「夫婦」の在り方が問われた2020年、コミュニケーションを密にして強いチームを作るポイント3【専門家】
新型コロナの影響で家庭で過ごす時間が増え、夫婦の関係性を考え直した人は少なくないでしょう。子どもをともに育てるパートナーとして、夫婦がうまくいく秘訣(ひけつ)は会話にこそあるそうです。そのポイントを心理カウンセラーの五百田達成さんに聞きました。
夫婦の会話が変われば、夫婦仲は変わる
新型コロナで在宅ワークが拡大し、夫婦が一緒に過ごす時間が増えたことで、「コロナ離婚」という言葉が広まる反面、より仲よくなったという夫婦もいます。いずれにしても、夫婦がお互いの存在を認識し直すきっかけとなりました。
「これまで家族や子どもを大事に、という価値観はあったけれど、夫婦関係の大切さって見過ごされていた気がします。社会インフラのひとつとして当然のようにあった夫婦関係こそ大事だいうことに気づいた年、という意味では2020年は夫婦元年といえるでしょう」(五百田さん)
夫をディスるようなサイトも話題になったり、在宅ワークでの家事・育児負担の不公平さから、妻が不満を抱えるという声も聞かれました。
「ずっと一緒にいるパートナーと、気が合わない、ギスギスしているという状況はしんどいですよね。
実は、夫婦関係は、コミュニケーションのテクニックだけでかなり改善するんです。もし今、夫婦仲がうまくいっていない、相手に不満があるという人には、ぜひ夫婦の会話を変えてみることを試してほしいです」(五百田さん)
出産・子育て期は、家族の緊急非常事態
夫婦の会話が大事とはいえ、赤ちゃんを育てる時期の夫婦は体力的にも精神的にも相手をケアするだけの余裕がなくなってしまうようにも感じます。
「女性は妊娠・出産を経て体も生活もめまぐるしく変化し、ホルモンの関係でついイライラしてしまうこともあることでしょう。
一方夫は、子育てにかかわりたくても、自身が育休取得や短時間勤務などをすると、それによる収入減や昇進が遅れるなど、経済的にプレッシャーを感じていることもあるかもしれません。
出産・子育て期は、家族の緊急非常事態です。お互いに気をつけてほしいのは、この時期に入ってしまった夫婦間のヒビは、長く修復されにくいということ。
逆に、大変な時期だからこそコミュニケーションを密にして強いチームを築ければ、仕事や経済的なことはあとからなんとかなります。夫婦仲は健康と同じ。きちんとメンテナンスして夫婦仲がうまくいけば、きっと人生もうまくいきます」(五百田さん)
夫婦仲がうまくいくコミュニケーションのポイント3
では、具体的にどんなコミュニケーションにすればいいのか、良好な夫婦関係のためのポイントを紹介します。
【1】夫婦でルール・マナーを相談し、アップデート
大人同士が同じ家で生活して子育てする以上、家事・育児は両方が責任を持ち、協力しあうべき。そのルールやマナーは夫婦によって異なるので、お互いが気分よく過ごせる落としどころを話し合っておくといいそうです。
「たとえば、夫は帰宅したらソファに服を脱いでおき、寝る前に片づけるタイプ。妻は、脱いだらすぐに片づけたいタイプだとしたら、『夕食後に片づけよう』というルールを2人で相談して決めてみる、というふうに。
そして一度ルールを決めても、どちらかがイラッと感じたら、さらに話し合ってアップデートさせましょう。
家庭が『子ども生み育てカンパニー』ととらえると、夫婦は共同経営者で、子どもは大事なプロダクトです。共同CEOは、資金は出すがプロダクトのことはよくわからないから…と無関心で人任せにする、外部取締役ではいけません。名もなき家事から、経営方針まで、お互いにかかわり合って責任を持ち合いましょう」(五百田さん)
【2】小さなことでも迷いや悩みを共有
日々の献立、子どもの将来のこと、自分の仕事の困りごと…どんな小さなことも、迷いや悩みを夫婦で共有することが、関係をよくするコツだと五百田さんは言います。
「身体的な構造として妊娠・出産ができない男性は、女性の気持ちを心底共感できるかというと、難しい部分があるのも事実。だからこそ、相手の大変さを共有することが大事です。
『おれはおっぱいが出ないから授乳のつらさはわからない』と人ごとにしてしまったり、『腰痛や肩こりがつらいならマッサージに行けばいいじゃん』などと、一方的にアドバイスをするのはNG。相手の気持ちを受け止めて、大変さをなんとかするための方法を一緒に考えよう、というスタンスでいましょう。
また、仕事の状況や困りごとなどをお互いに話し合っておくのもおすすめ。パートナーが知らない相手と飲み会に行くのは不満に思っても、『このプロジェクトでお世話になった○○さんと飲みに行くよ』と言われれば納得できますよね。
余裕がない時期だからこそ困りごとを共有できれば、最強の味方同士になれますよ」(五百田さん)
【3】夫婦ファーストの姿勢を貫く
夫婦がうまくいくための大原則は「夫婦ファースト」だ、と五百田さんは言います。
「両親とのつき合いも大事ですが、それよりもパートナーとの関係を常に第一に考えましょう。
『子ども生み育てカンパニー』は、実家という親会社から独立した子会社を経営しているようなもの。
まず、お金を出す親会社は、子会社の経営方針に口も出しますから、金銭的な支援はなるべく求めず、独立採算制でやるのがいいと思います。
また、パートナーの両親に言いにくいことを伝えたい場合は、担当営業としてパートナーから話してもらうほうがいいこともあります」(五百田さん)
子育て中の夫婦は、どうしてもばあばやじいじの助けが必要なことも。夫婦の価値観を大事にしつつ、子育てを助けてもらうには、ある程度の割り切りが必要なのだそうです。
「両親に応援を頼むときには、まずは敬意を払うことが大事ですし、頼んだからには文句を言うのはよくありません。
たとえば、預けているあいだに、子どもに甘いお菓子を食べさせてしまった、ということも、ある程度はしかたがないと割り切る気持ちも必要です。
かわいい孫でも、面倒を見るのはそれなりに大変。なるべく短時間で区切る、お菓子などを渡す、頻繁にお願いするなら金銭でのお礼をするなど、親に感謝やねぎらいの気持ちを伝えることも、おつき合いのマナーですね」(五百田さん)
お話・監修/五百田達成さん 取材・文/早川奈緒子、ひよこクラブ編集部
子どもに手がかかる時期は、どうしても夫婦のことは後回しにしてしまいがち。けれど良好な夫婦関係を築くことこそが、明るく楽しい家庭にし、子どもものびのびと育つ基盤になるのでしょう。年始めの今こそ、夫婦関係を見直すチャンスかもしれません。
五百田達成さん(いおたたつなり)
Profile
作家・心理カウンセラー。米国CCE .Inc.認定GCDFキャリアカウンセラー。東京大学教養学部卒業後、角川書店、博報堂、博報堂生活総合研究所を経て、独立。コミュニケーションをテーマに執筆・講演を行う。35万部を超える「察しない男 説明しない女」シリーズほか著書多数。最新の著書に『不機嫌な妻 無関心な夫 うまくいっている夫婦の話し方』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)がある。
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