旅行のときに持っていくべき薬は?渡航先によっては持ち込みNGや申請が必要な場合も【薬剤師】
子連れで旅行するときには、さまざまな心配ごとがありますよね。「備えのひとつとして薬も用意しておきたいけれど、何が必要か迷ってしまう……」というママやパパも多いのではないでしょうか。
今回は、国内・海外旅行に持って行ったほうがいい薬の種類や、持っていく際の注意点を薬剤師がご紹介します。
旅行に持って行きたい薬の種類
子連れ旅行は、荷物が多くなりがちです。さまざまな種類の薬を持って行ければより安心ですが、荷物はできるだけ軽くしたいときもありますよね。
以下は、旅行に最低限持って行きたい薬の種類です。
かぜ薬や整腸薬
旅行に持って行く薬の種類は、急な体調不良に対応できるものを用意しましょう。
よくある体調不良として、疲れや天候の違いによるかぜ、食べすぎや食あたりによる胃腸の不調(腹痛、胃もたれ、下痢)などが考えられます。大人用と子ども用のかぜ薬や整腸薬を、それぞれ備えておくと安心です。
なかには、顆粒や粉薬の量を調整することで、大人と子どものどちらも服用できるかぜ薬や整腸薬もあります。旅行の際は、親子でいっしょに服用できる薬を活用するのもひとつの方法です。
乗り物酔いの薬
慣れない長時間の移動では、子どもが乗り物酔いを起こす可能性があります。普段は乗り物酔いをしない場合でも、念のため、乗り物酔いの薬も準備しておきましょう。
乗り物酔いの薬には、水といっしょに飲む錠剤やカプセル、ラムネやアメのように口の中で溶かす水なしで飲めるもの、そのまま飲めるドリンクなど、さまざまなタイプがあります。
酔ったときにすぐ服用するなら水なしタイプが便利ですが、人によっては味や感触が苦手と感じる場合もあります。そのため、子どもが抵抗なく服用できるタイプの薬を選びましょう。
乗り物酔いしやすいことがわかっている場合、事前に薬を飲むことで予防効果が期待できます。移動の30分ほど前に服用しておきましょう。
注意点として、乗り物酔いの薬は1日の服用回数が決まっています。服用回数は必ず守るようにしてください。
また、薬を飲まずに済むように、「前日に睡眠をしっかりとる」「満腹を避ける」「脂っぽい食べ物を避ける」「視覚的な刺激を避ける」「からだを締めつけない服装にする」など、乗り物酔いを予防したり和らげたりする方法も試してみましょう。
常用薬
慢性疾患で常用している薬は、旅行日程プラス予備の分を持って行くのがおすすめです。
飛行機の場合、飛行機への積み忘れや荷物を積んだ飛行機の遅延などによって空港で預けた荷物が遅れることがあります。常備薬は手荷物で持って行きましょう。
また、処方箋薬の場合は、お薬手帳もいっしょに持って行くと安心です。「荷物をあまり増やしたくない」「お薬手帳の紛失が心配」という人は、スマホアプリのお薬手帳を活用してもいいでしょう。
海外旅行で備えておきたい薬
海外旅行は、慣れない場所で体調を崩す可能性が高くなります。国内旅行のときよりも、しっかり薬を備えておきましょう。
使い慣れた薬を備える
海外旅行の際は、自分が日常で使う機会が多い、使い慣れた薬を持って行きましょう。普段あまり薬を飲まないという人も、解熱鎮痛剤や整腸薬、かぜ薬は備えておくのがおすすめです。
渡航先が東南アジアや中南米、インド、アフリカの場合は、下痢止め、高山病の薬(高地の場合)、マラリアの予防薬(マラリア発生地域の場合)も必要に応じて用意しましょう。なお、下痢止めを服用すると細菌やウイルスが排出されず症状が悪化する可能性があるため、使用には注意が必要です。症状が悪化した場合には、直ちに現地の医療機関を受診しましょう。
常用している薬は、旅行日数分プラス1週間分の予備を持って行くと安心です。
ただし、渡航先の国によっては、持ち込みできる薬の数量に上限があったり事前に手続きが必要だったりする場合があります。旅行前には、渡航先の薬の持ち込みルールを確認しましょう。
とくに、糖尿病のインシュリンの注射器、麻薬系や抗精神剤が含まれている持病の薬は、医師の診断書や事前の申請が必要な可能性があります。厚生労働省の「海外渡航先への医薬品の携帯による持ち込み・持ち出しの手続きについて」を、必ず確認してください。(※1)
予防接種を受けておく
渡航先によっては、日本国内とは異なる感染症に注意が必要な国や地域があります。その病原体に対する直接の治療法がないこともあるため、予防接種で防げる場合は、渡航前に受けておきましょう。
また、黄熱予防接種のように、国や地域によっては予防接種を受けていないと渡航できないこともあります。海外旅行の前には、薬の持ち込みルールと合わせて、予防接種についても確認しましょう。(※2)
旅行時の薬の注意点
以下では、旅行時の薬の注意点を3つご紹介します。
薬の使用期限や保管方法を確認する
使用期限が切れた薬のなかには、効果が十分に得られないだけでなく、副作用のリスクが高まったり毒性のある物質に変化したりするものがあります。
期限切れの薬は処分し、新しいものを用意して旅行に持って行きましょう。
また、使用期限内であっても、薬の品質を維持するには、基本的に高温多湿を避け、直射日光の当たらない場所に保管することが必要です。夏の車内のように高温になりやすい場所には、薬を放置しないようにしましょう。
海外旅行では市販薬はパッケージに入れたまま持って行く
海外旅行に薬を持って行くときには、渡航先で説明できる文書を携帯するのが望ましいといわれています。
その薬の成分や、どのような病気・症状で服用するのかわかるように、市販薬はパッケージに入れたまま持っていきましょう。
渡航先の言語で翻訳された添付文書のコピーや翻訳アプリなども用意しておくと、より安心です。
トラブルを避けるために処方箋薬はわかりやすくする
処方箋薬も市販薬と同じように、渡航先で説明できる文書が必要です。処方箋薬の場合は、商品名や薬剤名が記載された処方箋や説明文書のコピーと翻訳文を合わせて用意しましょう。国内旅行でも、飛行機に薬を持ち込む際にはお薬手帳や処方箋の写しなどの医薬品の情報がわかるものの携帯が推奨されています。
また、薬の種類がすぐわかるように、一包化している薬も、旅行分は本来の容器(シートやボトルなど)に変更できないか薬剤師に相談してみましょう。
なお、粉薬は、海外では違法薬物に疑われるおそれがあります。粉薬を処方されている人は、トラブルの可能性を減らすために、旅行のときはほかの剤型に変更できないか事前に医師や薬剤師に相談してみましょう。
薬を備えて安心して旅行を楽しもう
旅行の際は、急な体調不良に対応できる薬を備えておくと安心です。とくに、海外旅行の際には、荷物が増えることよりも安心を優先し、十分な量の薬を持って行きましょう。
今回ご紹介した薬の種類や持って行く際の注意点を参考に、しっかり準備をして旅行を楽しみましょう。
PROFILE
あんしん漢方薬剤師
山形 ゆかり
薬剤師・薬膳アドバイザー・フードコーディネーター。病院薬剤師を経て食養生の大切さに気付く。症状・体質に合ったパーソナルな漢方をスマホ一つで相談、症状緩和と根本改善を目指すオンラインAI漢方「あんしん漢方」で薬剤師を務める。
●あんしん漢方(オンラインAI漢方):https://www.kamposupport.com/anshin1.0/lp/?tag=211332f2tmhy00010088