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3カ月の日本滞在。小学校の先生やクラスメイトは「ふたりぱぱ」ファミリーをどう受け入れたのか?【YouTuberふたりぱぱ】

更新

4月末に代々木公園で開催された東京レインボープライド2023に家族3人で参加。

国際同性婚カップルとしてYouTube『ふたりぱぱ FutariPapa』で発信をしている日本人のみっつんさんとスウェーデン人のリカルドさん。2011年に結婚した2人は、2016年にアメリカでの代理母出産により男の子を授かり、現在はスウェーデンのルレオで暮らしています。7歳の息子くんは2023年の春の3カ月間を日本の小学校で過ごしました。日本滞在で感じたLGBTQに対する日本社会の変化や、スウェーデンの性教育などについて、みっつんさんに話を聞きました。

LGBTQに対して、日本社会のポジティブな変化を感じる

日本の小学校へ3カ月の短期留学をした息子くん。家族で記念写真をパチリ。

――息子くんは日本の学校の入学式前に校長先生と面談したそうです。同性婚家庭の保護者として感じたことを教えてください。

みっつんさん(以下敬称略) 今回、息子は1年生の4月から6月まで日本の小学校へ短期留学しました。入学式前に校長先生と面談をする際、ふたりぱぱの家庭についてどういう反応をされるかな、と少し心配でした。でも、僕が自己紹介してリカを「夫のリカルドです」と紹介したら、「はい、わかりました、ではおかけください」とすんなり受け入れてくれました。
「この子の保護者はこの2人の人」という感じで自然にとらえてくれ、めちゃくちゃあっさりだった印象です。校長先生が心配していたのは息子が日本語での授業にどのくらい対応できるかどうかだったようで、息子に対して「お名前は?」「好きな食べ物は?」などと基本的な質問を日本語でしていました。

おそらく先生方はいろんな家庭環境の子どもを見てきていて、すべての子どもに平等に教育機会を与えることを大切にしているんだと感じました。差別をせず、子どもを第一に考えてくれる、日本の教育のよさを実感しました。

――今回の滞在で、同性カップルに対する日本社会の意識の変化は感じましたか?

みっつん 日本に帰国するたびに、毎回とてもポジティブな変化を感じます。少しずつかもしれないけれど日本も確実に変化しているな、と思うんです。今回3カ月間滞在するなかで、学校や地域のみなさんが僕たち家族を自然に受け入れてくれました。僕の子ども時代には考えられなかった状況なんじゃないかな・・・。

また、滞在中には東京レインボープライドにも参加してそのにぎわいに驚きました。これだけたくさんの人がLGBTQに対して認知やサポートをしてくれ、パレードを楽しもうとしてくれているんだと、すごくうれしく感じました。また、僕自身にLGBTQに関する講演の依頼も多くいただき、社会や企業の関心や意識が高くなっている変化を感じました。

――2019年2月に始まった「結婚の自由をすべての人に」訴訟について、2023年6月には札幌、東京、名古屋、大阪、福岡の5つの地方裁判所で判決が言い渡され、大阪以外の4カ所で、法律上の性別が同じカップルが結婚できないことが​憲法違反だと判決がされました。司法の判断も変化しているのでしょうか?

みっつん 僕は全国5カ所で行われている裁判をスウェーデンにいるときでもずっと注視して、応援してきました。ちょうど今回の日本滞在中に名古屋にいる時期に、名古屋に住む1組のカップルが原告として立った裁判を傍聴することができました。
今回名古屋地裁で出された、法の下の平等を定めた憲法14条1項と、婚姻の自由を定めた24条2項に違反するという違憲判決は、全国5カ所の中でもいちばんすばらしい判決だと言われています。このことは、社会の意識が変化している証拠だと思いますし、同時に司法が社会の変化をとらえているとも感じました。傍聴していたみなさんと喜びを分かち合いましたし、一つの節目になった日だと思います。

ただその一方で、やはりまだまだLGBTQに対する差別的な発言があるし、心をえぐられるようなつらいニュースもありました。でも落ち着いて考えれば、これもLGBTQの権利などへの意識が高まった反動なのかもしれません。喜ばしくはないけれど、前進している証拠ととらえることで、ポジティブな社会意識の変化につながるんじゃないかと期待しています。

小学校の子どもたちにスウェーデンの授業をした中で・・・

みっつパパと息子くん、2人でチームラボプラネッツへ遊びに行きました。

――今回の日本滞在で、印象的だった出来事を教えてください。

みっつん 息子の担任の先生に「クラスの子どもたちにスウェーデンを紹介する授業をしてください」と頼まれて、スライドを作って1時間の授業をしました。自分たちのYouTube動画も交えながら「ここは夏は海だけど、冬には海が凍って車で走れるアイスロードになるんだよ。こんなに寒い場所が世界にあるんだよ」とスウェーデンでの暮らしを紹介しました。

その授業の中で「息子くんにはパパが2人いて、スウェーデン人のパパはスウェーデン語を話して、日本のパパは日本語を話すよ」と、僕たち家族の紹介もしました。授業の中で「パパが2人の家庭もある」とさらっと伝えられる機会をいただけたことはすごくありがたかったです。

――子どもたちはどんな反応でしたか?

