無敵モードの無痛分娩、産んだ瞬間「気持ちいい!スッキリした!」。テレビ局社員で漫画家が語る出産のリアル【真船佳奈インタビュー】
テレビ東京の社員兼漫画家として活躍する真船佳奈さん。ブログやSNSで子育てや保活のエピソードの漫画を発信し、人気を集めています。真船さんに結婚や出産のこと、自身の経験を漫画にする思いなどについて聞きました。
結婚前から無痛分娩にしようと決めていた
――真船さん夫婦の出会いから、結婚までのことについて教えてください。
真船さん(以下敬称略) 夫と出会ったのは2018年の12月。私と彼の共通の友人が、1日ママをやっていた都内のバーで偶然出会いました。私はその日、飲み会後にそのバーに立ち寄り、かなり泥酔をして犬のセントバーナードの鳴きまねをしていたらしいんです。よだれをまき散らしながら「バウワウッ!バウワーーーウッ!」とほえる私を周囲の人が避けまくる中、ただ1人だけ好奇心で近づいてきたのが彼でした。
私は泥酔していて鳴きまねをしていたことも彼の顔もほとんど覚えていなかったんですが(笑)、でも連絡先は交換していたので、翌日からメッセージのやり取りをしたらめちゃくちゃ楽しかったんです。それで会おうということになって。会って話したらとても気が合うし、一緒にいて楽な人でした。
それに、泥酔して犬の鳴きまねをするというどん底の状態を彼にはすでに知られているから、この人だったら何にも隠さない素直な自分をさらけ出しても大丈夫だな、という安心感もありました。私たちは出会って1週間後につき合うことになり、7カ月後にプロポーズを受けて、11カ月後の2019年11月に入籍となりました。
――子どもについてはどんなプランを考えていましたか?
真船 挙式したらすぐに子どもが欲しかったんですが、コロナ禍だったために結婚式は2回延期に。2021年4月にやっと挙式できました。私はそのとき31歳だったこともあり、妊活を意識して妊娠検査薬をネットで大量に買ったり、不妊治療クリニックを受診して排卵の状態を検査してもらったりもしました。そしてタイミング法に取り組み始めて1カ月くらいで妊娠が判明しました。
――出産方法は無痛分娩を選んだそうですが、いつごろ決めたんですか?
真船 2018年にイギリスのキャサリン皇太子妃が、第3子の産後7時間で退院したニュースを見てからだと思います。公式発表はなかったのかもしれないけれど無痛分娩と言われていましたよね。イギリスは多くがそうだとか・・・。産後間もないのに完璧なメイクとハイヒール姿で登場したあの姿を見て、無痛分娩に決めたのは私だけじゃないんじゃないかな~。そのときは夫と知り合う前でしたけど、産後すぐであんなにも美しい笑顔を振りまく彼女の姿がすごく印象的で、結婚もしてもいなかったけれど、絶対に自分が赤ちゃんを産むときは無痛分娩にしようと決めていました。
「無痛分娩」「○○駅(居住地の駅)︎」「ごはんがおいしい」のキーワードで検索してみたら、無痛分娩をやっている産院が意外と少なかったんですが、その検索結果の中から、家から近い産院に決めました。
麻酔がきいてからは超余裕。LINEもできちゃう無敵モード
――無痛分娩での出産はどんなふうに進みましたか?
真船 計画無痛分娩で出産日が決まっていたんですが、臨月を過ぎたある日の妊婦健診で、先生に「子宮口が3cmくらい開き始めてるから今日の午後から入院してね」と言われ、その翌日に出産することになりました。入院した翌朝から陣痛促進剤を投与し始め、陣痛が強まって赤ちゃんが下りてきたら、麻酔を打って痛みをやわらげ、子宮口が全開大になったら分娩、という流れです。
この流れは産院によってかなり違いがあるそうですが、私が出産した産院では、陣痛が本当にがまんできないくらい痛くなってから麻酔を入れました。ただ、この「本当にがまんできないくらい痛くなる」のがどのくらいかもわからないし、数分感覚で訪れる陣痛は毎回がまんできないくらいの痛さ!あまりの痛さに、陣痛促進剤を投与してからすぐに「麻酔を入れてほしい」とナースコールを押しました。
麻酔を入れたら痛みがやわらぐかと思ったら、15分くらいしておしりがすごく痛くなってうんちがしたい感覚に。看護師さんを呼ぶとどうやらすぐ子宮口が全開大になっていたらしく、分娩準備に入りさらに麻酔が追加されました。
――陣痛がない出産の感覚とは、どんな感じですか? いきみのタイミングは?
