【FP監修】リアルな内訳で見る!不妊治療の費用&助成金ガイド
いざ不妊治療をスタートしよう!と思ったら、最初に気になるのは費用のことですね。
2022年から不妊治療が保険適用になり、自己負担分は3割になったけれど、実際はどのくらいの費用がかかるのでしょうか?
今回は、「不妊治療で『かかるお金』リアルな内訳+もらえる&戻るお金」についてFPの宮野真弓先生に伺いました。
不妊治療で「かかるお金」最新版 #2
※参考:「妊活たまごクラブ 初めての不妊治療クリニックガイド 2024-2025」
不妊治療のリアルな内訳、お見せします
とにかくお金のかかるイメージがある体外受精&顕微授精。実際に保険適用でいくらかかるのでしょうか。
★33万3472円
「妊活たまごクラブ」読者の不妊治療にかかった平均自己負担金額がこの金額です。
保険適用でかかった平均額。これなら無理がない?
※データは産後の方を対象とした妊活・妊娠・出産に関するWEBアンケート(n=314:2024年2月実施)によるもの:「妊活たまごクラブ」編集部調べ
卵の個数や先進医療をプラスするとどんどん上乗せされる!
不妊治療にかかる費用は、治療の内容ごとに異なります。まず「人工授精」は、一般不妊治療管理料や人工授精代がかかります。「体外受精」は、卵巣から卵子を取り出す採卵術代、精子を振りかけたり、顕微鏡を使って卵子と精子を受精させる費用、受精卵を子宮に戻す胚移植代などがかかります。また、「胚移植」は、受精卵を凍結保存して、採卵の翌月以降に行う「凍結融解胚移植」がありますが、凍結する際も保存管理料などが必要です。
「治療ごとに費用がかかりますが、採卵や顕微授精などは卵の個数によって加算があります。また、先進医療をプラスすると、さらにかかる場合があります」(宮野さん)
[人工授精]
●一般不妊治療管理料:750円(3ヶ月に1回)
●人工授精:5460円
[体外受精・顕微授精]
●生殖補助医療管理料:900円(体外受精周期ごと)
※施設によっては自己負担750円になります。
〈採卵〉
● 採卵術:9600円(卵子0個の場合)
[個数による加算]
・1個:7200円
・2~5個:1万800円
・6~9個:1万6500円
・10個以上:2万1600円
〈顕微授精〉
[個数により]
・1個:1万1400円
・2~5個:1万7400円
・6~9個:2万7000円
・10個以上:3万5400円
※新鮮精子加算:3000円(新鮮精子を使用して実施した場合)
※卵子調整加算:3000円(卵子活性化処理を実施した場合)
〈体外受精〉:9600円
顕微授精も実施する場合は4800円
※新鮮精子加算:3000円(新鮮精子を使用して実施した場合)
〈受精卵・胚培養管理料〉
[個数により]
・1個:1万3500円
・2~5個:1万8000円
・6~9個:2万5200円
・10個以上:3万1500円
〈胚盤胞(はいばんほう)培養加算〉
[個数により加算]
・1個:4500円
・2~5個:6000円
・6~9個:7500円
・10個以上:9000円
〈胚移植〉
●新鮮胚移植:2万2500円
●凍結胚移植:3万6000円
※アシステッドハッチング:3000円
※高濃度ヒアルロン酸含有培養液:3000円(実施した場合は加算)
〈胚凍結保存管理料〉
● 胚凍結保存管理料(導入時)
[個数により]
・1個:1万5000円
・2~5個:2万1000円
・6~9個:3万600円
・10個以上:3万9000円
● 胚凍結保存維持管理料:1万500円(年1回)
※参考/Shinjuku ART Clinic「治療費」
★令和6年度の診療報酬改定で何が変わった?
女性は、卵巣内の卵子の数を調べるAMH(抗ミュラー管ホルモン)検査が6ヶ月に1回、保険適用に。男性は、精巣内精子採取術で得た精子や重度乏精子症の場合、精子凍結が保険適用になりました。
【費用は自費!】先進医療をプラスする場合もあります
★先進医療って何?
