に調整しています。これは実は、「父親という存在をちゃんとわかってほしい」と男性側が望んでいることでもあります。だいたいどこの家でも絵本の読み聞かせをしていますが、読み聞かせするパパも増えているようです。

――男性の育児休暇の取得はどのくらい進んでいますか?

堀内 フィンランドでは1978年に親(当時は母親)の育児休暇の中で12日間、父親が取得してもいいということになりましたが、それほど急激には父親の育児休暇は増えませんでした。一気に議論が進んだのは98年に当時の首相が父親休暇を取ってからで、父親休暇の取得への理解も深まりました。現在は出産直後3週間の父親休暇を、約8割の人が取得しています。

――日本では「イクメン」という言葉も流行りましたが、男性の育休取得率は7.48%(2019年)と、まだまだです。

堀内 フィンランドでは、父親と母親が同時に休みを取れるのは出産直後の3週間のみです。その後、父親は2カ月の休みを取れますが、それは母親が職場復帰してからでないと取れません。つまり、父親は育休期間中、ガッツリ一人で子どもの面倒を見ている状態ということです。政府はこの育休を5カ月もしくは6カ月に伸ばそうとしています。少しでも男女の育休期間を平等にしようというねらいがあるためです。

――こうした父親の育児への参加を「男性側が望んでいる」という話もありましたが、フィンランドではいつごろからそのような風潮があるのでしょうか?

堀内 父親が育児に参加することの重要性や、その権利を奪うなといった話は70年代くらいからありましたが、地道な教育やネウボラ(妊婦健診・乳幼児健診時に通う場所)を通じて徐々に多くの人に浸透していったようです。ネウボラに通った私の同僚たちは「母乳をあげる以外のことは父親も母親と同じくらいにできる」と言います。現在は義務ではないものの父親も健診に同伴することが求められますし、育休のことも「両親休暇」という用語を使っています。親自身、そして社会も「子どもの世話は母親がするもの」という概念から抜け出し、「両親がするもの」というように変わってきています。

お話/堀内都喜子さん 取材・文/香川 誠、ひよこクラブ編集部

ひと言で幸福度といってもさまざまな尺度がありますが、全体としてフィンランドの人たちの幸福感は、さまざまな工夫から生まれているものが多いようです。フィンランドと日本、大きな差があるようにも思いますが、自然の豊かさなど共通することもあります。男性の育児休暇取得率などはまだ大きな差がありますが、フィンランドも最初からそうではなかったように、日本も時間をかけてこれから変わっていくことが期待されます。


堀内都喜子さん(ほりうちときこ)
Profile
長野県出身。大学卒業後、日本語教師などを経てフィンランドのユヴァスキュラ大学大学院に留学。コミュニケーションを専攻し修士号取得。帰国後は都内のフィンランド系機械メーカーに勤務する一方、ライター、通訳としても活動。2013年よりフィンランド大使館広報部でプロジェクトコーディネーターとして勤務。著書に『フィンランド 豊かさのメソッド』(集英社新書)、『フィンランド人はなぜ午後4時に仕事が終わるのか』(ポプラ新書)

フィンランド人はなぜ午後4時に仕事が終わるのか』

(堀内都喜子著・ポプラ新書)

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