真船 無痛分娩は痛みはないんですけど、おなかがギューッとしぼられるような、中から押されるような感覚はあるんです。だからその押される感じに呼吸を合わせていきみました。麻酔が効いてからはすごく頭がクリアになって、分娩台でLINEができるほど無敵モードに。コロナ禍で立ち会いができなかった夫とビデオ通話して雑談するくらい余裕がありました。そして、いざ赤ちゃんが生まれた瞬間には「気持ちいい!スッキリした!」と感じました。
でも、無痛分娩でも麻酔がきれたら会陰(えいん)切開の縫合の傷がめちゃくちゃ痛かったです。麻酔は分娩時だけだった、と思い知った感じです。
――コロナ禍の出産で夫さんの立ち会いもない、面会もできない状況で、心細さはありませんでしたか。
真船 そうですね。コロナ禍では妊娠中の両親学級もなかったし、産院も全個室で授乳室もなかったんです。だからほかの妊婦さんと話す機会もないし、仲間が1人もいない状態でした。そんな中でクニャクニャの小さい命のお世話をするといっても、すべてが初めてでわからないことだらけで不安しかありませんでした。
本当は夫にそばにいてほしかったし、つらい気持ちを聞いてほしかったけど、夫とやりとりできるのはLINEのメッセージだけ。私が今どんな感情かも伝わってないだろうな、とせつなかったです。世の中の状況だからしかたがないとわかっていても、やっぱり心細かった。いつも忙しそうにしている助産師さんたちには、なかなか相談できませんでした。
育児で孤独を感じたとき、リアルな出会いに救われた
――退院後は夫さんと2人で育児をスタートしたそうでしたが、大変だったことは?
真船 私の母は都内に住んでいるんですが私の出産当時は体調不良が重なっていて頼ることができなかったので、私が1年、夫が1カ月の育休を取って、夫婦2人で子育てをスタートしました。私と夫は基本的には仲よしで考え方も一致しているんですけど、でもいざ育児をしてみると、ちょっとしたことでお互いの心がすれ違って、ぶつかることが何度もありました。夫の育休が終わったあとには自分1人で育児をすることに孤独を感じたし、睡眠不足や忙しさでコミュニケーションが不足したりして、夫婦関係が崩壊しそうな危機もありました。
それで、一度夫とちゃんと向き合って話し合ってみたら、お互い自分なりに子どもに対して精いっぱい愛情を注いで育児をしようとしていたことがわかったんです。それからは、お互いがやりたいことや相手にしてほしいことはきちんと言葉にして伝え、やってもらったらちゃんとありがとうと伝え合えるようになりました。
――真船さんは育児で落ち込んだときにはどんなふうに乗り越えてきましたか?
真船 今は妊娠や育児のアプリがいろいろあるし、ネットにも情報がたくさんあるから、ちょっと不安になったらスマホですぐ調べることができますよね。子どもが熱を出したりけがをしたときも、すぐに調べられるのはすごく便利です。でも、産後数カ月して子育てでいちばん孤独を感じたときには、スマホは助けになりませんでした。
そんなときに区で開催された同じ月齢の赤ちゃんがいるママたちと話をするイベントに初めて参加しました。そこで集まった人たちと話してみたら、意外とみんな同じようなことで悩んでいるんだとわかりました。そのころ息子は3カ月でしたが、もっと早くこんな仲間と出会って話せていたら、笑い飛ばせたこともあったかもしれないな、って。自分と同じような立場の人とリアルにつながって話すことが、本当に救いになったと感じました。
悩んでいる妊婦さんに「1人じゃないよ」と伝えたい
――真船さんは、妊娠・出産の体験をコミックエッセイ『令和妊婦、孤高のさけび! 頼りになるのはスマホだけ?!』にまとめています。8月中旬の発売以来大人気で、すでに3刷になっているとか。爆笑エピソードも満載ですが、読者からはどんな反響がありますか?
真船 育児ってつらいことも大変なこともあるけど、「なんやねんこれ!」って笑えることもたくさんありますよね。それをピックアップして育児日記をつけるような感覚で描いています。読んでくれる人に笑って元気になってもらいたいな、という気持ちで描きました。
夫婦で読んでくれる人も多くて、男性から「妻が産後に言っていた意味がやっと理解できた」「夫側の意見に感情移入した」などと感想をももらっています。女性からは「私のことを描いたのかと思いました」「私の気持ちを言語化してくれてありがとうございました」と感想をもらっています。私が妊娠中には、コロナ禍で悩みを相談できる相手もいなくて不安で心細い時期でした。だから、今もし悩んでいる妊婦さんがいたら、その人にこの漫画が友だちのように寄り添って「1人じゃないよ」って伝えられたらうれしいです。
お話・イラスト・写真提供/真船佳奈さん 取材・文/早川奈緒子、たまひよONLINE編集部
「働きながら子育てしている女性は増えていると思うので、これからはサラリーマンの母としての生活の変化を発信していきたい」と真船さん。「自分が子育てしながら働くリアルな姿を漫画にして、共感してもらったり参考にしてもらえたらうれしいです」と話してくれました。
●この記事は個人の体験を取材し、編集したものです。
●記事の内容は2023年9月当時の情報であり、現在と異なる場合があります。
真船佳奈さん(まふねかな)
PROFILE
テレビ東京局員兼漫画家。2017年、AD時代の経験談をまとめた『オンエアできない!』で漫画家デビュー。平日はテレビ局員、休日は漫画家として活動している。2022年2月に出産。1児のママ。
『令和妊婦、孤高のさけび!頼りになるのはスマホだけ?!』
はじめての妊娠から出産、育児のドタバタ劇を描く育児エッセイ漫画。新米ママの情緒の乱高下の様子を独特のギャグセンスとスピード感で描く、爆笑&号泣必至の傑作。真船佳奈著/1210円(オーバーラップ)
「たまひよONLINE」にて、『令和妊婦、孤高のさけび!頼りになるのはスマホだけ?!』を数話限定で公開します。ぜひ、読んでみてください♪