健康保険が使える不妊治療「FT(卵管鏡下卵管形成術)」について、専門医に聞いてみた
不妊治療の保険適用について、「まだよくわからない」という人のために、妊活たまごクラブ編集長自らタイプが異なる2つのクリニックを取材しました。
これから不妊治療をスタートする人向けに、クリニックの様子もわかるレポートです。
今回は、健康保険が使える治療であるFT(卵管鏡下卵管形成術)について、プリューム レディース クリニック院長の松本由紀子先生にご回答いただきました。
不妊治療クリニックにズバリ聞きました!「健康保険が使える治療、併用できる治療」 #1
※参考:「妊活たまごクラブ 不妊治療クリニック受診ガイド 2022-2023」
教えてドクター! 松本由紀子先生
プリューム レディース クリニック院長。不妊治療専門「英ウィメンズクリニック」で副院長を勤めた後、2021年に独立して開業。自らも不妊治療の経験を持つことから、常に女性に寄り添う治療方針に定評がある。
●プリューム レディースクリニック https://plume-lc.jp
【Q1】健康保険が使える治療であるFT(卵管鏡下卵管形成術)って何?どんな症状の女性が受ける手術なの?
【A1】狭くなっていたり、詰まっている卵管の通りをよくし、自然妊娠をサポートするカテーテル手術です
■松本由紀子先生(以下、松本先生)「不妊治療をスタートするときに、まず受けて欲しいのが卵管の状態を調べる『子宮卵管造影検査』です。卵管に異常があると、高い割合で『妊娠しにくいこと』がわかっているからです。自然妊娠を希望される方で、卵管が狭くなっている(狭窄)、詰まっている(閉塞)と診断された場合、当院ではFT(卵管鏡下卵管形成術)をご提案します。実は以前から保険適用の手術なんですが、認知度が低いのが現状です」
【Q2】卵管が狭かったり、詰まっていると、自覚症状があるものですか?
【A2】自覚症状はありませんので、気になるかたは検査を受けましょう
■松本先生「残念ながら、自覚症状がないのです。卵管は精子と卵子が出合って受精し、約1週間にわたり受精卵を育てていく大切な場所。不妊の原因にはいろいろありますが、もし卵管の異常であれば、手術で狭くなったところや詰まっている部分を広げることができ、自然妊娠を望むことができます。自分の卵管の状態を知るためにも、まずはレントゲンによる『子宮卵管造影検査』を受けてみることをお勧めします」
【Q3】現在、不妊治療を続けていますが、卵管造影検査を受けていません。一度、受けるべきですか?
【A3】はい。一度、検査を受けてみることで、自然妊娠の可能性を探ることができます
■松本先生「『長く不妊治療を続けていたけど、原因は卵管の異常だった』と、当クリニックで判明した人も少なくありません。自然妊娠を望むのであれば、まずは卵管造影検査を受けてみることをお勧めします。また、ほかのクリニックで受けたことがあるけれど、結果を放置している…といった場合も、当クリニックにその結果をお持ちいただければ、ご相談に応じます。とにかく、『卵管に異常があっても手術で治すことができるんだ』ということをみなさんに知っておいてほしいですね」
【Q4】卵管造影は痛いって聞いたことがあるのですが…
【A4】当院で検査後に行うアンケートによると、ほとんどの女性が「痛みがない」と答えています
■松本先生「検査が痛いのではなく、腟の状態を見るために広げる器具、クスコ(腟鏡)のサイズが『大きすぎて痛い』という人が多いようです。そのため当クリニックでは、一般的なものより小さなクスコを使い、必要以上に広げず、痛みを最小限に抑える工夫をしています。検査後に痛みなどについてのアンケートを行っていますが、多くの方が『痛みがない』『痛みがほとんどない』と答えています」
【Q5】FT手術の所要時間はどれくらい?入院しなきゃいけないの?
【A5】手術の所要時間は30分程度で、午前中に行うため、半日で帰宅可能です
■松本先生「手術は直径約1mmの「卵管鏡」と呼ばれる細いカメラで、卵管の中を観察しながら行います。カメラのまわりにはやわらかなバルーンカテーテルが付いていて、子宮から卵管へと少しずつゆっくりと進めながら、狭くなった箇所や詰まっている箇所を広げます。所要時間は約30分。また費用は保険適用のため、高額療養費制度の対象になります」
【close-up】FT(卵管鏡下卵管形成術)の流れ(プリュームレディースクリニックの場合)
●検査
レントゲン(子宮卵管造影検査)で、卵管の状態を検査。卵管が狭くなっている「狭窄」、詰まっている「閉塞」と診断された場合、FT(卵管鏡下卵管形成術)を提案
●手術日予約
月経量が少なくなる月経開始5日目頃から排卵までの時期に手術日程を予約(月経の状況によって予約変更可)
●当日
手術は朝9〜10時の間に行い、所要時間は約30分。術後はリカバリー室で休んだあと、12時頃に帰宅が可能
手術台や実際のFT手術の様子
内視鏡と風船(バルーン)を内蔵した「卵管鏡」
【column】男性にとって重要な精液検査、「精液運動解析システム(SMAS)」も採用
高精細カメラと最新鋭のソフトウエアアルゴリズムで精子を自動解析。検体を顕微鏡にセットするだけで、運動精子数や精子濃度、精子の動きなどを瞬時に解析します(一部保険適用外)
●撮影/阿部吉泰(ブロウアップ)
●イラスト/丹下京子
●構成・文/飯田由美(BEAM)
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