藤井聡太棋士の活躍で、再注目のモンテッソーリ コロナ禍だからこそ「おうちモンテ」を【専門家】

ウィズコロナでおうちにいる時間が増えたことにより、おうちでの過ごし方に悩むママやパパが増えているようです。そこで今注目の『おうちモンテ』の基本的な考え方やコツについて、0歳からのモンテッソーリ “はじめの親子教室”代表 山下真実先生に話を聞きました。「歴史のあるモンテッソーリ教育ですが、考え方やコツはおうちでの生活にこそ取り入れてほしい」と山下先生は言います。令和の時代に合った『おうちモンテ』について解説します。
『おうちモンテ』で大切なのは、子どもの“やりたい!”を尊重して見守ること
「モンテッソーリ教育をおうちで!」と聞くと「特別な教具などが必要なのでは?」と考えるママやパパもいると思います。しかし山下先生は「特別な教具はいりません」と言います。
「おうちモンテで最も大切にしてほしいのは、モンテッソーリ教育の考え方のベースとなっている“主役は、あくまでも子ども。子どもがやっていることは見守り、危険でない限りは極力、手出しや、口出しはしない”ということです。このことを毎日の生活のなかで意識するだけで、しだいに子どもとのかかわり方が変わっていきます」(山下先生)
たとえばお着替えするとき、手こずっていたり、ボタンがなかなか留められなくても、時間が許す限りは見守りましょう。もし子どもが「手伝って!」と助けを求めてきたら、必要最小限だけ手伝ってあげる。これが、おうちモンテのキホンです。
子どものチカラがぐんぐん伸びるのが敏感期! 0~6歳は敏感期の宝庫
モンテッソーリ教育には、「敏感期」という考え方があります。
「敏感期は限られた時期に、ある特定のことに対して、強いこだわりや興味を示す時期です。同じことを何度も繰り返したりするのも敏感期のサインです。敏感期に、子どもが興味をもったことを存分にやらせてあげると、ぐんぐん覚えて吸収していきます。上達も早いです」(山下先生)
おうちモンテをするときは、次の敏感期を参考にしながらかかわってみましょう。ただしママやパパが先生役になって、教え込むのは逆効果です。
【言語の敏感期 妊娠7カ月ごろ~6歳】
話し言葉の敏感期は、ママのおなかにいて聴覚が発達する妊娠7カ月ごろから始まり、3歳ごろまで続きます。3歳半~6歳ごろは、だんだんと文字に興味が移るので、読み書きを覚えるのに適しています。
【運動の敏感期 0~6歳】
0~3歳は、寝返りやはいはい、立っち、あんよ、階段をのぼるなど発育・発達に沿って身体を大きく使った運動をどんどんさせて! 3~6歳は、バランス感覚を養ったり、頭と体を使ったりする運動に興味を示す時期。また、指先を使うような小さな動きも1歳ごろから楽しくなり、徐々にこまかい動きへと向かいます。
【秩序の敏感期 6カ月~3歳】
順序、場所、やり方、ものなどにこだわりが見られます。こうしたこだわりがイヤイヤの原因にもなりますが、子どもの様子をよく見て、こだわりを理解してあげるとイヤイヤの軽減にもつながります。
【感覚の敏感期 0~6歳】
五感を刺激することで、感覚を豊かにしたい時期なので、見る、触る、聞く、なめるなど、いろんな体験をさせてあげて。0~3歳で経験したことが、3~6歳で情報として頭の中で整理・分類され、知識や思考力につながります。
【小さなものへの敏感期 1~3歳】
ママやパパが気づかないような小さな変化や、床に落ちているほこりや虫のありに興味を示すなど、小さなこと・ものに関心が高まります。違いに気づき、認識するチカラが伸びる時期です。
【礼儀の敏感期 2歳半~6歳】
お友だちとのやりとりに興味をもち、社会性が身についていく時期です。人の迷惑になることはしないなど、社会のルールにも関心が高まります。
【数の敏感期 4~5歳】
