【妊産婦2,000人大規模調査PART1】 コロナ禍で配偶者や祖父母との絆を見直すママたちが増加!
新型コロナウィルス感染症拡大により、出産・産後へ不安を抱いていた人は約7割
妊娠・出産・育児ブランド「たまひよ」では、2020年11月、全国の乳幼児をもつママ約2,000人を対象に、2020年春以降における生活・意識調査を実施。その調査・分析結果を3回に分け、専門家のインタビューとともに紹介します。
第1回のテーマは「新型コロナウイルス感染症の出産育児への影響」。
恵泉女学園大学学長・大日向雅美先生にデータを見ていただきつつ、お話しを聞きました。
新型コロナウィルス感染症拡大で「不安」も拡大。健診の同伴・立ち会い出産は激減
日本国内で初めて新型コロナウィルス感染者が確認されたのが、2020年1月。その後、感染拡大防止のため4月7日に緊急事態宣言が発出され、場所によっては1か月以上自粛生活がありました。今回の調査に参加した0〜18カ月の子どもをもつママ約2,000人のなかには、緊急事態宣言中に出産した人も多くいます。
全員に「新型コロナウィルス感染症拡大による出産・産後へ不安」の有無を聞いたところ、66%の人が「不安があった」と回答。なかでも、20年5月~10月の出産のママでは88.5%と高く、大きな不安を感じていたことがわかります。
コロナ禍は妊産婦へのサポートにさまざまに影響。20年5月~10月の出産のママの場合、配偶者・パートナーが妊婦健診に同伴した割合は約50%で、感染拡大前に出産した19年5~10月出産のママの72%より大きく減少しました。
ほかにも、ここ数年、緩やかに増加傾向だった立ち会い出産が、20年5月~10月の出産のママの場合は激減と言っていいほど減少したこと、
里帰り出産の割合もコロナ禍で減少しており、「里帰り出産しない」を選択したママが従来受けていた地域からのサポートや有料サービス、知人、親戚(近場の実家含む)を受けられなかったという声が目立ちました。
また、里帰りするしないにかかわらず「配偶者・パートナーと配偶者とコミュニケーションが増えた」と答える人、「親にもっと孫を見せたいと思うようになった」人が多く、コロナ禍で配偶者・パートナー、祖父母との絆をより意識している様子がうかがえます。
妊産婦約2000人に大規模調査【コロナ禍の出産】実家頼みから夫婦二人中心の出産育児に
これらの結果をうけて恵泉女学園大学学長・大日向雅美先生は「コロナ禍によって物理的に人に会えなくなりましたが、それが結果的に心理的な距離を縮めたと読み取ることができるのではないか」とコメント。
「コロナ禍以前は祖父母の存在をありがたいと思う一方で、過干渉だったり子育てに対する価値観の違いなどのトラブルも少なくありませんでした。昨年は年末年始などの帰省を見合わせたご家庭が多く、その分、実家にお歳暮やクリスマス・カード、年賀状を送る人が増えたと言われています。さらに祖父母にもっと孫の顔を見せてあげたい、もっと近い距離で接したかったという思いが強く現れました。
これは、コロナ禍での数少ないプラス面の1つと言えるでしょう。今回のことがコロナ後の日本の育児のあり方、祖父母との関係性を、徐々に良い方向に変えていくかもしれませんね」(大日向先生)
コロナ禍によって得た気づきやコミュニケーション方法を、コロナ後の関係づくりに生かして
「コロナ禍によって生まれた“オンライン対面”は、相手の表情がより近くで見えたり、移動の手間がないといったメリットもあり、コロナ後もなくなることはないでしょう。今後はリアルとオンライン両方を使い分ける“ハイブリッド型コミュニケーション”が増えると思われます。家族でもそれらを上手に活用して、新たな関係をつくっていきたいですね。
一方で、医療体制や地域の支援のあり方、職場の理解といった出産育児をめぐる環境では、コロナ前から潜在的に見えていた問題が、さらに浮き彫りになったと思います。でも、この1年、コロナ禍で不自由な思いを強いられ、精神的にも経済的にもつらい思いをし、個人だけで頑張るのはもう限度です。
これからは行政と国と企業、そして、地域の人々が問題解決に向けて共生力を発揮してスピード感を持って行動を起こしていく重要性が高まっていくと考えます。」(大日向先生)
また、大日向雅美先生は「コロナ禍で出産・育児を祖父母に頼れなくなったことで、“夫婦で乗り越える大切さがわかった”という声を私も多く聞いています」といいます。
