帝王切開のお産の流れとは? なる理由は?赤ちゃんとママの安全のために知っておきたいこと
施設によっても異なりますが、帝王切開は今や5〜6人に1人。お産の方法として特別なものではありません。あらかじめ手術日を決めて行われる「予定帝王切開」と、経腟分娩の途中で切り替わる「緊急帝王切開」があります。いずれも、赤ちゃんとママの安全のために行われます。今回は、産婦人科医の小川隆吉先生に帝王切開について、伺いました。
帝王切開、どんなときになる?
経腟分娩を行うと、赤ちゃんやママが長く苦しい状態になったり、体によくない影響を与えるおそれがあり、危険だと判断されたときです。
帝王切開になる主な理由
緊急帝王切開の場合
● 赤ちゃんの心拍数の低下
● 胎盤の機能低下
● 遷延分娩、分娩停止
● 前置胎盤で予定帝王切開前に出血
● さかごで予定帝王切開前に破水
● 母体の急変(血圧上昇など)
● 常位胎盤早期剝離
● 臍帯脱出
予定帝王切開の場合
● 多胎妊娠
● 過去のお産が帝王切開
● 骨盤位(さかご)
● 前置胎盤or低置胎盤
● 児頭骨盤不均衡 ※産院による
● 重症の妊娠高血圧症候群
● 持病がある
手術の方法は?
皮膚を縦に切る方法と横に切る方法があります。最近は傷が目立ちにくい横切りを行う産院が増えていますが、緊急時は、より短時間で赤ちゃんを取り出せる縦切りを行うことが多いようです。
誕生の瞬間はわかる?
帝王切開で多く使われているのは腰椎(ようつい)麻酔や硬膜外麻酔。全身麻酔と違って、これらは下半身だけの部分麻酔なので手術中でも意識があり、産声も聞けます。
手術後の痛みは?
硬膜外麻酔の場合はカテーテルを入れたままにするため麻酔薬を追加できますが、腰椎麻酔は1時間半くらいで切れます。麻酔が切れたあとは、鎮痛剤を使います。
麻酔の種類
●全身麻酔
静脈に麻酔液を注入し、気管からガスを吸わせて麻酔をかけます。ママは眠っている状態で出産することになります。
●硬膜外麻酔(こうまくがいますい)・腰椎麻酔
脊髄を包んでいる硬膜外腔(こうまくがいくう)という狭い空間に麻酔液を注入するのが硬膜外麻酔。ほかにも脊椎のくも膜下腔に麻酔薬を注射する腰椎麻酔が用いられることも。
帝王切開のお産の流れ
帝王切開のお産の流れは、予定帝王切開の場合も緊急帝王切開の場合も同じです。家族とともに、一度、流れを確認しておきましょう。
1 医師から手術の説明を受け同意書を提出します
予定帝王切開、緊急帝王切開とも、帝王切開にする理由について医師から説明を受け、その後、家族が同意書にサインをします。質問があれば、このときに聞いておきます。
2 手術室へ移動します
予定帝王切開の場合は、スタッフに付き添われて車いすや自分で歩いて移動します。緊急帝王切開の場合は、ストレッチャーに横になったまま手術室に運んでもらいます。
3 血管確保など手術前の処置を行います
術後の下半身の血流をよくするための弾性ストッキングを着用したり、万が一の血管確保のための点滴をしたりします。産院によっては心電図や血圧測定、導尿などが行われることも。
4 消毒をして麻酔します
おなか全体を消毒して、麻酔をかけます。腰椎麻酔や硬膜外麻酔の場合は、背中を丸くした姿勢をとります。麻酔を使い始めて気分が悪くなったときは、すぐにスタッフに伝えましょう。
5 切開を開始します
麻酔が効いているのを確認し、おなかの皮膚に縦か横に10㎝程度の切開を入れます。続いて、腹壁、筋膜、腹膜、子宮壁と順に切開していきます。
6 赤ちゃんが誕生
卵膜を破り、赤ちゃんを取り出したら、へその緒を切ります。切開を入れ始めてからここまで5分程度です。腰椎麻酔や硬膜外麻酔なら、赤ちゃんの産声も聞くことができます。
7 傷口を縫合します
胎盤をはがし、卵膜を取り除いたら、切開したのとは逆の順に、一層ずつ縫合していきます。皮膚は医療用のホチキスで留めることもあります。
8 入院室で休みます
術後は血圧、脈拍とともに、出血の様子も観察します。異常がなければ入院室に移動し、ゆっくり休みます。痛みを感じるときは鎮痛剤をもらえるので、スタッフに伝えましょう。
帝王切開手術は、経腟分娩の人が緊急で行う場合もあり、全員に可能性があります。術後、ママの体調がよければ、翌日から歩いたり、赤ちゃんのお世話ができます。一度帝王切開手術をしたママは、次の出産も帝王切開になることが多いようです。(文/たまごクラブ編集部)
監修/小川クリニック 院長 小川隆吉先生
日本医科大学卒業。同大学産婦人科講師、都立築地産院産婦人科医長を経て、1995年より現職。セックスカウンセラーセラピスト協会会員、日本不妊学会会員。
URL http://www.ogawaclinic.or.jp
参考文献:たまひよブックス「いつでもどこでもHAPPY妊娠・出産ガイドBOOK」(ベネッセコーポレーション刊)