「出勤前や夜間の診療」に対応! 不妊治療クリニックを取材
「不妊治療専門クリニック」ってどんなところ? 普通の婦人科とはどう違うの?
すでに通い始めている人も、その内部をもっと知りたかったという人も多いはず。
知れば知るほど心強くなる、3つのタイプのクリニックを編集部がルポ。
今回は、仕事と治療の両立ができる「出勤前や夜間の診療に対応してくれるクリニック」をご紹介します。
「行ってみました!ルポ 不妊治療クリニックってどんなところ?」 #3
※参考:「妊活たまごクラブ 不妊治療クリニック受診ガイド 2020-2021年版」
自分時間を大切に ―電源やWi-Fiもあり、待ち時間も有効に―
不妊治療でいちばんの悩みは仕事と通院の両立。大切な時間を無駄にしないために、待ち時間の有効活用は大事な課題。
さながら電源カフェのように無料Wi-Fiも完備され、ノートパソコンを持ち込んで仕事する患者さんも少なくありません。
まるでシティホテル!診察室もラグジュアリー感
リラックスして過ごせるのは待合室だけでなく、リカバリールームはもちろん、診察室、内診台、採卵室に至るまでこまかな配慮が。クリニックで診察を受けているというよりホテルに滞在しているような気分に。
女性の体への負担がいちばん大きい採卵も、やわらかい間接照明の部屋で。
採卵後、胚移植後の回復室は、個室とリラックスチェアの部屋があります。
子宮鏡検査を行う内視鏡室。モニターで結果を見ながら検査を受けます。
初診時にも必ず座る内診台は落ちついた色調。
患者さんがリラックスできるさまざまな配慮が、緊張感をほぐしてくれます。
<ステップアップしたら・・・>待ち時間を短縮
★技術の力で、できるだけ待たせない
不妊治療で大変なことの一つが待ち時間の長さ。不妊の原因解明のため検査はつきものですが、検査結果を待つ時間が惜しい場合も。
最新技術の恩恵で、この検査結果待ちの時間を大きく短縮できることが、不妊治療患者にとってはありがたいポイントです。
採血によりホルモン値の測定ができる全自動化学発光酵素免疫測定装置
これを2台導入することで、血液検査の結果を遅くても30分以内に出せるようにしています。
受精卵育成監視システムGeri
日本でおそらく最大規模の10台を導入しています。
効率よく作業ができる整然とした培養室
不妊症看護認定看護師が4名
検査結果をわかりやすく説明してくれます。
男性も通いやすい
★採精室は4室。余計な待ち時間もなし
男性不妊の検査には、血液検査、精巣の触診・超音波検査、精液を採取しての検査があります。
精液検査は採精室で採る場合と自宅で採取して提出する方法を選ぶことも。採精室が多ければ、男性もクリニックでの待ち時間短縮につながります。
完全防音の採精室
動画再生モニターとゆったりしたソファがあります。
採取した精液を入れる容器
精巣から直接精子を採取する必要がある場合の手術室
体外受精講習会の動画配信
★説明動画で、検査・治療について理解
体外受精、内視鏡手術の必要性などについて、「体外受精講習会」があります。
通常は、施設内に完備されているセミナールームで定期的に開催されていましたが、現在は、受付に配布するDVDまたはオンライン動画で視聴することができます。
これは、受診していない人も視聴が可能(ただしパスワードが必要、申し込み制)。
●杉山産婦人科 新宿 中川浩次 院長
★立地も通勤に便利で最適な採卵時間帯と仕事時間をどちらも優先
お金のかかる不妊治療。でも働き続けるには時間の制約がきつく、仕事と通院の両立はいつも妊活の悩みのトップです。その解決策として、クリニックの立地や、診療時間帯が配慮されていることもポイントです。
中川浩次院長はこう説明します。
「不妊治療はタイミングが非常に大切。卵の状態がいいときに無理なく採卵、胚の移植ができるよう診療時間をフレキシブルに設定し、通り一遍でないオーダーメイドな治療が必要でしょう。たとえば、始業前の朝8時に来院をすることも、会社が終わってからも間に合う夜間診療など、仕事との両立を考えた診療時間は大切だと思っています」
さらに最新技術やスタッフの配置、受付・会計システムの合理化などにより、不妊治療にかかる時間の負担を減らすクリニックは、働く妊活カップルの強い味方になります。
総合待合スペースに掲げられた院長によるスローガン
「全ての患者さんに笑顔を、そして不妊治療を思い出に」
杉山産婦人科 新宿
「不妊治療に大切なカウンセリングとは、事実(検査結果)を伝えて、それに応じた治療の選択肢を提示し、最適なプロセスを提示すること。それが何よりも患者さんへの優しさだと考えています」と中川浩次院長。
■撮影/合田和弘
■イラスト/いいあい
■構成・文/関川香織