タイミング法、人工授精、体外受精…。不妊治療、夫婦で理解すべき次に進む目安

本格的な不妊治療は、不妊治療クリニックでの検査が終わったところからスタートします。
不妊の原因によって、治療の進め方はケース・バイ・ケース。原因によってはすぐに体外受精に進むこともあります。
齊藤英和先生に詳しく解説していただきました。
「どんな治療があるの?2人で始めよう!不妊治療を考えたら最初にすることALLガイド」 #6
※参考:「妊活たまごクラブ 2020-2021年版」
Step1. 不妊検査を受ける(平均検査期間: 1~3ヶ月)
不妊症を疑ったら、まず病院の不妊外来で不妊検査を受けましょう。
原因は男性、女性のどちらにもあるケースが考えられるので、彼と一緒に受けてください。
Step2. 原因の治療を行う
治療の進め方はケース・バイ・ケースです。不妊検査で原因が見つかったら治療に入ります。
複数の原因が重なっていることも多く、一人一人年齢や体質が異なるため、治療の進め方はカップルごとに異なります。
Step3. タイミング法を行う(平均治療期間: 3~6ヶ月)
★妊娠しやすいタイミングを指導される方法
タイミング法は排卵日を予測し、医師から指示されたタイミングにセックスを行うことで、自然妊娠の確率を高める方法です。治療の前段階でもある不妊検査と並行して、タイミング法を行うケースも多くあります。
検査は、基本的に排卵日を予測したり、排卵の有無を確認したりするのみ。状況に応じて、黄体ホルモンを補充したり、排卵誘発剤を用いることも。
排卵誘発剤には質のよい卵子を育て、排卵を促す効果があります。
【1】検査で排卵日を予測する
排卵は卵胞が直径20mm前後に成長したころに起こるため、女性が超音波検査を数回受け、卵胞の大きさを基に医師が排卵日を特定。
セックスのタイミングが指導されます。
【2】排卵の有無を確認する
セックス後に超音波検査によって排卵の有無を調べます。
また、子宮内を着床しやすい状態にする黄体ホルモンの分泌状態を調べ、たりない場合は補充します。
【3】検査で妊娠判定を行う
月経予定日を過ぎたら、尿検査や内診、超音波検査などを行い、妊娠が成立したかどうかをチェックします。
※治療の進め方はケース・バイ・ケースです。カップルごとに異なります。
Step4. 人工授精を行う(平均検査期間: 3~6ヶ月)
★精子を子宮に注入して受精の確立を高める方法
人工授精は、採取した精子を専用の注射器を使って子宮の奥へ注入し、受精の確率を高める方法。この方法を行うのは、男性側に精子が少ない乏精子症(ぼうせいししょう)や精子の運動性が低い精子無力症、女性側に精子の侵入を妨げる頸管粘液不全などのトラブルがあり、精子が子宮内をスムーズに進むことができない場合です。
なお、精子をより多く送り込んで受精の確率を高めるために、人工授精の当日や翌日にセックスを行うこともあります。
【1】排卵日に、採取した精子を子宮に注入する
検査を行って排卵日を予測したら、その日にカップルで来院します。
病院で精液を採取して処置をしたあとに、精子を専用の注射器で子宮に注入します。
【2】排卵の有無と黄体ホルモンの分泌量を確認する
予測した排卵日のあとに超音波検査を行います。排卵が正常に起こったか、子宮内を受精しやすい状態に整える黄体ホルモンが正常に分泌されているかをチェックします。
【3】検査で妊娠判定を行う
月経の予定日を過ぎたら、妊娠が成立したかどうか、超音波検査や尿検査、内診などで判定を行います。
※治療の進め方はケース・バイ・ケースです。カップルごとに異なります。
Step5. 体外受精/顕微授精を行う(平均検査期間: 6~24ヶ月)

