【FP監修】不妊治療のお金・3つのルールと費用を抑えるコツとは?
いざ不妊治療をスタートしよう!と思ったら、最初に気になるのは費用のことですね。
2022年から不妊治療が保険適用になり、自己負担分は3割になったけれど、実際はどのくらいの費用がかかるのでしょうか?
今回は、「不妊治療で『かかるお金』保険適用でどのくらい安くなった?」についてFPの宮野真弓先生に伺いました。
※金額は1周期あたり。厚生労働省「不妊治療に関する支援について」などをもとに、宮野さんが作成。
不妊治療で「かかるお金」最新版 #1
※参考:「妊活たまごクラブ 初めての不妊治療クリニックガイド 2024-2025」
不妊治療のお金 3つのルール
妊活・不妊治療のお金の専門家である、フィナンシャル・プランナー宮野さん。
宮野さんがおすすめする、「不妊治療のお金」3つのルールはこちら!
<不妊治療のお金ルール・1>予算の目安は100万円
100万円くらいあると、ひととおりの治療を経て、体外受精に何度かトライできます。
100万円がなくなるころに、年齢や保険適用の回数を考えながら、今後どうしていくかを夫婦で話し合いましょう。
<不妊治療のお金ルール・2>仕事はなるべく辞めない
仕事と治療の両立は難しいですが、なるべく辞めないでほしい。仕事を辞めるのは最後の手段にしましょう。
辞める決断をしたとしても、いつかまた働くための準備を忘れずに。
<不妊治療のお金ルール・3>治療費は家計でやりくり
不妊治療の費用は、基本的に家計でやりくりすること。
いざ妊娠、出産したら、予定していた治療費と同額をそのまま教育費にまわし、貯蓄ができます。
不妊治療を機に、夫婦で家計を見直すとよいでしょう。
長引くと高額に!最初から夫婦で受診が費用を抑えるコツ
「不妊治療の保険適用後、たしかに治療にかかる費用は減りました。ただ、回数や年齢などに制限があるため、治療が長引くと、自己負担になる恐れがあります。実際、短期で安くすむ人と長期で高額になる人の二極化は、今までより広がっています」とFPの宮野さん。なるべく費用を抑えるコツはあるのでしょうか。
「不妊の原因は夫婦どちらにもあり得る前提で、最初から2人で受診することです。私の相談者にも、女性だけ2年ぐらい治療し、人工授精にステップアップするタイミングで男性の検査をしたら、実は男性側に原因があったという方も。夫婦ともに検査を受けた上で治療の方針や予算、働き方などを話し合い、決めてほしいと思います」(宮野さん)
保険適用でどのくらい安くなった?
治療がステップアップするほど、金額は高くなりますが、どの治療も保険適用前と比べると、3分の1程度になっています。
★治療がステップアップするほど価格はUP!
<不妊治療ステップ・1>タイミング法
★保険適用前…1万円程度
→保険適用後…約2000〜3000円
経腟(けいちつ)超音波検査やホルモン測定をもとに排卵時期を予測し、妊娠しやすいタイミングの指導を受けて自然妊娠をめざす。かかる費用は、一般不妊治療管理料や診察、検査、薬代など。
<不妊治療ステップ・2>人工授精
★保険適用前…約3万円
→保険適用後…1万~1万5000円程度
必要な処理を施した男性の精子を、女性の排卵時期に子宮内に注入する、自然妊娠に近い治療法。
かかる費用は、一般不妊治療管理料や診察、検査、薬代、人工授精など。
<不妊治療ステップ・3>体外受精
★保険適用前…20万~60万円程度
→保険適用後…15万~20万円程度
卵巣から取り出した卵子を培養液に入れて、精子を振りかけて受精。
受精卵が「胚(はい)」まで発育したら子宮に注入して戻す(胚移植)。採卵や移植に関する費用がかかる。
<不妊治療ステップ・4>顕微授精
★保険適用前…30万~70万円程度
→保険適用後…15万~25万円程度
培養士が運動性にすぐれた精子を顕微鏡下で1個選び出し、卵子に注入する「卵細胞質内精子注入法(ICSI)」を用いる。かかる費用は、採卵、顕微授精、受精卵培養(ばいよう)など。
<不妊治療ステップ・4>凍結融解胚(とうけつゆうかいはい)移植
★保険適用前…10万~25万円程度
→保険適用後…約5万円
複数の受精卵(胚)が得られたら凍結して保存。その受精卵を融かして子宮内に移植する方法。
凍結胚保存や融解胚移植が主な費用。特殊な技術を用いると、さらに加算される。
男性不妊の手術
★保険適用前…25万~40万円程度
→保険適用後…3万~8万円程度
男性不妊の原因の一つとされる精索静脈瘤(せいさくじょうみゃくりゅう)に対する手術のほか、精子を採取するための「精巣内精子採取術(TESE)」、精子の通り道の閉塞(へいそく)を取り除く「精路再建手術」などに適用。
※保険適用範囲の治療とは?
タイミング法と人工授精(一般不妊治療)は、だれでも保険適用になりますが、体外受精と顕微授精(生殖補助医療)は、女性の年齢や回数に制限があるので注意しましょう。
これは保険がききません!
★年齢・回数の制限を超えた場合
生殖補助医療は、治療開始時の女性の年齢が40歳未満なら、1子につき6回、40歳以上43歳未満なら3回を超えると自己負担に。
★自費診療と保険診療の併用NG
自費診療の治療を一つでも選ぶと、それまでの保険適用の治療も全額自己負担に。
一部、保険診療と併用できる先進医療もあります。
★承認の下りていない薬など
先進医療以外でも、検査や治療、薬で自費になることも。海外で使われていても、日本で承認されていない薬などは、自費になります。
※金額は1周期あたり。厚生労働省「不妊治療に関する支援について」などをもとに、宮野さんが作成。
※掲載の情報は、2024年8月現在のものです。以降、変更されることもありますのでご了承ください。
●イラスト/AYUMI NISHIMURA
●構成・文/池田純子