数の概念や多い・少ないなどの量の違いなどに強い興味を発揮。近年はデジタルコンテンツなどの影響もあり、4歳より早く数に興味をもつ子も多いようです。
モンテッソーリの目的の1つは、子どもの自立! お手伝いで自立を促そう
モンテッソーリ教育というと、特別なプログラムをイメージするママやパパもいるかも知れませんが、おうちモンテではどんなことをするといいのでしょうか。
「モンテッソーリ教育の目的の1つは子どもの自立です。そのためおうちモンテで、おすすめなのが“お手伝い”です。初めてチャレンジするときやうまくいかないときは、ママやパパがお手本を見せてあげてください。ただし“違うよ!”“ダメ!”などの注意や、口出し・手出しはぐっと堪えて。子どもに任せる姿勢が大切です」(山下先生)
子どもの年齢別、おすすめのお手伝いの内容について
お手伝いは、1歳ごろからできますが最初は簡単なものからスタートを! 食事に関するお手伝いなら、次のようなことができます。
●1歳/レタスなどをちぎる、野菜を洗うなど
●2歳/テーブルをふく、しめじを裂く、ミニトマトのへたを取るなど
●3歳/ふきんをたたむ・しまう、卵を割る・混ぜる、ピッチャーなどから水をコップに注ぐ、トングなどで取り分けるなど
●4~5歳/個人差はありますが、これまでの経験を通していろいろなお手伝いができます。「お皿4枚出して」「コップ3つ取って」など数の概念を理解しながら、お手伝いができるようにもなります。
0歳の『おうちモンテ』は、発育・発達を妨げないかかわり方がカギ
お手伝いがまだできない0歳だと、おうちモンテではどんなことを心がけたらいいでしょうか。
「0歳は寝返り、はいはい、つかまり立ち、立っち、おもちゃをなめるなど、赤ちゃんの発育・発達を妨げないかかわり方が大切。おうちでもスペースをなるべくとって、はいはいやつかまり立ちなどは赤ちゃんがやりたいだけ十分にさせてあげましょう。
9カ月ごろになると、ティッシュを連続で引き出す子もいますが、これは子どもにとっては手指をコントロールしながらつかんで引っ張るという動きの獲得とティッシュというモノへの興味・関心の追求です。困ったときは、ウエットティッシュの空き容器にフェルトをティッシュのように折りたたんで入れて代用しましょう。興味・関心の芽は、できるだけ伸ばしてあげたいですね」(山下先生)
また言葉かけ1つでも、おうちモンテはできるそうです。
「おむつ替えの場所やバスルームなどに連れて行くときは、赤ちゃんが進行方向を向くように抱っこして連れて行きます。“おむつを替えるよ”“今からおふろに入るよ”と声をかけることで、しだいに見通しがつくようになります。見通しをつけるためには、おむつはいつも同じ場所で替えることも大切です。
子ども自ら足や腕を上げておむつ替えや着替えに協力してくれたときは“ありがとう! ママ助かったわ”と伝えると、赤ちゃんもうれしくなって協力する意欲がわいてきます」(山下先生)
お話・監修/山下真実先生 取材・文/麻生珠恵、ひよこクラブ編集部
おうちモンテは、週に何回・1日何分など決めずに、生活のなかに自然に取り入れるのがポイントです。手出し・口出しを控えて、子どもを見守ることも大切です。ママやパパが見守ることができる余裕がないならば、時間があるときだけ、休日だけとかでも大丈夫です。
山下真実先生(やました まみ)
Profile
はじめの親子教室代表、株式会社ここるく代表取締役。ママたちから日々寄せられる「子どもとどう接したらいいの?」という声に応えるため、0歳からのモンテッソーリ教育『はじめの親子教室』を2019年恵比寿にオープン。100人100通りの発達・お悩みに、ロジカルなのに愛ある答えを導きだすことに定評がある。2児のママ。
はじめの親子教室HP:https://hajimenooyako.com/
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