妊娠率を上げるためにプラスで行う治療のこと。すべて自費診療ですが、「先進医療」として承認されている以下のような治療は、保険診療との併用が可能です。
※医療施設によって治療法の採用や料金が異なります。
IMSI:1万円
通常の顕微授精が200〜400倍で行うところを1200倍以上の倍率で行う顕微授精。
精子の形態を観察し、用いる精子を選定する。
PICSI:2万2000円
ヒアルロン酸によって成熟した精子を選別し、顕微授精を行う方法。
より正常な精子を選ぶことができて、受精率アップにつながる。
タイムラプス培養:3万円
受精卵の発育状況を一定時間ごとに撮影し、動画のように観察できる方法。
より移植に適した受精卵を見極めることができる。
内膜擦過(スクラッチ):1万円
子宮内膜にわざと傷をつけることで、着床しやすい子宮内膜をつくり出す方法。
複数回、胚移植をしても妊娠しない場合に用いる。
EMMA・ALICE:5万6000円
「EMMA」は子宮内膜細菌の種類と量、「ALICE」は慢性子宮内膜炎(しきゅうないまくえん)の原因となる細菌を調べる検査。着床しやすい環境を整える。
ERA:13万7000円
体外受精で良好胚(りょうこうはい)移植を何度行っても妊娠しないときに行う「子宮内膜着床能(ちゃくしょうのう)検査」。より適切に胚移植を行うタイミングがわかる。
意外にかかった?かからなかった?【不妊治療費 私の場合】
●サプリ代や文書料が地味にかかった
サプリメントに1ヶ月5000円。医療費控除(いりょうひこうじょ)の対象にならず、地味に痛い出費でした。先進医療は医療保険が下りたけれど、5枚分の文書料2万5000円を病院から請求された…。
●鍼灸で週2万~3万円、みるみるお金がなくなった!
1回1万円弱かかる不妊専門鍼灸へ。効果を持続させるために週2~3回の通院がおすすめと言われて、お金が飛んでいきました! これで授かるかもと思うと、やめられない。
●どうして着床しない!? 一つの検査に10万円超
体外受精&顕微授精ともに胚までできるのに、なかなか着床せず、いろいろな検査をしました。その費用がどれも10万円を超える上、保険適用外で出費が一気にかさみました。
●妊娠を継続するための薬代はすべて自費!
顕微授精で着床し、妊娠判定が出たあとは保険適用外。妊娠を継続するために、不妊治療クリニックから出された薬は、すべて自費! 一度に2万円もかかって驚きました。
●最初から体外受精にすれば半分の費用ですんだ?
自然妊娠にこだわって、あれこれ試しましたが、うまくいかず。結果的に1回目の体外受精で妊娠。治療費の半分は人工授精以前のものなので、最初から体外受精にすればよかった。
絶対に見逃せない!! 不妊治療でもらえる&戻るお金
保険適用だけでなく、各都道府県自治体や会社から助成金が支給される場合も。また保険適用によって、民間の医療保険の適用範囲も広がっています。
自治体の助成金
★住んでいる自治体が保険適用外の治療費を助成
国の助成金がなくなった代わりに、不妊治療費のサポートに力を入れている自治体が増えてきています。ぜひ広報誌やホームページで、お住まいの都道府県や市区町村の助成金を調べてみましょう。
◯青森県
2024年7月1日から、保険適用となる生殖補助医療の自己負担額を全額助成。県内だけでなく、県外で治療を受けても助成される。
◯富山県
「治療開始時の妻の年齢が40歳未満」の場合、保険適用外になる7回目以降の特定不妊治療に対して、上限30万円を助成。「男性不妊治療」も、1回につき上限30万円を助成。
◯京都府
保険適用の「不妊治療」について、自己負担額の半分を、1年度の診療につき上限6万円(先進医療を含む場合は上限10万円)、「不育症治療」は1回の妊娠につき、上限10万円を助成。「通院交通費」の助成もある。
◯福島県
「保険適用外の治療」は上限30万円、「保険診療と併用の先進医療」は上限10万円を助成。また、「保険診療の回数または年齢上限を超えたため保険適用外になる治療」は上限20万円、「不妊症検査」は上限3万円を助成。
◯東京都
「不妊検査」「一般不妊治療」にかかった費用を上限5万円で助成。「体外受精」「顕微授精」で保険診療と併用した先進医療にかかった費用の10分の7を上限15万円、「不育症検査」の費用を上限5万円で助成している。
◯広島県
「不妊検査」「一般不妊治療」の自己負担額の2分の1を上限5万円で助成。保険診療となる「特定不妊治療」「男性不妊治療」と併用した先進医療は自己負担額の2分の1を上限5万円、全額自費はかかった費用の7割を上限30万円で助成。「不育症検査費」の助成もある。
会社の助成金
★社員の不妊治療を制度でサポート
従業員が不妊治療に取り組みやすいように、助成金や就業時間制度の整備などで、不妊治療をサポートしている会社も増えています。まずは、勤務先の制度を確認してみましょう。
◯花王
2009年から治療の金銭的補助を行っている。治療と両立できるフレックスタイムや在宅勤務などの就業時間制度も。
◯オムロン
通算365日以内で取得できる「不妊治療休職制度」と2年間で通算20万円が支給される「給付金制度」がある。3年目以降も2年ごとに複数申請が可能。男女ともに利用できる。
◯メルカリ
一子あたりの上限金額(会社負担金額)は200万円まで補助。対象は社員だけでなく、社員の配偶者・パートナーも含む。
民間の医療保険の給付金
★人工授精や採卵、胚移植も手術扱いに
保険適用で「人工授精」「体外受精の採卵」「体外受精の胚移植」などが手術扱いとなり、手術給付金の対象に。先進医療特約がついていたら、先進医療も対象になる可能性も。
高額療養費制度
★上限額を超えたらお金が戻る
1ヶ月あたりの医療費が上限額を上回ったら、上限額を超えた分の医療費が戻る制度。1ヶ月ごとに計算されるため、月をまたぐ医療費は合算できないので注意。上限額は年齢や所得で異なり、年収約370~770万円なら約8万円。
医療費控除
★払い過ぎた税金を確定申告でバック
その年に支払った家族の医療費の合計が一定額を超えると、医療費控除が適用されて、確定申告で税金が戻る可能性が。対象となる医療費は治療費や薬代のほか通院交通費も。自家用車のガソリン代や駐車場代は対象外。
★クレカ払いに注意!
