赤ちゃんへの感染が心配な常在菌[カンジダ菌・B群溶連菌]とは?産婦人科医が解説
LightFieldStudios/gettyimages
人間の体に存在している微生物で、通常ならほとんど影響のない「常在菌」の一種が、体の抵抗力が弱ったときに増殖して害を及ぼしたり、まだ免疫力のない新生児期の赤ちゃんの体に深刻な症状を引き起こしたりすることがあります。妊娠中は、常在菌も軽視できません。産婦人科医の小川隆吉先生に、妊娠中に気をつけたい常在菌と、常在菌に起因する感染症について教えていただきました。
カンジダ菌による【カンジダ腟炎】
体の免疫力が低下する妊娠中は、常在菌であるカンジダ菌が増殖しやすくなるため、腟炎(ちつえん)を発症する人が多くなります。性行為でうつることもあるので、再発を繰り返す場合はセックスを控えること。また、悪化しするとかゆみが強くなるので、外陰部を石けんでゴシゴシ洗うのは避け、通気性のよい下着を身に着けましょう。
★主な症状
・外陰部のかゆみ・おりものの変化※
※外陰部や腟の強いかゆみ、豆腐かすやカッテージチーズ状のおりものがたくさん出ます。悪化してしまうと、外陰部に痛みを感じたり、腫れる場合も。免疫力が落ちたり抗生物質を服用したりすると、再発しやすくなります。
★妊娠・出産への影響
とくに大きな影響はありません。
★赤ちゃんへの影響
分娩時に赤ちゃんが感染すると、まれに口内でカンジダ菌が増殖し、鵞口瘡(がこうそう)という口内炎ができ、母乳やミルクを飲みにくくなります。
★治療法
抗真菌薬の腟坐薬と外陰部に塗るクリームを1~2週間ほど使用します。クリームは、肛門のほうまで塗るとより効果的です。
B群溶連菌(GBS)
B群溶連菌(GBS)は、腟内の常在菌の一つで通常は悪さをしません。しかし、分娩時に赤ちゃんに感染すると、ごくまれに赤ちゃんに重い症状を引き起こすため、ママが保菌している場合は、抗生物質の投与で母子感染を予防します。妊婦さんの保菌率は、10%といわれています。
★主な症状
ママが自覚できる症状はとくにありません
★妊娠・出産への影響
影響のないケースがほとんどです。
★赤ちゃんへの影響
分娩時に感染すると、肺炎や敗血症、髄膜炎(ずいまくえん)などを発症し、危険な状態に陥ることがあります。また、生後7日以降の発症では、精神発達障害や聴力障害、視力障害などが出る可能性も。
★治療法
分娩時にペニシリン系の抗生物質を点滴投与し、母子感染を予防します。生後、感染が判明したら、赤ちゃんに抗生物質を投与します。
ママにはほとんど影響のない常在菌も、新生児期の赤ちゃんが感染すると、深刻な症状を引き起こすことがあります。医師の指示に従って、予防や治療を行いましょう。また、妊娠中に心配な感染症には、このほか、食品から感染するものもあります。リステリア菌、トキソプラズマ症などにも注意してください。(文・たまごクラブ編集部)
■監修:小川クリニック 院長 小川隆吉先生
日本医科大学卒業。同大学産婦人科講師、都立築地産院産婦人科医長を経て、1995年より現職。セックスカウンセラーセラピスト協会会員、日本不妊学会会員。
■参考:たまひよブックス「いつでもどこでもHAPPY妊娠・出産ガイドBOOK」(ベネッセコーポレーション刊)
●記事の内容は記事執筆当時の情報であり、現在と異なる場合があります。