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近年、急速に注目を集める「卵子凍結」。でも…その中身は意外と誤解している人が多い、と専門家が指摘【産婦人科医】

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●画像はイメージです
Екатерина Скворцова/gettyimages

最近よく耳にする「卵子凍結」と「AMH」という言葉。不妊治療を検討している人や、現在、不妊治療中の人にはおなじみの言葉ですが、「その中身については意外と誤解をしているケースも多い」と産婦人科医の重見大介先生は言います。正しい知識を持つことで、自分にとってどんなメリットやデメリットがあるのか知っておきましょう。

「若いときの卵子を残しておきたい」という社会的な理由での卵子凍結

2022年4月から不妊治療が保険適用の対象になりました。そのため、不妊治療を検討するカップル、実際に治療をスタートしたカップルも多いでしょう。そのなかで産婦人科の重見先生には、正しい情報を伝えたいという思いがあります。

――「卵子凍結」のこれまでの流れについて教えてください。

重見先生(以下敬称略) 1980年代に世界で初めて凍結した未受精卵(受精していない卵子)を用いた妊娠・出産の成功例が報告されました。当初はがん患者さんなどが、抗がん剤治療前に妊娠する能力を残すために行われていましたが、やがて体外受精など一般的な不妊治療にも普及していきました。不妊治療では受精卵を凍結して使用しますが、何らかの理由で受精させられない場合には、卵子だけを凍結することができます。

卵子凍結は、日本ではここ1、2年で急速に注目を集めるようになりました。卵子凍結の対象となるのは、先ほどお話ししたがん治療前に行う「医学的な理由」と、個人的な理由や都合による「社会的な理由」があります。社会的な理由とは、しばらくの間、妊娠・出産は難しいと考えている女性が、加齢による卵巣機能の低下に備えて、若いときの卵子を残しておくことを目的としています。たとえばパートナーはいるけれど、いまは仕事に専念したい女性や、現状パートナーはいないけれど、将来の妊娠に備えて卵子凍結をするケースなどがあります。

卵子凍結を行った女性がその卵子を使う割合は意外に低い

卵子凍結をすれば、若いときの卵子を保存することができます。でもメリットだけではないようです。デメリットやリスクがあるとすれば、何があるのでしょうか。

――卵子凍結でよくある誤解とは、「卵子凍結すれば確実に子どもを持てる」ということでしょうか。

重見 それも大きな誤解の一つです。ある海外の研究では、凍結卵子を使った人は全体の4割弱、また実際に赤ちゃんを産むことができたのは3割弱だったと報告されています。また、凍結した卵子は若いときのものでも、妊娠するときは高齢妊娠になっている可能性が高く、一般的な高齢妊娠のリスク(流産、高血圧や糖尿病などの合併症)、体力的な問題も考慮しなければなりません。

また卵子凍結にはデメリットやリスクもあります。排卵誘発剤を使ったり、採卵のために針を刺したりするなど、体への負担があります。そして自費診療になるため、多くの場合数十万円かかるうえ、保管料も必要になるなど、経済的負担も避けられません。もちろん若いときの卵子を保存しておくことで、染色体異常などのリスクが低くなるといったメリットもあります。卵子凍結を考えている方は、これらのメリットとデメリットを考えたうえで判断するようにしましょう。

AMHって何? 不妊治療ではどんなタイミングで検査するもの?

AMH(抗ミュラー管ホルモン)検査とは、不妊治療で行われる血液検査の一つ。AMHがよく知られるようになった一方で、誤解も増えていると重見先生は言います。

――AMH検査は、どのようなものなのでしょうか。

重見 AMHは、成長途中の卵胞(らんぽう)内の細胞から分泌されるホルモンで、AMH検査でその数値を測ることによって、卵巣予備能という卵子の「量」を推定する血液検査です。よく「卵子年齢」と表現されることがありますが、誤解を招くため、これはあまりいい表現ではありません。

女性の卵子の数は生まれつき決まっていて、成長にともなって産生されることはなく、少しずつ減っていき、50歳前後の閉経の時期には、ほぼゼロに近い数値になります。AMH検査によって、残っている卵子の数がどのくらいなのかを検査で推定するのです。

AMH検査は不妊治療の過程で、ほとんどの施設で行われています。なぜなら、体外受精などで卵子を採るときに、AMH値が低いと卵子の数が少ない、採卵に時間がかかるなどの問題があるためです。体外受精を検討するもっと手前の段階で検査をしておきます。一般的な不妊治療では、タイミング療法や人工授精から体外受精へとステップアップしますが、AMH値が低かった場合には、早い段階で体外受精にステップアップする判断材料とするのです。

「AMH値が低い=妊娠率が低い」ではない

加齢と共に低くなっていくAMH値。その値につい一喜一憂してしまいそうですが、「数値だけで判断するのは危険です」と重見先生は言います。

――AMH値が低い人、高い人の差はどうして生じるのでしょうか。

AMH値は卵子の数を反映する数値なので、たしかに加齢とともに平均値が下がります。ただ、個人差があるのも事実です。その理由はまだ解明されていませんが、生まれた時点での影響は大きく、どういうペースで減っていくかも個人差が大きいです。またその人の生活習慣や食べ物などについては、卵子の「質」には影響を与える可能性はありますが、卵子の「量」に影響するかどうかはわかっていません。

一方でAMH値が高ければいいというわけではありません。AMH値が高い人のなかに、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS たのうほうせいらんそうしょうこうぐん)という疾患があるケースがあります。卵胞が卵巣のなかにたくさんでき、なかなか成熟せずに排卵が起こりにくくなる病気です。若い女性の6~8%にみられ、月経不順や排卵障害によって不妊の引き金になることもあります。

AMH値が低いと、妊娠しにくいのではないかと落ち込む女性がいますが、実は違います。卵子の「質」についてはAMH値で測ることができません。つまり、卵子の数が少なくても、卵子の質がよければ妊娠できる可能性は十分にあるのです。ですから、AMH値が低いからといって必ずしも不妊治療をすぐにしないといけない、というわけではありません。パートナーや家族とよく話し合って判断したほうがいいでしょう。

監修/重見大介先生 取材・文/樋口由夏、たまひよONLINE編集部

技術が進み、卵子凍結やAMHなどいままでには考えられなかった方法で妊娠・出産に進んでいくことが今後ますます増えてくるでしょう。「情報にふり回されず、正しい知識をもち、メリットやデメリット、リスクも含めて自分に必要かどうかを判断していくことが大事です」(重見先生)

●記事の内容は2023年8月の情報であり、現在と異なる場合があります。

重見大介(しげみだいすけ)先生

PROFILE
産婦人科専門医。公衆衛生学修士、医学博士。株式会社Kids Public産婦人科オンライン代表。大学病院の産婦人科で臨床を経験したのち、「女性の健康×社会課題」へのアプローチを活動の軸として、オンラインで女性が専門家へ気軽に相談できるしくみづくりや啓発活動、臨床研究、性教育などに従事。SNSなどでも医療情報を発信している。

『病院では聞けない最新情報まで全カバー! 妊娠・出産がぜんぶわかる本』

「妊娠・出産」をはじめ婦人科領域の正しいデータとエビデンスに基づく情報を厳選。女性の妊娠中の心身のケアや産後の回復など、女性の一生の健康によりそう本。男性にも読んでほしい一冊。
重見大介著/1650円(KADOKAWA)

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