クレジットカードで支払うとポイントがたまりますが、使い方に注意。分割にすると利息がついてしまいますし、支払い期日と給料日のタイミングによっては、支払いが間に合わずヒヤリとすることも。確認が大事です!
【FP宮野さん】私も不妊治療で3人の男の子を授かりました
保険適用前に不妊治療を行い、3人の男の子を妊娠、出産したFPの宮野さん。
今、振り返ってみて、やってよかったこと、失敗したことは?
最初の2年はタイミング法でズルズルと…
宮野さんが不妊治療を始めたのは、29歳のとき。近所の産婦人科でタイミング法からスタートしました。
「当時はまだ20代という過信もあり、2年もタイミング法を続けてしまいました。30代になって、ようやく不妊治療クリニックに転院。人工授精に2回トライしたもののダメで、体外受精と顕微授精を経て、1人目を妊娠しました」
2人目は、1人目のときの凍結卵で妊娠。時間的にも費用的にも、それほど負担はなかったとか。
「2人目で、最初のときの凍結卵をすべて使い切ったので、3人目はもう一度採卵からスタートしました。でも、素人目に見てもあきらかに卵子の質が落ちていて。受精卵の粒はそろっていないし、数も少ない。1人目は受精卵が6、7個ありましたが、3人目は4個。それを1個ずつ使っていき、最後の1個で、これがダメなら、もう1回採卵するか、治療をあきらめるか、夫婦で話し合っていたときに妊娠しました」
難しかったのは、仕事との両立。
「フレックスや在宅など働き方を変えましたが、最終的には退職して治療に専念。ただ病院が会社と自宅の間にあり、通院には便利でした」
予算は1人100万円。かかった費用はトータルで250万円
振り返ってみると「最初の2年間はもったいなかった」と宮野さん。
「ただ最初から、夫が一緒に検査を受けてくれたのはよかったです。当時は保険適用がなく、助成金が支給される時代。わが家は所得制限に引っかかり、助成が受けられないとわかっていたので、不妊治療クリニックに転院を決めたときに、夫と治療の方向性を話し合いながら、1人100万円と予算立てしました。結局、1人目は150万円、2人目は30万円、3人目は70万円で、トータル費用は約250万円になりました。最初から不妊治療クリニックに行っていたら、4人目もトライしていたかもしれません!不妊治療は夫婦の協力なくしては取り組めないもの。ぜひ2人で足並みをそろえて、チャレンジしてほしいですね」
FP宮野さんの「やってよかった」
●最初から夫婦で検査を受けた
●1人100万円の予算を立てた
●夫婦で話し合って治療方針を決めた
FP宮野さんの「これは失敗」
●タイミング法を2年続けてしまった
FP宮野さん「3人の子を授かるまでの道のり」
●2008年(29歳、夫35歳)
産婦人科を受診し、不妊治療開始。タイミング法を2年続ける。
●2011年(32歳、夫38歳)
不妊治療クリニックに転院。体外受精と顕微授精で1人目を妊娠、出産。
●2013年(34歳、夫40歳)
1人目のときに凍結した受精卵で、2人目を妊娠、出産。
●2015年(36歳、夫42歳)
35歳のときに再び採卵し、4回目の胚移植で妊娠、出産。
●イラスト/AYUMI NISHIMURA
●構成・文/池田純子
※本誌掲載の内容は2024年8月19日現在のものです。以降変更されることもありますので、ご了承ください。