「チャイルドシート」法制化から20年たつも、着用率はいまだ1~4歳で72.4%の低さ、普及に尽力中の医師に詳しく聞く
6歳になるまで着用が義務づけられている「チャイルドシート」。法制化から20年たった今でも、着用率は1歳未満で88%。子どもの年齢が上がるにつれて、着用率は低くなり5歳代ではなんと48%に!「大人はほとんどの人がシートベルトで命を守っているのに、子どもにチャイルドシートを使わないのはおかしい」と言う小児科医 山中龍宏先生に、日本のチャイルドシートの実情について話を聞きました。山中先生は、1995年から日本でチャイルドシートの普及活動を続けています。
チャイルドシートが義務化されて20年がたつも、使用率は1~4歳で72.4%
日本でチャイルドシートが義務化されたのは2000年4月1日です。チャイルドシートの義務化から20年がたちましたが使用率は1歳未満で88%、1~4歳で72.4%、5歳代では48%(2019年 JAF調べ)です。
「シートベルトやチャイルドシートの先進国はスウェーデンです。スウェーデンの自動車メーカー・ボルボは、1972年には後ろ向きチャイルドシートの販売を始めています。
一方、日本は1995年ごろからチャイルドシートの法制化を求める活動が始まりましたが、当時のチャイルドシートの使用率はわずか8%ぐらい。そのころと比べれば法制化から20年たった現在、随分チャイルドシートの使用率は上がったと言えますが、諸外国と比べると、けっして高い使用率ではありません。
予防接種も日本は、諸外国と比べると遅れているとずっと言われてきましたが、チャイルドシートも同様です。
車のシートベルトの使用率は、日本は99.9%なのに…。ママやパパには、子どもの命を守ることを真剣に考えてほしいものです」(山中先生)
オーストラリアには“30分泣かせますか? それとも命落としますか?”という標語も
ママやパパからは「チャイルドシートはあるけれど、座ると子どもが大泣きするから途中でおろしてしまう」などの声も聞かれます。しかし海外の事情は違うようです。
「オーストラリアでは“30分泣かせますか? それとも命落としますか?”という標語があります。
アメリカでは、産院から退院するときにチャイルドシートを設置していないと退院の許可が下りなかったり、チャイルドシートに子どもを座らせていないのは虐待として、通報されることもあります。カリフォルニア州では、チャイルドシートの使用率は98%ぐらいですが、チャイルドシートを使用しない場合は罰金刑があります。
日本の場合は減点にはなるものの、罰則や罰金がないというのも、チャイルドシートの使用が徹底されない理由の1つだと思います」(山中先生)
また日本のチャイルドシート着用率の低さは、子どもの交通事故死のデータにもつながっています。
「2018年の日本の子どもの交通事故死は、0歳:3人、1~4歳:32人、5~9歳:31人、10~14歳:29人でした。
しかし2019年、ノルウェーの子ども(16歳未満)の交通事故死は0を達成! 素晴らしいことだと思います」(山中先生)
チャイルドシートは取り付けの難しさも問題! 困ったときはJAFの講習会へ
山中先生は、チャイルドシートは装着の難しさにも問題点があると言います。JAF調べでは、次のような結果も。
【乳児の取り付け状況】
取り付け不良あり 43.3%
1位 腰ベルトの締め付け不足 72.3%
2位 座席ベルトの通し方 12.5%
3位 サポートレッグの調節不良 4.5%
4位 車両座面形状との不適合 3.6%
【幼児の取り付け状況】
取り付け不良あり 60.9%
1位 腰ベルトの締め付け不足 69.7%
2位 座席ベルトの通し方 10.7%
3位 サポートレッグの調節不良 5.6%
4位 固定金具などの不備・誤使用 5.1%
5位 車両座面形状との不適合 2.2%
「チャイルドシートを取り付けて、揺らしたときにグラグラ揺れたりするのは問題です。子どもがベルトから抜け出す場合は、肩ベルトの通し穴を下にしてください。うまく取り付けられないときは、JAFの講習会などに参加するといいでしょう。
また助手席にチャイルドシートを取り付けると、万一、事故に遭ったとき、子どもがエアバッグの衝撃などで大けがをすることがあるので、チャイルドシートは助手席には取り付けないことが基本です。どうしても助手席しか取り付ける場所がないときは、エアバッグをOFFにするか、助手席をめいっぱい後ろに引いてエアバッグとの距離を十分とるようにしましょう」(山中先生)
お話・監修/山中龍宏先生 取材・文/麻生珠恵、ひよこクラブ編集部
毎日の買い物や保育園の送迎など、車での外出は不可欠というおうちも多いと思います。警察庁では、チャイルドシートを使用せず事故に遭った場合は、子どもの致死率は11.1倍になると注意を呼びかけています。尊い子どもの命を守るためにも、あらためてチャイルドシート使用の大切さを考えてみてください。
山中龍宏先生(やまなかたつひろ)
Profile
小児科医、医学博士。緑園こどもクリニック院長。1985年、プールの排水口に吸い込まれた中学2年生女児をみとったことから、子どもの事故予防に取り組む。NPO法人 Safe Kids Japan理事長、内閣府教育・保育施設等における重大事故防止策を考える有識者会議委員などを務める。