新型コロナと一緒にかかる可能性も、今シーズンのインフル流行予測、予防接種は?【専門家】
新型コロナウイルスの影響で、今シーズンのインフルエンザ流行予測に注目が集まっています。昨シーズンは、新型コロナウイルスの予防を徹底したため、2020年2月以降、インフルエンザの流行は抑えられました。今シーズンは、どうなるのでしょうか。インフルエンザに詳しい、新潟大学大学院 医歯学総合研究科 国際保健学分野教授 齋藤玲子先生に9月28日の時点でわかっている、インフルエンザ情報について話を聞きました。
今シーズンは、インフル流行減の予測! ただし人の移動によって大きく左右されます
インフルエンザの原因となるインフルエンザウイルスは、A型、B型、C型に大きく分類されます。このうち大きな流行の原因となるのはA型とB型です。
とくにA型のインフルエンザは、その原因となるインフルエンザウイルスの抗原性が少しずつ変化しながら、毎年、世界中で流行しています。今シーズンのインフルエンザの流行はどうなるのでしょうか。
「インフルエンザは人の移動によって流行が広がります。新型コロナウイルスで、新しい生活様式が取り入れられていますが、今後、人の移動が大きく変化しない限りは、今シーズンはインフルエンザの流行は抑えられると考えられます。
というのも、昨シーズンのインフルエンザの流行は、新型コロナウイルス感染症が流行した2月から減少傾向に転じて、大きな流行が見られませんでした。
理由としては、手指衛生やマスク着用のほかに、3密回避や3月2日からの一斉休校、外出自粛など、人の流れが抑制されたことが考えられます」(齋藤先生)
齋藤先生は、海外でも同様のことが起きていると言います。
「フィンランドでは、ロックダウン後にインフルエンザの感染者数が減少しました。
また南半球に位置して、日本の夏がインフルエンザの流行期に当たるオーストラリアでも、ロックダウンなどの影響で今シーズンはインフルエンザの流行が見られませんでした。
ただし人の移動が盛んになると、インフルエンザの流行は広がります。
日本小児科学会のHPでも発表されていますが、2020年2月、北海道富良野で新型コロナウイルス感染症とインフルエンザA型の同時感染が起きました。小児の場合は、新型コロナウイルス感染症よりも、インフルエンザのほうが重症化しやすく、怖いので予防接種は早めに受けておいたほうがいいです」(齋藤先生)
2019年夏、国内で季節外のインフルエンザが流行ったのは、アジア圏からの感染が発端
2019年は、沖縄を中心に国内で夏にインフルエンザが流行しました。
沖縄県内の2019年8月26日~9月1日のインフルエンザの平均患者報告数は20.31人で、全国平均(0.39人)に比べて突出。沖縄から全国に感染が広がったと考えられています。
季節外れのインフルエンザだったため、予防接種の効果もなく、地域によっては学級閉鎖が相次いだりしました。
ママたちからも次のような声が聞かれます。
●昨年の9月、連休中に下の子が急に発熱! 休日診療でインフルエンザと診断されました。学校も学級閉鎖で「夏なのにインフルエンザが流行しているの?」と驚きました。
●昨年の9月は「まさかこの時期に!?」と思ったのですが、パパがインフルエンザになり、次々と子どもたちに感染。夏なので予想外でした。
「2019年夏のインフルエンザは、実はアジア圏から流行が始まっています。流行したのは、A/H1N1pdm09という株ですが、よく似た株が中国、台湾、ミャンマーなどのアジア圏で流行していたので、アジア圏から沖縄へ。そして沖縄から全国にインフルエンザの流行が広がったと考えられます。
2019年8月の1カ月間で、那覇空港発着便を利用したのは80万人。東京・那覇間が最も多く40万人でした。
このように人の移動に伴い、インフルエンザは流行します。今は、海外渡航者の受け入れ制限などをしており、人の移動が制限されていますが、再び国内の移動が盛んになったり、海外からの渡航客が増加したりすると、インフルエンザは流行します」(齋藤先生)
マスギャザリングが起きるとインフルエンザ大流行の可能性が! 東京オリンピックには要注意
マスギャザリングが起きると、インフルエンザは大流行する可能性があります。マスギャザリングとは「一定期間、限定された地域において、同一目的で集合した多人数の集団」のこと。
「2008年7月、オーストラリアで大規模なキリスト教の世界大会があり、シドニーに世界各国から22万人が集まり、インフルエンザの大流行が起きました。オーストラリアは、日本の夏がインフルエンザの流行期なので、より感染が広がったと思われます。
このようにマスギャザリングが起きると、インフルエンザは大流行を起こす危険性があります。
2021年に開催される東京オリンピックでは、まさにマスギャザリングが起きます。昨年、夏のインフルエンザの流行については前述のとおりですが、海外からウイルスがひとたび持ち込まれると、季節外でもインフルエンザは大流行するので注意が必要です」(齋藤先生)
また、これまでと抗原性が大きく異なる新型インフルエンザウイルスが現れると、多くの人が免疫を獲得していないために、全国的に急速にまん延する危険性もあります。新型インフルエンザがひとたび発生すると、新型コロナウイルス同様に、生命や医療体制、経済全体などに大きな影響を与えかねません。
新型コロナウイルスの流行もあるため、これからも専門家が発信する感染症情報から、目を離さないことが大切です。
お話・監修/齋藤玲子先生 取材・文/麻生珠恵、ひよこクラブ編集部
今シーズンは、インフルエンザが流行しないかもしれないと言われると、「予防接種は不要では?」と考えるママやパパもいるかも知れません。しかし齋藤先生は「インフルエンザの症状は、新型コロナと見分けがつきにくく妊婦さんや乳幼児は、インフルエンザにかかると重症化しやすいので、必ず予防接種を受けてください。」と言います。インフルエンザの抗体ができるまでには約1カ月かかります。そのため早めに予防接種を受けましょう。
齋藤玲子先生(さいとう れいこ)
Profile
新潟大学大学院医歯学総合研究科 国際保健学分野教授。医学博士。新潟大学医学部卒業後、同大学公衆衛生学教室に入局。国際協力機構(JICA)のザンビア国感染症コントロールプロジェクトをはじめ、世界保健機関(WHO)西太平洋事務局の短期専門家としてマニラやハノイなどに派遣される。専門はウイルス学。公衆衛生学。
※文中のコメントは口コミサイト「ウィメンズパーク」の投稿からの抜粋です。