約4年にわたり不妊治療を続けているフォーリンラブ・ハジメ 「現在の僕の妊活、 お話しします」
不妊治療については女性の立場から語られることが多いけれど、つらい思いをしているのは女性だけではありません。
約4年にわたり不妊治療を続けているフォーリンラブのハジメさんに、その胸の内を明かしていただきました。
フォーリンラブ ハジメさんの妊活振り返りインタビュー<前編>では、妊活をはじめたきっかけや、その経緯を妊活たまごクラブがお聞きしました。
「妊活振り返りインタビュー フォーリンラブ ハジメさん」 #1
※参考:「妊活たまごクラブ 不妊治療クリニック受診ガイド 2021-2022」
初めての精液検査で精子の問題が判明
●フォーリンラブ ハジメさん(以下、ハジメ)「今は女性以上に、男性のほうも不妊の原因が多いそうですね」
――約3年前、フォーリンラブのオフィシャルブログで不妊の話題を取り上げ、ご自身が不妊治療をしていること、そして治療のために精索静脈瘤(せいさくじょうみゃくりゅう)手術を受けたことを公表したハジメさん。結婚したのは2014年。当時は妊娠することがそんなに難しいこととは思っていませんでした。
●ハジメ「避妊はせず、そのうちできるだろうと思っていたけれど、3年経っても妊娠の兆候がない。そこでまずは僕が、男性不妊の専門クリニックに行きました」
――最初にクリニックに足を運んだのは奥様ではなく、夫であるハジメさん。一体、なぜ?
●ハジメ「『もしかしたら原因は僕なのかな?』という思いもありましたし、妻よりも僕が先に行ったほうが不安要素がちょっと減るかなという思いもあって。僕で助走がつけられたら、その後で妻もクリニックに行きやすくなるかなと思ったんです」
――今は自宅で手軽に精子チェックができる検査キットもありますが、ハジメさんはクリニックでの精液検査を選択しました。
●ハジメ「検査キットがあることは知っていましたが、『ホンマに? 大丈夫?』と、ちょっと不安があって。クリニックでちゃんと検査を受けたいと思って、『男性不妊』『クリニック』で検索して、家から近くて自分なりに『ここかな』と思ったところに行きました」
――男性専門クリニックなので、そこにいるのは男性患者だけ。
●ハジメ「当時はまだコロナじゃなかったんですけど、マスクをして下を向いている男性が多いなと思いました。たぶん見られたくないんでしょうね。そういう空気が伝わってきました。そして、男性専門のクリニックなのに、受付は全員女性だったんです。そこで男性たちがオドオドしているのを見て、僕まで“もらい緊張”しちゃって(笑)。受付の女性に『これに精液を出してください』と言われて恥ずかしく思ったことを覚えています。採精室は完全防音の個室。今まではただの自慰行為だったものが、妊娠に直結すると思うとまったく意味合いが変わって、なんだかヘンな気持ちになりました」
――精液検査の結果は……。
●ハジメ「精子の活動率がよくないことが判明しました。受精できるくらいの強い精子の数が平均より少ない、と。それを改善するための方法として2つの治療法を提案されました。1つは漢方や飲み薬で、改善する人がある程度いる。もう1つは精索静脈瘤(せいさくじょうみゃくりゅう)の手術で、かなりの人がよくなると説明を受けました。家に帰って妻に相談すると、妻は、僕のことは『いったんわかった』。『次は私が行くね』と言って、自分でクリニックを探して検査を受けに行きました。結果は子宮や卵巣、ホルモンバランスなどには何も問題ないとのこと。そこで人工授精を2回行いましたが、うまくはいきませんでした」
――やはり原因は精子の活動率の低さ。今後の治療をどう進めるか、夫婦で話し合いました。
●ハジメ「とはいえ、僕の中ではほぼ決まっていたんです。精索静脈瘤(せいさくじょうみゃくりゅう)手術のほうがよくなる可能性が高いのであれば、それに賭けようと。そして2018年に手術を受けました」
手術を経て、次は顕微授精にトライ
――精索静脈瘤(せいさくじょうみゃくりゅう)とは、精巣から心臓へ戻るべき血液が逆流してしまい、精巣の周りに静脈瘤ができてしまう病気。血流が悪くなるので精巣の温度が上がり、熱に弱い精子に悪影響を与えてしまいます。実は一般男性の15%ほどにみられ、男性不妊の約40%は精索静脈瘤(せいさくじょうみゃくりゅう)が原因とも。精巣とつながる静脈を遮断することで血流を改善し、静脈瘤を消滅させる手術などが主な治療法です。
●ハジメ「麻酔をしているので、手術中は触られていることがわかるくらい。メスを入れて縫っているので、麻酔が切れてきた頃に痛みを感じました。でも手術翌日にはバービーと一緒の仕事もできました。舞台に上がるときに『イテテテテ』なんて言っていましたけど」
――手術の結果がわかるのは約3ヶ月後。ハジメさんは再度、精液検査を受けました。
