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もし自分の子どもがLGBTQだったら?親が子どもにしてあげられること【臨床心理士】

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カラフルな靴の子どもたち。子供の靴
※写真はイメージです
FamVeld/gettyimages

LGBTQという言葉を目にする機会が増えています。これはセクシュアリティのアイデンティティを表す言葉ですが、小さな子どもも、身体的性別とは異なる性別の服装や遊びを好むことがあります。子どもの性別違和に詳しい、臨床心理士で明治大学准教授の佐々木掌子先生に話を聞きました。

子どもが自分の性別に違和感を持つとき

――幼児期の子どもにも、身体的性別とは異なる性別で生きたいというトランスジェンダーの子はいるのでしょうか?

佐々木先生(以下敬称略) 子どもはアイデンティティ形成途中なので、トランスジェンダーかもしれない行動があったとしても、成長によって変化することも多く、大人の尺度を当てはめることはできません。しかし、子どもが好きな洋服や、好きな遊びに対して、周囲から否定的なことを言われたりすると、自分が悪いのかな、と戸惑ったり不安に思ったりし「性別違和」を感じることがあります。

――子どもが性別違和を持ち始めるきっかけはどんなことですか?

佐々木 「男女二分法」を意識させられるときです。たとえば、制服やスモックの色などをはっきりと男女で分けるような幼稚園に入ると、激しく性別違和を意識する子どももいます。「男の子はこの色」「女の子はこの服」などと決められてしまうと、男か女かどちらかに決めなくてはならないと感じ、スカートやピンクの服を着たいと思う男の子なら「自分が着たいと思うものを言ってはいけないのかな」と悩んでしまいます。けれど、ジェンダーに関してあまり振り分けない保育園や幼稚園などの環境にいる子どもは、気にせずに育つこともあります。

――子どもが初めから違和を感じているのではなく、周囲の環境によってもたらされるということですね。

佐々木 そうです。就学前の子どもの場合は、「女の子(男の子)になりたい!」とはっきり主張するというケースもあるにはあるのですが、それよりは、男の子だけれど女の子的な遊びや服装や髪型が好き、逆に女の子だけれど戦隊ヒーローや電車が好き、など、異性的な行動をたくさん取っていて、それに周囲が「戸惑い」、その反応に本人が「戸惑う」ということがよくみられます。

周囲の環境が、どんな服装や遊びをしてもいいよ、という状況なら、子どもは困らないでしょう。けれど、「男の子はこうすべき」「女の子はこうすべき」と強制されてしまうと生きづらくなりますよね。

大切なのは親が子どもの個性を決めつけないこと

――先生はジェンダーに関するカウンセリングもされていますが、相談に来る人はどんなことで悩んでいますか?

佐々木 「異性の遊びやおもちゃばかり好きで、この子は将来どうなるのか」と不安に思う人、「自由にやらせているけれど、息子にスカートをはかせたままの状態で小学校に通わせていいんだろうか」と悩む人、あるいは「この子を女の子として育てたいので、学校側に働きかけるための証明書類を書いてください」という人など、いろんな親子がいます。

難しいのは、その時点では確かに性別違和の悩みを持っていると思うんですけど、子どもは成長するので、その後がどうなるかはわからないこと。幼少期に異性的な遊びや服装や表現などを好んだからといって、それは性役割の志向性に過ぎず、大きくなって、性別への違和感を持つかというと、そういうケースは少ないと言われています。将来的にトランスジェンダーとして生きるのか、同性愛者になるのか、異性愛者になるのかはわかりません。

――自分の子どもが性別違和があるかもしれないと感じたとき、親としてはどのように受け止めればいいのでしょうか。

佐々木 重要なのは、「決めつけない」ということです。成長によってどんどん異性のアイデンティティを持つようになるかもしれないし、中性的な自分に自分らしさを感じるかもしれない。あるいは元の性別が許せるようになっていくかもしれません。「この子はトランスジェンダーだ」あるいは「この子はトランスジェンダーにはならない」と親が決めつけることはできません。最終的に自分の性別を決めるのは子ども自身です。

だから、いろいろ試せる環境を用意してあげてほしいです。遊びやお友だち、習いごとなど、子どもがやりたいなら、男女のイメージにとらわれずにいろんなことを試すことです。洋服も、女の子になりたいんだから女児コーナーで買わなきゃ、と思う必要はありません。いろんな売り場から、本人の好きな洋服を試させてあげる。自分の好みは、いろいろ試してみないとわからないですよね。

まずは親や周囲が多様性への理解を

――子どもが「学芸会で女の子の衣装を着たくない」「プールの時間に上半身裸になりたくない」などと訴えたとき、保育園や幼稚園などにどんな協力を求めるべきでしょうか。

佐々木 2015年に文科省から『性同一性障害に係る児童生徒に対するきめ細かな対応の実施等について』という通知が出されています。性同一性障害かどうかにかかわらず、子どもがそのように訴えたら、園や学校側は対応をするのが務めです。診断書をもらう必要はありません。

なぜなら、園や学校での性役割の許可不許可を出すのは園や学校であって医療ではないからです。子どもの人権に配慮することが教育側の務めですので、子どもの心情におもんぱかった対応を求めましょう。衣装を変更する、プールの時間はラッシュガードを着させるなど、子どもが「これなら大丈夫」と思えることはなにか、話し合ってもらいましょう。子どもが困りごとを抱えているなら、周囲の人や環境に働きかける必要がありますよね。
ただ、一部の私立幼稚園などでは教育方針などから難しいこともあり、しかたなく転園するというケースもあります。

――では、自分とは少し違う個性の人を、差別したりからかったりしない子に育ってほしいとき、親として気をつけたほうがいいことはどんなことでしょうか?

佐々木 まずは親自身が、自分と違う人のことをどう受け止めているかを見つめ直すことが必要です。テレビや街ゆく人を見て、親が「あの人あんな格好をしてる!」と言って笑ってしまえば、子どもも「あの人の格好はこういうふうに言われるんだ」「変なんだな、笑われることなんだ」と取り込んでしまいます。親自身が、普段自分がどんなふうに他者に接しているのかを振り返らないまま、子どもにだけ「差別しちゃだめ」とは言えませんよね。

子どもは、親だけでなく周囲の大人やお友だちの様子を見て学びます。その中でやってもいいんだと学んでしまえば、差別したりからかったりしてしまうわけです。

子どもの性のあり方は成長によっても変わります。「男だから」「女だから」こうしなければおかしい、と人のことを決めつけることは、その人を生きづらくさせてしまいます。逆に親が、子どもの好みや行動や意見を否定せず受け止めてあげることは、子どもの可能性を広げることにつながるでしょう。

取材・文/早川奈緒子、ひよこクラブ編集部

お話・監修/佐々木掌子(ささきしょうこ)先生

大人になってから周囲に「男だから」「女だから」と決めつけられるとモヤモヤを感じる人は少なくないでしょう。けれど子どもに対しては、気づかないうちに「男の子」「女の子」と分けて接してしまっているかもしれません。多様な個性を尊重し合える社会にするために、親である自身の振る舞いを見つめ直すことも大切なのかもしれません。

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