「実は私の次女も昨年7月、海外で初めての出産をしたんです。コロナ禍で私が行くことができなかったため、出産前はとても不安がっていました。ところが産後2週間もたたないうちに“大変なことがいっぱいだけど、彼と二人でできることがわかったから、お母様が来れなかったのは結果的によかった”と言われてしまいました(笑)。
出産前後は女性が最も不安な時期。その時に配偶者がしっかり寄り添ってくれると信頼や感謝が深まりますし、配偶者もその後の育児への協力や理解が高まる傾向があります。
コロナ禍で在宅時間が増え、“うちの夫がこんなに何もしない、できない人だと思わなかった”という声もありますが、コロナ禍で夫婦関係を見直すきっかけができたり絆を深めたというた人が多いのも事実でしょう」(大日向先生)
新型コロナウィルス感染症拡大の影響で、出産・産後での不安有無
不安と答えた人が過半数をこえ、コロナ禍では9割近くに。
妊婦健診での、配偶者・パートナーの同伴有無
健診の配偶者パートナーの付き添いは、1年前の同時期に比較し、コロナ禍は20%以上減少。
2017~2020年 立ち会い出産をした人の割合推移(%)
近年、ゆるやかに上昇していた立ち会い出産が減少。
立ち会い出産の有無
立ち会い出産はここ数年、緩やかに増加傾向でしたが、2020年は約64%で、前年から約7%減少。一見、わずかな差に思えますが、20年5月~10月の出産のママの場合では、「立ち会った」のは39.8%(うち、オンラインで立ち会ったが3.2%)。それ以前に出産した人が75%以上だったことを考えると、これも激減したことがわかります。
里帰り出産の割合は大きく変わらないものの減少、夫がサポートすることで「夫婦の関係」に変化が
里帰り出産をした人は約半数の56.8%で、1回目の緊急事態宣言解除前後の20年5~10月出産のママは52.8%と減っています。里帰り出産をしなかった人の理由としては、「パートナー・配偶者と離れるのを避けたい」との回答が2位で25.3%。多くのママが出産時期に、配偶者・パートナーによる心身のサポートを重視していることがわかります。
里帰り出産の有無
里帰り出産の有無は、コロナ禍で微減。
里帰り出産をしなかった理由
コロナ禍の影響もあってか、里帰りをしなかった人は、通常よりも地域や近所のサポートが得られなかったのが現状です。その分、配偶者・パートナーがサポートをしてくれたという声も少なからずあり、調査結果でも50.2%の方が「「配偶者・パートナーとコミュニケーションが増えた」と回答しています。
「配偶者・パートナーが子育てや家事 にかかわる時間が増えた」と答えた方も51.4%。ただし、逆に「配偶者・パートナーにもっと家事や育児を 積極的になってほしいと思うようになった」と回答した人も58.2%と多く、家事育児分担の進み具合はその背景とともに多様となっていると言えそうです。
配偶者・パートナーと コミュニケーションが変化した人
「親にもっと孫を見せたいと思うようになった」人が70.5%。コロナ禍で祖父母との絆をより意識
コロナ禍による気持ちや行動の変化については、1位が「家族の時間を大事にしたいと思うようになった」で84.4%。2位「外出や外食、人と会うことが思うようにできずストレスに感じるようになった」71.9%、3位「両親(義父母)にもっと孫の顔をみせたいと思うようになった」70.5%でした。
3位の「両親(義父母)にもっと孫の顔をみせたいと思うようになった」は、感染対策のため「高齢者と会うのを避けたい」51.7%を大きく上回っており、コロナ禍をきっかけに祖父母との関係を再認識した人が多いことがわかります。
新型コロナウイルス感染症の拡大期間・自粛期間を経験後の気持ちや行動変化
【記事監修】
恵泉女学園大学学長:大日向雅美 先生
Profile
40年余り、母親の育児ストレスや育児不安の研究に取り組む。NPO法人あい・ぽーとステーション代表理事として、地域の子育て・家族支援にも尽力されています。
http://www5a.biglobe.ne.jp/~mohinata/
【調査概要】
調査名 たまひよ妊娠・出産白書2021
調査実施期間 2020年10月29日~2020年11月2日
調査手法 インターネット調査
調査エリア 全国
調査対象者 20-39歳の女性で2019年5月~2020年10月に出産した女性 2060名
※グループ分け
20年5~10月出産 (緊急事態宣言解除前後、解除後)
19年11月~20年4月出産 (通常期・新型コロナウイルス感染拡大期 )
19年5~10月出産 (新型コロナウィルス感染症拡大前)