体に負担が少ない?体外受精「自然周期」・「低刺激周期」って?専門医に聞いてみた
不妊治療を始めたら、その先に検討すべきか迷うのが「体外受精」。
そもそも体外受精といってもいろいろな方法があるようで、特徴的なクリニックを訪問し初心者ならではの質問をぶつけました。
今回は、体外受精の方法のひとつ「自然周期」・「低刺激周期」について、加藤レディスクリニック院長 加藤恵一先生にご回答いただきました。
3つのタイプのクリニックに素朴な疑問を聞いてみた!Q&A #2
※参考:「妊活たまごクラブ 不妊治療クリニック受診ガイド 2021-2022」
【Q1】自然周期や低刺激周期ってどんな採卵方法なの?
【A1】できるだけ体に負担が少なく、「妊娠する力」をサポートする方法です
●加藤恵一先生(以下、加藤先生) 「過度な排卵誘発剤によって、本来あるべき以上の卵巣刺激を行うのではなく、一人一人がもつ「妊娠する力」を手助けするのが「自然周期」と「低刺激周期」の治療方針です。妊娠しやすい良好な卵子を得るため、排卵誘発剤の使用を必要最小限まで減らすことで、心と体に負担をかけず、自然に近い状態での妊娠が目指せます。毎回1つの卵子だけと思われているようですが、最低限の卵巣刺激により複数の卵胞の成長を促します。「自然周期」と「低刺激周期」の違いは下記のとおりです」
完全自然周期について
月経開始から排卵前までの薬をいっさい使用せず、排卵直前に卵胞が成長したら卵子の成熟を惹起する点鼻薬を使って卵子を採取します。月経の周期が正常で、卵巣機能に問題がない女性が適応となります。
低刺激周期 (クロミフェン周期)について
排卵誘発剤「クロミフェン」を使用することで、複数の卵胞の発育が見込まれ、排卵のコントロールが可能になり、採卵率が向上します。使用する薬剤の量を極力少なくして、体への負担を抑えます。
【Q2】通院回数はどのくらい?治療スケジュールを教えて!
【A2】個人の状況で来院回数は異なるので365日年中無休の体制でサポートします
●加藤先生 「完全自然周期治療の場合は月経開始日から12日目と、採卵日となる14日目の計2回の通院が基本に。低刺激周期の場合は、月経開始日3日目からクロミフェンを使用するため、その日と12日目、そして採卵日である14日目と、1周期の治療に最低でも3回通院する必要があります。月経周期に合わせた治療となるので、個人個人によって来院日が異なったり、来院回数が増えることがありますが、そのサポートのために、当院では365日年中無休の診療体制を整えています」
自然周期の治療スケジュール(例)
【Q3】採卵が痛くないと聞いたけれどどうして痛みが少ないの?
【A3】当院が独自に開発した細い採卵針の使用で痛みを抑えています
●加藤先生 「以前は献血などによく使われる17G(ゲージ)を使用していました。注射針は太いほうが、短時間により多くの液体を吸引できますが、太さに伴って痛みも増幅します。そこで当院では、痛みを抑えるために従来の2分の1サイズの21Gか22Gの細い採卵針を開発し、使用しています。針の先端部分に特殊加工を施しているので、痛みや出血が軽減。そのため全身麻酔の必要はありません。また、体への負担も少ないので、採卵終了後、約15分の安静時間を経たら帰宅が可能です」
【Q4】自然周期、低刺激周期での、採卵から移植までの流れを教えて!
【A4】採卵→受精→培養→胚移植となります
●加藤先生 「受精の方法には、精子と卵子を一緒にして自然に近い方法で受精させる「体外受精」と、1個の精子を直接卵子に注入する「顕微授精」があります。どちらの方法になるかは、卵子と精子の状態、過去の治療歴などを参考に、相談をさせていただきながら最終的に決定します。すべての胚はタイムラプスインキュベーターで培養され、ストレスを与えることなく24時間観察されています。胚移植には「初期胚移植」、「胚盤胞移植」、「凍結胚移植」があり、それぞれの方々の状態に合わせた最適な方法を提案しています」
【Q5】胚移植って何?どんな状態ですか?
【A5】体外で育てた「胚」を子宮に戻すこと。子宮内膜が良好な周期に移植します
●加藤先生 「精子と卵子が受精した受精卵を「胚」と呼びます。その「胚」を体外で一定期間培養し、子宮に戻すことを「胚移植」といいます。胚移植に必要な時間は5~10分程度。カテーテルと呼ばれる細い管を用い、超音波画像を確認しながら行います。当院では独自に開発した、従来品より細くて柔らかいカテーテルで、着床するのに最適な場所に胚を移植して妊娠へのサポートを行います」
【培養室をCheck!】加藤レディスクリニック
クリニックの培養室には約60名の培養士が365日体制で勤務。
1日当たり60名を超える採卵を行っている!
安全性の高い顕微授精を実施
受精卵の生存率を上昇させることに成功
胚の着床率を向上させる技術の確立
■監修
●撮影/合田和弘
●イラスト/コナガイ香
●構成・文/飯田由美(BEAM)
※記事内容、日付、監修者の肩書、年齢などは掲載当時のものです。