10~20人に1人と言われている幼児の吃音の割合、治療の判断はいつ?【専門家】

吃音とは、言葉が詰まったりして、すらすらとなめらかに出ないこと。幼児の吃音の割合は10~20人に1人と言われていて、意外と多いです。言語聴覚士で「ことばの相談室ことり」代表を務める、寺田奈々先生が、子どもの吃音に関するお悩みに答えます。
幼児の吃音の診療ガイドライン作成中! 5歳ごろまでには治療の判断を
幼児の吃音は、3語分を話し始める3~4歳ごろに始まる子が多く見られます。
主な原因は
1.体質的・遺伝的要因
2.発達的要因
で、育て方やストレスなどは要因ではありません。
また7~8割の子は、発達に伴って自然に消えると言われています。しかし2~3割の子は、大人になっても残ることが。
「幼児の吃音は、これまで医療や福祉のなかで注目度が低い分野でしたが、国立障害者リハビリテーションセンターでは、2020年末をメドに幼児期を対象にした“吃音に関する診療ガイドライン”を作成。5歳ごろまでに治療の判断をする必要があるとしています。
幼児の吃音は、専門家が少ないのが現状ですが、気になるときは経過観察を長引かせないことが大切です」(寺田先生)
寺田先生がアドバイス! 気になる吃音どうしたらいい?
ママから寄せられた吃音の悩みに、寺田先生が答えます。
Q 【ママの気がかり】吃音は本人が気づくと悪化するってホント?
「吃音は本人が気づくと、さらに悪化する」と聞いたことがあります。そのためトレーニングを受けることをためらってしまいます。(4歳の子のママ)
A 【寺田先生アドバイス】自覚しても、すぐには悪化しません
吃音の自覚時期には個人差があります。ある調査では、子ども自身が吃音を自覚するのは、小学校入学以降が最も多いという結果も。
ただし吃音を自覚したからといって、症状がすぐに悪化することはありません。
子どもは、自分の吃音にいつかは気づきます。大切なのは気づかせないようにすることではなく、やがて来る気づきの時期に向けて、準備を整えることだと思います。
Q 【ママの気がかり】「あのね、あのね、あのね」の繰り返しは吃音の特徴?
話すときに「あのね、あのね、あのね」と繰り返します。これが吃音の連発でしょうか。(3歳の女の子のママ)
A 【寺田先生アドバイス】吃音の連発とは異なりますが、3歳児健診などで専門家に相談を
吃音には、上段の表のように「連発(繰り返し)」「伸発(ひきのばし)」「難発(ブロック)の3つの特徴があります。
連発とは「あああのね」のように頭の音を繰り返すのが特徴です。体験談のお子さんの場合は、頭の音の繰り返しではありませんが、ママやパパの自己判断で「連発でない」と決めるのは避けましょう。
3歳児健診もしくは、最寄りの保健所や発達支援センター、ことばの教室などに相談してみてください。
Q 【ママの気がかり】手をたたいてタイミングをとって、話し出すのは吃音ですか?
息子はおしゃべりが早く、言葉の発達は順調でした。しかし3歳ぐらいから、急に話すときにつっかかりが出るように。「………〇〇ちょうだい」など最初の言葉が詰まり、言葉が出るまで自分で手をたたいてタイミングをとっています。これは吃音でしょうか? かかりつけの小児科で診てもらったほうがいいですか?(3歳の男の子のママ)
A 【寺田先生アドバイス】吃音は言葉だけでなく、動作をつけて話すことも特徴です
吃音というと言葉のつっかかりなど、言葉にばかり目が行きがちですが、手をたたく、足踏みをするなど動作をつけたり、顔をしかめて話したりするのも吃音の特徴の一つです。
そのため一度、専門家に相談してください。
Q 【ママの気がかり】家にいるときだけ吃音が出ます。相談に行くときはどうしたらいい?
3歳ごろから吃音が出始めたのですが、しばらくは吃音が気になりませんでした。しかし最近、ひどくなってしまって、もがいてやっと言葉が出るときもあります。でも吃音が見られるのは家だけで、幼稚園の先生に聞くと「気にならない」と言われます。家だけで吃音が出る場合、相談に行くときはどうしたらいいですか?(4歳の女の子のママ)
A 【寺田先生アドバイス】出ているときや、なめらかに話している様子を動画に撮って持参を
家で吃音が出るけれど、幼稚園などでは吃音が出ない子はよくいます。
保健所や発達支援センター、ことばの教室などで相談するときは、吃音が出ている様子と吃音が出ずになめらかに話している様子を動画に撮って見せるといいでしょう。
また相談に行くときは、次のものを持参してください。
【必ず持参したほうがいいもの】
1.母子健康手帳
2.これまでに取っていれば発達検査、知能検査、聴力検査の結果、発達に関する診断書
【用意しておくといいもの】
1.吃音が出始めた時期やつっかかりやすい言葉、うまく言えない言葉などをまとめたメモ書き
2.幼稚園や保育園での様子・気になること(先生からの情報)
相談するときは、手がかりが多いほどより具体的なアドバイスが得られます。
取材・文/麻生珠恵、ひよこクラブ編集部
寺田先生は「吃音が起こった7割のお子さんは自然に消えることがわかってたり、遺伝や発達との関係なども指摘されていたりしますが、原因はまだよくわかっていません」と言います。
心配なことがあれば、早めに専門家に相談し、一歩ずつできることをしてあげましょう。
※文中のコメントは口コミサイト「ウィメンズパーク」の投稿からの抜粋です