●ハジメ「結論として、僕の場合は手術前とあまり変わらなかったんです。受けた人が100%改善するわけではないのは知っていたけれど、すがれるものには何にでもすがりたい、可能性がちょっとでもあるなら試そうという気持ちが強かっただけに、ショックでした」
――できることから1つずつ。そんな気持ちで治療に向き合っていたハジメさん。だからこそ落胆は大きく、打ちのめされたと言います。
●ハジメ「結局、『この手術をやったら改善するかも…』とはいえ、どれも100%ではないんですよ。妊娠するために僕が力を貸せることって精子しかないのに…絶対という治療法がないことに、もどかしさを感じました。しかも男性の手術に関しては助成金が出ない(※一部特定男性不妊治療には自治体によって適用あり)。『なんで男性には何もないの?』というモヤモヤした気持ちにもなりました」
――その後、夫婦で話し合い、顕微授精にステップアップすることを決断しました。
●ハジメ「1回目の顕微授精で受精卵が2個できたんですが、どちらも着床せず…。この治療の後、転院することを2人で考え始めました。妻はホルモン注射を自分で打っていたのですが、それが痛いし、精神的にもきつかったみたいで。妻の負担が大きかったので、なるべく負担の少ない治療ができるところを探し、新たなクリニックで心機一転スタートすることにしました」
妻の心の負担を軽減してあげたい
――その後、新型コロナウイルスの感染が拡大。緊急事態宣言が出たことで、クリニック側と相談し、治療の延期をしました。
●ハジメ「受精卵は凍結して保存してもらっていたので、緊急事態宣言が解除されてから治療を再開し、受精卵を子宮に戻しました。それが着床したのですが、10週目で発育が止まっていることが判明して流産に……。その後も胚移植にトライしましたが、やはり結果は出ず、今に至ります」
――夫婦にとって流産は、言葉では言い表せないほどつらい経験。ひと言ずつ丁寧に言葉を紡ぐハジメさんの目にも涙がにじみます。
●ハジメ「今思い出しても泣いてしまいそうなんですけど…そのときは僕が先に泣いちゃったんです。そしたら妻も泣いて。お互い、胸にあったいろんな思いがまとめて涙になったような感じでした。実は両親やマネージャー、僕が仲のいい芸人の先輩など、近しい人には妊娠を報告していたんです。まだ10週で、本来は言うタイミングじゃなかったかもしれないけれど、初めておなかに胎児がいるといううれしさから、つい話してしまった。だから余計、妻の口から両親に流産の報告をさせるのは、僕にとってもつらかったですね」
――これまでの約4年間の妊活中には、精神的にきついとき、落ち込んでしまうときが幾度となくあったはず。それを夫婦でどのように乗り越えてきたのでしょうか。
●ハジメ「僕が落ち込んだらいけない空気のときと、僕が落ち込んだほうがいい空気のときがあるんです。その空気をなるべく読むようにしていますね。僕が想像できないくらい落ち込んでいるであろう妻に、『大丈夫、大丈夫』と軽いノリで言っていいのか、言わないほうがいいのか、とか。女性と男性は同じ温度感では絶対に悩めないと思うんです。いちばん深いところでは絶対に僕のほうが悩みは軽い。そんな僕ですらめちゃくちゃきついので、どういうふうに寄り添えば、妻が背負っているきついものを軽くしてあげられるのか、ものすごく考えています」
フォーリンラブ ハジメさんインタビュー<後編>では、継続中の不妊治療の様子やバービーさんのお話、これから妊活をスタートさせる人へのメッセージをお聞きしました。
ぜひご覧ください!
ハジメさんの妊活STORY
●30歳・・・結婚
避妊しなければ、当たり前に妊娠すると思っていた。
●33歳・・・男性不妊の専門クリニックへ
精液検査の結果、精子の活動率が悪いことが判明。人工授精を2回行う。
●34歳・・・精索静脈瘤(せいさくじょうみゃくりゅう)手術を受ける
自然妊娠を目指して妊活を再スタート。
●35歳・・・顕微授精にステップアップ
受精卵が2個できたが、着床せず。
●転院して2回目の顕微授精にトライ
その後、新型コロナウイルスの影響で治療をお休み。
●36歳・・・治療を再開
一度着床に成功するも、流産に……。
●現在も治療継続中
■フォーリンラブ Profile
ハジメさん(1984年生まれ、和歌山県出身)とバービーさん(1984年生まれ、北海道出身)によるお笑いコンビ。ワタナベコメディスクール1期生のハジメさんが2期生として入学したバービーさんと出会い、2007年にコンビを結成。ハジメさんは2014年に、バービーさんは2021年に結婚。オフィシャルブログ「女子力磨いたっていいじゃない」https://ameblo.jp/yesfallinlove/
●撮影/関信行
●スタイリスト(バービーさん)/谷口夏生(TAKUTY PRODUCE&CREATE)
●文/本木頼子
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