今どき不妊治療クリニックはここまで変化していた!「待ち時間ゼロを目指すDX化」に取り組むクリニックとは?
2022年4月、不妊治療の保険適用がスタートして1年半が経ちました。費用が均一化したことにより、日本全国どこでも治療内容が同じになった、という声も聞かれる一方で、クリニックそれぞれで個性的な取り組みが広がっているようです。どんな変化が起こっているのか? 3つのクリニックを訪れ、取材しました。
今回は、待ち時間ゼロを目指すDX化と、人の手による細やかなケアの両面から取り組むトーチクリニック院長の市山卓彦先生にご回答いただきました。
今どき不妊治療クリニックはここまで変化していた!「『妊活たまごクラブ』編集長の突撃ルポ」 #2
※参考:「妊活たまごクラブ 初めての不妊治療クリニックガイド 2023-2024」
☆Keyword
●患者さま専用の受診アプリの導入
●ライフプランを一緒にサポート
●カウンセラー常駐でメンタルサポート
【Q】2022年5月オープンとまだ新しいですが、どんな思いを込めて開業されたのですか?
【A】通院の負担をできるだけ軽減し、通いやすいクリニックを目指しました
■市山卓彦先生(以下、市山先生)「不妊治療を受けている女性の約17%が離職せざるを得なかったというアンケート結果があります。つまり、不妊治療は心理的な負担はもちろん、時間的にも相当負荷がかかっています。こうした現状をなんとか変えたい、「先の見えないトンネルを歩いているよう」と例えられる患者さまの道を照らし、正しい方向に導くトーチ(松明)のような存在でありたいと、変動の時期に開院しました。」
診察室
不妊治療に関する相談はもちろん、パートナー間、それぞれ異なるニーズに対応するテーラーメイドの医療提供を実践している。
採卵室
最新機器を揃えた採卵室。他のART(生殖補助医療)施設や大学病院などで経験を積んだ医療スタッフが多く在籍している。
リカバリー室
採卵室に近い位置にある4床のリカバリー室。機能的でシンプルなつくりが特徴。
【Q】専用のアプリを使って予約から問診票の記入、そして会計までできると聞きました。
【A】予約から決済まではもちろん、検査結果も確認できます
■市山先生「受診アプリの導入は、予約から問診、決済までアプリ内で行うことで、通院の負担を大きく軽減し、仕事と両立しやすい不妊治療を提供することが目的でした。また検査結果をアプリから確認できることで、パートナーと共通認識を持つことができ、2人で協力して不妊治療に取り組めるしくみを整えています。」
【CHECK】受診アプリを見せてもらいました
アプリ内カレンダーの予約可能時間枠から診療内容と希望の日時を選択するだけで、診察の予約が完了。
(1)受診アプリで予約が簡単!
(2)問診票を事前に記載
(3)アプリ決済で待ち時間ゼロ
【Q】妊娠がゴールではなく、ライフプランも相談できるなんて心強いですね。
【A】ライフスタイルや家族計画に合わせた治療を提案しています
■市山先生「保険適用で経済的負担が軽減されたことを機に、年齢や体の状態、いつまでに子どもが何人欲しいかなどをヒアリングしながら、タイミング法、人工授精、体外受精など最適な治療法を提案、選択できるようにしています。将来の家族計画を一緒に話し、考えることで、今やるべきことが明確になると思っています。」
培養室
経験豊富な培養士が複数人在籍し、チームを組成。それぞれが培った技術を融合し、高め合うことで、高水準の治療を可能にしている。
【Q】さまざまな悩みや相談ごとに対応するため、カウンセラーを常駐させているのは患者さんにはうれしいですね。
【A】精神的負担が多い不妊治療にメンタルサポートは欠かせません
■市山先生「受診時に簡単な問診で、現在の「元気度」を10段階で評価。これによって、メンタルの不調を事前に察知することができるうえ、カウンセラーの介入、移行がスムーズになりました。また、カウンセラーは常駐しているので、困りごとや悩みごとなどをいつでも相談できるのも特徴です。」
【編集長check!】ムダをできるだけ排除して、治療に専念できる新規クリニック
院長はお産の救急現場から不妊治療まで、数多くの経験を積んだだけあって、治療だけでなく精神面のケア、そして将来のライフプランまでをワンセットとして考えて対応していることが印象的でした。
待ち時間ゼロを目指すDX化で、負担なく通いやすいクリニックの新しい形がますます広がっていきそうですね。
●撮影/合田和弘、鈴木江実子
●イラスト/丹下京子
●構成・文/飯田由美(BEAM)
※記事掲載の内容は2023年8月25日現在のものです。以降変更されることもありますので、ご了承ください。