★精子と卵子を体外で受精させ、子宮に移植する方法
体外受精や顕微授精は、精子と卵子を採取して体の外で受精し培養したあと、細胞分裂した胚を子宮に移植する方法です。受精を医師の手で行うため、男性の精子無力症や女性の卵管障害に、とくに有効な治療法といわれています。
体外受精と顕微授精の違いは受精の方法のみ。そのほかの過程は両者とも同じです。
【1】排卵誘発を行う
質のよい卵子を育てるために、排卵誘発剤を用いるのが一般的です。
状況に応じて、体への負担が軽い、低刺激のタイプを用いる場合も。
【2】採卵・採精を行う
卵子が育ったら、卵巣から卵子を採取する採卵を行います。
採卵後、精液を採取する採精を行い、その中から運動性の高い精子を選択。
【3】受精(媒精)を行う
体外受精の場合は卵子に精子を振りかける媒精を行い、顕微授精の場合は精子を卵子の細胞質の中に注入して、それぞれ受精させます。
【4】胚を培養する
受精が起こると細胞分裂が始まります。2~6日かけて、4~8分割胚、または胚盤胞と呼ばれる状態になるまで、培養器の中で培養します。
★使わなかった受精卵を凍結することもあります
体外受精では受精後、質のよい胚が複数個育つケースが多く見られます。
1回の移植に使うのはたいてい1個のみなので、残りの良質の胚は凍結保存し、再度移植する場合に解凍して使います。
採卵周期に全ての胚を凍結し、あとの月経周期に凍結融解胚移植することもあります。
【5】胚を移植する
4~8分割胚になったら、良質の胚を選び子宮内に移植します。
状況に応じて、約5日で胚盤胞と呼ばれる状態になってから移植する場合も。
【6】検査で妊娠判定を行う
胚を移植してから2週間が過ぎたら、妊娠が成立したかを判定します。判定は時期に応じて血液検査や超音波検査などで行います。
※治療の進め方はケース・バイ・ケースです。カップルごとに異なります。
不妊の原因がわかれば治療するのは、ほかの病気のプロセスと同じ
カップルで不妊検査を受け終わったら、いよいよ治療が始まります。進め方は、不妊の原因や治療を受ける人の年齢、体質などにより異なるため一様ではありませんが、ごく一般的な流れは次のようになります。
不妊検査でトラブルが見つかった場合は、そのトラブルを解消するための治療から始めます。排卵誘発剤、黄体ホルモン剤など、投薬中心方法が一つです。また、子宮筋腫を取り除くなど、外科手術を行うこともあります。
原因の治療後や治療と並行して、または検査で原因が不明だったときにまず行うのがタイミング法です。タイミング法は、検査で卵胞の状態を観察することによって排卵日を予測し、医師が指示したタイミングでセックスを行う方法。タイミング法を試みる回数は女性の年齢によって異なります。
35歳未満なら6回、35~38歳なら3~6回、39歳以上なら3回ぐらい試し、妊娠しない場合は次の治療方法に移ります。
より高度な治療に進むとき、自分たちの意志も再確認して
タイミング法で妊娠しない場合、次の方法は人工授精です。
精子を採取して、子宮の奥に注入する人工授精は、精子が卵管にたどり着くのを助けます。こうすることで受精しやすくします。
人工授精でもなかなか妊娠が成立しない場合は、体の外で受精させてから子宮に戻す、体外受精や顕微授精に進みます。
体外受精は卵子に精子を振りかけて自然に受精するのを待ちますが、精子の受精能力が弱い場合は、卵子に精子を直接注入する顕微授精を選択します。
ここまでが治療の一般的な流れですが、原因がはっきりわかれば、すぐに人工授精や体外受精、顕微授精から治療を始めるケースもあります。
いずれにしても、新たな治療段階に移るときには、医師やパートナーと、今後どうしたいのかよく相談し、自分たち自身が納得できる方法を選ぶことが大切です。
【監修】齊藤英和先生

産婦人科医師。栄賢会 梅ヶ丘産婦人科 ARTセンター長。国立成育医療研究センター 周産期・母性診療センター 副センター長を経て現職。長年、不妊治療の現場に携わる中で感じてきたことから、加齢による妊娠力の低下や、高齢出産のリスクについての啓発活動も行う。著書に「妊活バイブル」(共著・講談社)、「『産む』と『働く』の教科書」(共著・講談社)など。
■イラスト/itabamoe
■取材・文/関川香織(K2U)、生田有希子
※記事内容、日付、監修者の肩書、年齢などは掲載当時のものです。
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