浜口順子さん 妊活振り返りインタビュー「不妊治療をした3年間は、人生で一、二を争うくらい、しんどい時間だった」
“はまじゅん”の愛称で、バラエティ番組などで活躍している、タレントの浜口順子さん。
35才を目前に、夫に背中を押されて妊活スタート。その後、三重県へ移住し不妊治療を続けるものの、その道のりは思っていたよりも長く、つらかったと話します。転院を重ね、ようやくめぐり合えたクリニックでの不妊治療を経て妊娠。
2023年12月、念願のママになった浜口さんに、妊活期間を振り返っていただきました。
浜口順子さん 妊活振り返りインタビュー。
2回の体外受精で授かれず…心身リセットをするため三重県に移住した浜口さん。
<後編>では、3回目のクリニック探しとその後の様子を、当時の心境とともに伺いました。
妊活振り返りインタビュー・浜口順子さん #2
※参考:「妊活たまごクラブ 初めての不妊治療クリニックガイド 2024-2025」
新たなクリニックでついに妊娠!
2022年8月、三重県に移住し、不妊治療はいったんお休みに。
「三重は自然が豊かで海鮮もおいしい。夫とは『妊活を気にせず楽しむ夏があってもいいんじゃないか』なんて話をしていました。不妊治療を続けていたら、周期と重なってしまえば治療を優先しなければいけません。治療をお休みすると決めたからこそ、思う存分に移住先での暮らしを楽しむことができました」
当初は2022年いっぱいは治療を休んで、2023年1月から再開しようと思っていたそう。
「でも、いざ1月になったら、まためっちゃ嫌な気持ちになり…。まず、クリニック探しから始めなきゃいけないわけです。三重に移住してまだ数カ月しか経っていないから土地勘はないし、情報収集にも苦労しました。そんな感じで1月はズルズルさぼってしまって。2月になり、『そろそろやらなあかんな』と夫と話し合って、クリニックを探し始めました」
悩んだ末に選んだのは、名古屋にある不妊治療クリニック。
「駅から近いことが決め手の一つになりました。三重にも評判のいいクリニックはありましたが、車社会なので自分で運転して通わなくちゃいけない。それは大変だなと思ったので、電車でのアクセスがいいところを探しました。それに、名古屋駅前なら東京出張の途中にも立ち寄れます。それなら負担も少なく通いやすいなと思って決めました」
通いやすさ以外に、浜口さんにはどうしても譲れない条件がありました。それは“痛くない”こと。
「クリニックに電話して『体外受精をしたいのですが、採卵時、保険適用で麻酔をしてもらえますか?』と聞きました。『痛いのは絶対に嫌なんです』って。そうしたら『麻酔をして痛くないようにしますから安心してください』と言っていただけたので、『じゃあ行きます!』と決断しました。このとき37才。もう1周期も無駄にしたくなかったので、クリニックに足を運んで『すぐにやりたいです!』。先生も『やりましょう』と言ってくださいました」
初診なので、改めて検査を受けてみると「異常なし」。AMH値も正常の範囲内になっていました。
「先生に『AMHの数値が心配なんですけど』と言うと、『みんなAMH値と年齢にとらわれすぎ』と言われました。『AMH値は変動するから、いいときもあれば悪いときもある。以前は悪かったかもしれないけれど、今はいいから大丈夫ですよ』と言われて、安心しました」すでに覚悟を決めていたこともあり、体外受精からのスタートです。
「自己注射と服薬で卵巣を刺激。その治療法が私に合っていたのか、1回目の体外受精で授かることができました。治療の前に半年間、妊活をお休みしてリラックスできたのもよかったのかもしれません」
優先事項を決めてクリニック選びを
クリニックを選ぶ際、“通いやすさ”と“痛くないこと”が大きな決め手となりましたが、ほかにもチェックポイントがあったといいます。
「以前通っていたクリニックの待合室は、照明が蛍光灯だったので目が痛くなっちゃったんです。だからあまり明るすぎない、落ち着いた雰囲気の照明がいいなと思いました。さらに待合室のレイアウトも、ほかの患者さんの視線をさえぎるような1人がけのボックスソファがあったり、みんなが窓のほうを向くように椅子が配置されていたり。患者さんへの配慮をすごく感じて、『ここなら通えそうやな』と思いました。妊活中はささいなことにもストレスを感じやすいので、ホームページなどで院内写真を見て雰囲気を確認することも大事だと思います」
実は、このアドバイスの裏には自身の苦い経験がありました。
「以前通っていたクリニックでは、妊娠判定を聞く部屋が会計と同じ場所にありました。会計を待つ人たちの目線の先に部屋があるから、妊娠しているかどうかを聞いて部屋から出るとみんなの視線を感じて…。私は『全然悲しくないですよ』みたいな顔をしていたけれど、やっぱり震えたし、すごくつらかったです。その点、最後に通ったクリニックはプライバシーがしっかり守られた空間設計だったので、ストレス緩和にもつながりました」妊娠に至るまで、院内の雰囲気も治療方針もさまざまなクリニックを渡り歩いた浜口さん。だからこそ、クリニックと相性が合う・合わないは人それぞれだと話します。
「私が合わないと感じたクリニックでも、友人にはぴったり合って『そこじゃなきゃ嫌!』なんてことも。私のように“痛くない”ことを重要視するのか、痛くてもいいから早く妊娠にたどり着きたいのか。待合室が明るいほうがいいのか、落ち着いた雰囲気がいいのか。待ち時間が長くても、患者さんが多い=人気のクリニックであることが自分の安心感につながるのか…。クリニックを選ぶ際はまず何を優先したいのか考えてみるといいと思います」
妊活に関わり続けてくれた夫に感謝!