みっつん 「へぇ〜」という感じで素直に聞いてくれて「YouTube見たことある!」と言ってくれる子もいました。また、「知ってる!42歳のパパと47歳のパパでしょ!」と反応してくれた子もいました。その子は息子の登下校時に仲よくなっていたのですが、僕とリカと息子と3人でいるときに僕とリカの年齢を聞かれて、「42歳と47歳だよ」と答えたのを覚えていたようです。
息子の家族のことを「2人のパパがいる」という性別のことではなく、「42歳と47歳の親がいる」と年齢を特徴として覚えていたんですね。子どもらしい素直さがとっても面白いと感じて、僕と担任の先生は思わず顔を見合わせて笑ってしまった出来事でした。

低年齢からの正しい性教育が、子どもの体を守る

今回の日本滞在でアジの開きが大好きになった息子くん。スウェーデンでは日本ほど魚料理が食べられないのだとか。

――以前、同性婚が法律で認められているスウェーデンではママ2人、パパ2人、シングル、ステップファミリーなどさまざまな家族の形があると教えてもらいましたが、スウェーデンの小学校の性教育の様子を教えてください。

みっつん 僕は専門家ではないので、スウェーデンで子どもを育てる立場として調べて感じている範囲でお話しします。スウェーデンは1955年に世界で初めて性教育が必修科された国といわれています。学校の教科として時間割に「性教育」の科目があるわけではなく、国語や理科といった通常の教科の文脈の中で、性の多様性を尊重する上で必要となる価値観や知識を教えるための言葉が取り入れられています。性教育は、自分の体を守り相手の体を大事にするための知識を身につける権利として大切にされています。

たとえば小学校の理科の授業では、子どもが生まれる過程について、セックスをすることで卵子と精子が出会い妊娠することも伝えられています。日本の小中学校の学習指導要領では「人の受精に至る過程」や「妊娠の経過」を取り扱わない「はどめ規定」というものがありますよね。だから「セックス」について説明しないことになっています。そこが大きな違いだと思います。

日本ではセックスを教えることでセックスを促すことにつながると考える人が少なくないのかもしれません。でも、性教育を必修科したスウェーデンでは、初交年齢(初めて性交をする年齢)が上がってきているというデータも出ています(※)。
正しい知識を教えることが、子どもたちが自分の体を守り、相手の体を傷つけない関係性を作れる証拠と言えるのではないでしょうか。このことは日本のみなさんにもぜひ知ってもらいたいです。

――就学前の子どもには、どんな内容の性教育がされていますか?

みっつん 基本的にはユネスコの包括的性教育のガイドラインに基づいてカリキュラムが作られています。就学前学校では先生が授業として教えるのではなく、子どもたちが過ごす場所で性の多様性を自然と学べる環境を作る取り組みがあります。また、小学校に上がる前の段階で大事にされているのは、自分の体のプライベートゾーンがどこなのか、そしてそれは親であっても勝手に触ってはいけないと教えることです。

おしりをふいたり、薬を塗ったりするときにも「見てもいい?」「触ってもいい?」と声をかけて、子どもが「いいよ」と同意してから見たり触ったりするように、親も子どもの意思を尊重することが大事です。日常的にそのようなやり取りをしておくと、万が一、子どもがだれかにプライベートゾーンを触られることがあったときに「パパはいつも聞いてくれるのになんでこの人は聞かずに触ってくるんだろう」と、それが正しくないことだとわかるからです。

最近ではスウェーデンで性教育のカリキュラムが大きく変わりました。以前は「性と共生(sex och samlevnad)」というカリキュラムが、2022年から「セクシャリティ・同意・関係(sexualitet, samtycke och relationer)」に変わり、性的同意に関する部分の重要性が明確化されました。2018年にスウェーデンの同意法が改正されたことが反映されています。日本でも最近、不同意性交罪が改正されました。これは「同意がない性交は犯罪になり得る」ということ。自分の体を守り、相手の体を大切にするために「同意」について子どもたちに、日常のコミュニケーションのレベルで教えていくことが大切だと思っています。

(※)2012・2016・2021年にスコーネ市の中学3年生と高校2年生を対象にした性交経験についての調査(FOLKHÄLSORAPPORT BARN OCH UNGA I SKÅNE “Sexuell hälsa”)で、性交をした人の割合が各学年で減少していることがわかっています。

お話・写真提供/みっつんさん 取材・文/早川奈緒子、たまひよONLINE編集部

息子くんの日本での短期留学中には、小学校の保護者同士で話す際にも、「わざわざ同性婚カップルです、と自己紹介しなくてもYouTubeの活動が名刺がわりになって便利だった」とみっつんさん。「YouTube見ました!」と声をかけてもらうことも多かったそうで「これからも一つ一つ発信を続けたい」と言います。

「たまひよ 家族を考える」では、すべての赤ちゃんや家族にとって、よりよい社会・環境となることを目指してさまざまな課題を取材し、発信していきます。

YouTubeチャンネル『ふたりぱぱ FutariPapa』

●この記事は個人の体験を取材し、編集したものです。
●記事の内容は2023年10月当時の情報であり、現在と異なる場合があります。

ふたりぱぱ

PROFILE
スウェーデン人のリカと日本人のみっつんと息子くんの同性婚ファミリーYouTuber。みっつんとリカは結婚後、代理母出産により息子くんを授かり、リカの故郷スウェーデンへ移住。スウェーデンで現在7歳になる息子の子育てに奮闘する様子をYouTubeやブログで発信している。

『ふたりぱぱ ゲイカップル、代理母出産(サロガシー)の旅に出る』

スウェーデン人男性と同性婚をしたみっつんの人気ブログ『ふたりぱぱ』の連載「サロガシーの旅」の書籍化。ゲイが子どもを授かる方法、サロガシー(代理母出産)のプロセスなど、ゲイカップルが子どもを授かるまでの“旅"をリアルに語るエッセイ。みっつん著/1870円(現代書館)

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