体外受精にもタイプがある!「受精卵凍結」について専門医に聞いてみた
不妊治療を始めたら、その先に検討すべきか迷うのが「体外受精」。
そもそも体外受精といってもいろいろな方法があるようで、特徴的なクリニックを訪問し初心者ならではの質問をぶつけました。
今回は、体外受精の方法のひとつ「受精卵全凍結」について、医療法人浅田レディースクリニック理事長 浅田義正先生にご回答いただきました。
3つのタイプのクリニックに素朴な疑問を聞いてみた!Q&A #1
※参考:「妊活たまごクラブ 不妊治療クリニック受診ガイド 2021-2022」
【Q1】受精卵全凍結ってどんな移植の方法なの?
【A1】受精卵をすべて-196℃の液体窒素で凍結し、のちに融解して移植する方法です
●浅田義正先生(以下、浅田先生) 「採卵後すぐに受精をして移植することを「新鮮胚移植」と言うのに対し、受精卵を培養して一度凍結し、翌周期以降に融解して移植することを「凍結胚移植」と言います。周期をずらして子宮内膜のコンディションがよいときに移植するので、2007年ころから飛躍的に進歩した凍結法により、受精卵の生存率がアップ。さらに移植1回あたりの妊娠率がよいことを確認し、2012年から当院での胚移植はすべて受精卵全凍結(凍結融解胚移植)に移行しました。体外受精による出生児は年々増加していますが、それとともにスタンダードになりつつある治療法です」
【Q2】受精卵をわざわざ凍結するのはどうして?
【A2】母体側のコンディションを整え、より着床しやすいときに移植するためです
●浅田先生 「体外受精では採卵をする前に、卵胞を育てるための排卵誘発剤を使用します。卵巣に複数個の卵胞が育つと、子宮内膜をふかふかに厚くする黄体ホルモンの全体量が増加し、予定より早いタイミングで子宮内膜の準備ができてしまい、着床を妨げる要因にも。そこで1回の生理周期の中で行うリスクを解決してくれたのが進化した凍結技術です。受精卵を凍結することで、翌月以降の生理周期で子宮内膜の状態がいいときに着床させることができます」
【Q3】ツラいと聞くけれど、採卵するとき、痛いですか?
【A3】採卵の痛みを和らげるため、麻酔をしてから行います
●浅田先生 「採卵は腟内から腹膜を貫通し、卵巣に針を刺して採取するため、当然のことながら痛みを伴います。しかし、この痛みをなくすため、当院では静脈麻酔下で採卵。麻酔による入眠や覚醒も心地よいというかたもいらっしゃいますし、ゆっくりと休めるようベッドなどにも配慮しています」
【Q4】凍結した受精卵はどれくらい保存ができるの?
【A4】第2子のための保存など生殖年齢の範囲内で保存します
●浅田先生 「受精卵の凍結の保存期限は40代までですが、それまでは毎月、自動的に更新します。第2子のために延長されるかたをはじめ、病気など体の不調が理由で保管されるかたもいらっしゃいます。保管の延長は生殖年齢の範囲内、当院では40代まで可能といえますが、妊娠・出産・子育ても考えて判断しなければなりません」
【Q5】通院回数はどれくらい?
【A5】凍結融解胚移植で3、4回程度。不要な検査は省いています
●浅田先生 「仕事で忙しい毎日を過ごす女性にとって、通院回数が多いのは負担になるだけ。当院では不要な検査を省いて、できるだけ通院回数を少なくするよう努めています。受精卵を全凍結する凍結融解胚移植は「子宮内膜チェック」と「融解胚移植」、そして「妊娠判定」と、生理周期1周期あたり3回が通院回数の目安。多くても1周期あたり4回でおさまるかたが大半です」
通院は1周期3回の受診のみでOK!
【Q6】凍結しても受精卵の質は変わりませんか?
【A6】凍結技術の進化で生存率99%以上。質の変化もほとんどありません
●浅田先生 「受精卵の約60%は水分なので、そのまま凍結すると細胞内で水分が結晶化して凍結障害が生じてしまいます。当院では「ガラス化法」という方法で、常温から一気に-196℃の液体窒素に浸して凍結を行うため、その生存率は99.4%(2019年実績)。凍結による受精卵の障害はほとんどありませんので、ご安心ください」
【培養室をCheck!】浅田レディースクリニック品川
最新の設備を導入したという培養室を見せてもらいました。
全受精卵を凍結保存するため、採卵から受精、培養、保存、データ管理を行っています。
高度生殖医療を支える胚培養士
たくさんの精子から選択して受精を操作
緻密さが要求される体外受精シーン
万が一の災害時も対応する保管法
■監修
●撮影/合田和弘
●イラスト/コナガイ香
●構成・文/飯田由美(BEAM)
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