2021年最新News 新型コロナウイルスと不妊治療、どう考える?
2020年の初めに起こった新型コロナウイルス感染症の世界的流行は、ワクチン摂取が進んではいるもののいまだに続いています。
生活様式が変わりつつある今、ワクチンや不妊治療とどうつき合って行っていけばいいのかについて、久慈直昭先生にお聞きしました。
※参考:「妊活たまごクラブ 不妊治療クリニック受診ガイド 2021-2022」
【News1】ワクチン打つ? 打たない?
●久慈直昭先生(以下、久慈先生) 「妊娠中にコロナウイルスに感染すると早産や帝王切開のリスクが高まります。現在使用されているワクチンは、mRNA(※)という新しいタイプのため、心配する方が多いですが、現時点では、ほぼ安全でありワクチンを打つメリットのほうが高いと考えられています。妊娠中でも合併症のリスクのある人は打ったほうがよいとされています」
――しかし、ワクチンを受ける側である私たちの体質は人それぞれ。不妊治療中の人は、担当医師と相談のうえ接種の判断をするとよいでしょう。
ワクチンを打つ時期ですが、
●久慈先生 「ワクチンは2回目のほうが、熱などの副反応が出やすいようです。そのため欧州生殖医学会では、2回目のワクチン接種後は数日あけて不妊治療をするよう推奨しています」
※mRNA…(メッセンジャーRNA)ワクチンで注射するmRNAは、数分から数日といった時間の経過とともに分解され人の遺伝情報(DNA)に組み込まれるものではありません
【News2】不妊治療、延期する?どう判断すればいい?
――未知のウイルスであった2020年に比べて、感染予防方法や対処法も確立されつつある今、不妊治療を再開する人も増えています。
●久慈先生 「不妊治療そのものの観点から言えば、治療は早いに越したことはありません」
――昨年度、不妊治療の延期をした人も多いと思いますが、
●久慈先生 「感染が流行している地域や、高齢者と同居しているなど、一人一人状況が異なるので、再開と延期のどちらがよいかは一概には言えません」
――国として、来年には不妊治療が保険適用になるという動きもあるので、経済的な理由があり、年齢的に余裕のある人は延期をするという判断もありそうです。
【News3】不妊治療時に気をつけたいこと
――日本産婦人科感染症学会は、「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)について、妊娠中ならびに妊娠を希望される方へ」というタイトルで、日常生活の過ごし方や、感染が疑われるときなどの対応について文書を出しています。基本的な感染対策は、妊娠していない人と同様です。
●久慈先生 「ワクチン接種は重症化を防ぐ目的なので、感染リスクや他人に移す可能性もゼロではありません。引き続き手洗いやマスクの着用、3密には気をつけた生活を送ってください」
日常生活
・不要不急の外出を避ける
・こまめな手洗いを心がける
・3密を避ける
・家族を含めて禁煙する
・十分な睡眠やバランスのとれた食事で、体調管理をする
・タオルや食器の共用を避ける
・家庭内でもできればマスクを着用して距離を保つ
家庭内に感染者がいる場合
・家庭内の感染者とは別室で過ごすなど接触を避ける
働き方
・時差通勤、テレワークなどで人との接触を避ける
通院時
――日本産婦人科感染症学会では、とくに不妊治療で通院する場合については触れていませんが、
●久慈先生 「体調に変化がない場合は、ご自身の判断で、いつもどおり不妊治療の通院を続けてもいいでしょう。不妊治療クリニックでは診療時間を調整して待ち時間を少なくしたり、引き続き感染予防をして治療にあたっています」
【News4】もしかして感染したかも?
――感染者の増加にともない、とくに都市部では、いつどこで感染しても不思議ではない状況です。
●久慈先生 「不妊治療中の人は、とにかく感染しないように注意することがいちばんです。変異株が次々に出てきていますが、基本的な感染対策は同じです」
――また、もしかしてという場合は、速やかに、相談センターなどに相談しましょう。窓口の名前は、自治体によって異なるので、事前に調べておくことが必要です。
●久慈先生 「大切なのは不妊治療後に妊娠したときに、とくにご自身や家族が感染しないように、細心の注意を払うこと。ワクチン接種前に妊娠した方は、妊娠後にワクチンを接種してもかまいません」
コロナウイルスに関するQ&A
不妊治療・妊娠・出産とコロナウイルス、気になる点を聞きました。
<Q1>大流行の期間は 治療はやめるべき?
ワクチン接種が進んでいますが、ワクチンの効力が切れれば、大流行が再び起こる可能性もないとは言えません。個人によって置かれた状況は異なりますので、夫婦間ではもちろんのこと、担当の医師と、どうするかをあらかじめ話しておくといいでしょう。
<Q2>不妊治療を中断中です。再開してもいい?
不妊治療は年齢との闘いなので、早いほうがいいに越したことはありません。お住まいの地域にもよりますが、感染者が多くないのであれば、移動中も含め、しっかり感染対策を行ったうえで治療を再開してもいいでしょう。心配ならまず医師に相談をしてください。
<Q3>凍結している受精卵に影響はありますか?
絶対にないとは言えませんが、どこのクリニックも、日ごろから設備に関する衛生面については、施設・人員の両面で万全の体制をとっています。ですから、凍結している受精卵などに新型コロナウイルスが何か影響を与えることはまず考えにくいと言っていいでしょう。
<Q4>妊娠・出産後のほうが心配です……
日本でも感染した妊婦さんの出産例が報告されていますが、症例が少なく、新型コロナウイルスと妊娠&出産に関してはわからないというのが実情です。神経質になる必要はありませんが、妊娠したら感染をしないように細心の注意を払って生活することが重要です。
<Q5>コロナ禍で、不妊治療全体に影響がありますか?
医療界全体では、新型コロナウイルスの影響でオンラインでの受診などが増えています。しかし不妊治療においては、血液検査や内診、超音波検査など対面でなければわからないことも多く、すべてがオンラインでの治療に切り替わるわけではないと考えられています。
■監修
●イラスト/桃色ポワソン
●構成·文/長谷川 華
※記事内容、日付、監修者の肩書、年齢などは掲載当時のものです。