夫婦で決断し、覚悟を決めて挑んだ不妊治療。出産を終えた今振り返ると、浜口さんにとってどんな時間だったのでしょうか。
「人生で一、二を争うくらい、しんどい時間でした。例えば受験だったら、すごく勉強して努力したらうまくいくかもしれません。でも妊活って、自分がどんなに努力しても反映されない。『不妊の原因は不明』と言われちゃうと、どうすることもできないわけです。妊娠しないかぎり、ずっと否定され続けているような気がして、すごくつらかったです」
治療がうまくいかないことへの焦りや苛立ち。気持ちが不安定になると誰かに相談したり話を聞いてもらったりしたくなるものですが、浜口さんは不妊治療をしていることを夫以外の誰にも打ち明けていませんでした。
「当時は気持ちが狭くなっていて、同情などもされたくなかったから。『子どもができないんや。かわいそうに』と思われるのは絶対に嫌だったんです。だから『子どもなんか考えてないよ』なんて軽口をたたきながら、“ハッピーなはまじゅん”を装っていました。今思えば、私自身が不妊治療をネガティブにとらえすぎていたのかもしれません。でも実際に治療をしてみたら、しんどいことはあったけれど、そこまでネガティブなことじゃなかった。いろんな経験をしたからこそ今があるとも思うので、妊活に無駄な時間はなかったと思っています」
「つらくて夫にあたり散らしたことも。それでも約3年間の妊活に無駄なことは何ひとつありませんでした」
親や友人にも相談できないとなると、頼れるのは夫だけ。
「夫は最初こそ他人ごとのような感じでしたが、徐々に私の大変さを理解してくれるようになり、ほぼ毎回、病院に付き添ってくれるようになりました。それなのに、うまくいかなかったとき、私は一方的に夫にあたり散らして、『私はこんなに悲しんでいるのに、あなたは悲しくないの!?』と言ってしまったんです。夫に『俺だって悲しいよ!』と言われて、ハッとしました。この人も闘っている、本当に子どもを望んでいるんだと改めて認識した瞬間でした」
実は今回の取材にあたり「夫にインタビューしてきました」と浜口さん。妊活中、印象に残っていることを聞いてみたそうです。
「私から『やたら“配慮しろ!”と言われていたこと』ですって。たしかによく言っていました(笑)。じゃあ、配慮するとはどういうことなのか?夫からは『這いつくばってでも妊活に関わり続けること』との答えを得ました。世の男性はみんなそうかもしれませんが、自分の体じゃないからピンとこないことが多い。だから妻に対して『クリニック選びも治療法も好きにすればいいよ』と思いがちだけれど、そうではなく、しつこいくらいに妊活に関わることが配慮につながるんじゃないかと夫は考えたらしいです。そこまでの思いでサポートしてくれた夫には感謝しかありません」
浜口順子さんの「これがあってよかった!」
浜口さんが妊活中の心の支えになったアイテム。
エピソードとともにお聞きしました。
夫からのプレゼント「お守りハンカチ」
初めての採卵を前に怖くて泣いていたら、夫が渡してくれました。アクセサリーだと採卵室で外さなきゃいけないけど、ハンカチならお守りとして持ち込めるんじゃないかと思ったみたい。
でも採卵日、これを握りしめていたら「私物は持ち込まないでくださいね」と注意されちゃいました(笑)。「1人じゃないよ」という夫の心遣いがうれしかったです。
イライラ対策!「リラックス用アロマ」
妊活に直接関係があるわけではありませんが、自分の心を穏やかに保つためのアイテムとしてニールズヤード レメディーズのアロマを愛用していました。
ロールオンタイプなので、「頑張っているのに、なんでうまくいかんねん!」とイライラしたときにサッと鼻に塗ったり、マスクの裏に香りをつけたり。心が落ち着いて、リラックスできました。
癒やしのぬいぐるみ「モーちゃん」
「モーちゃん」と名づけたぬいぐるみ。かなり汚れていますけど、これは私の涙と手垢です(笑)。治療がうまくいかず落ち込んだときは、モーちゃんを抱きしめて「今日もあかんかったわ」と、泣きながら寝ていました。
妊活中は心がギスギスしちゃうから、心に刺さったトゲを抜く作業が必要。癒やしグッズで自分をいたわることも大事だと思います。
●浜口順子さん Profile
1985年、大阪府生まれ。2001年、ホリプロタレントスカウトキャラバンでグランプリを受賞し、芸能界入り。バラエティ番組などを中心に活躍する。2022年夏、三重県に移住。現在はタレント、ラジオパーソナリティー、構成作家、ニュース情報番組のMCなどで活動中。また、ライブコマーサーとして国内外のコスメやファッションアイテムなども紹介している。私生活では2016年6月に結婚。2023年12月、第1子となる女児を出産。
●撮影/Hananojyo
●スタイリング/鬼束香奈子
●ヘア&メイク/馬地絵美
●構成・文/本木頼子
●ジュエリー/ポンテヴェキオ(ポンテヴェキオ 銀座並木通り本店)
※本誌掲載の内容は2024年8月19日現在のものです。以降変更されることもありますので、ご了承ください。