不妊治療、半数が仕事を退職…。職場のキーパーソンに打ち明けるのもひとつの手
不妊治療の心のハードルはどんなものなのでしょうか。
今回は「不妊治療と仕事の両立」について妊活コーチの松本亜樹子さんに聞きました。
「初めての不妊治療クリニック「選び方&心得」これで怖くない!ガイド」 #5
※参考:「妊活たまごクラブ 不妊治療クリニック受診ガイド 2019-2020年版」
職場にずっと隠すのは困難。キーパーソンには打ち明けて
不妊治療は、卵胞の成長をモニタリングしたり、投薬の時間が決められたりで、平日・休日を問わずに指定された日時に受診しなくてはならないことが多いものです。
しかも、そのタイミングがいつなのか、直前にならないとわからず、予定が立てにくいものです。また、薬の副作用による体調不良だって起こります。
仕事と治療との両立は、非常に困難だと、たくさんの仲間が実感しています。初めのうち、まわりに言わずに有給休暇を使ってなんとかしていても、長引くとそれも難しくなります。
治療していることはプライベートなことなので、言いだしづらい職場環境もあるかもしれません。でも、ずっと隠しておくのは難しいと思います。せめて仕事で直接かかわる人、上司、同僚の中でもキーパーソンだと思う人には打ち明けてみましょう。
「あなただけじゃない」を味方に、切りだす勇気を
話を切りだしづらいと思ったら、前回の記事【「もしかして不妊かも?」ハッキリわかってしまうことが恐いを専門家に聞く】でお話しした、「あなただけじゃない」ということを味方にしてみませんか?
話してみた結果、別の同僚が治療していた、などといったことから、理解者がいて協力してくれたというケースもあります。実は打ち明けられた人自身も治療経験者だったり、親せきに治療していた人がいるといったこともあります。
大好きな仕事だからこそ、仕事を思いっきりできない自分がいちばんつらいはず。もちろん、限界まで言わないでおくという選択肢もあると思います。ただ、その場合、両立が困難になっていくと、自分自身を追いつめてしまい、仕事を辞めざるをえなくなることにもつながります。その仕事が好きだった人ほど、不本意でもあるでしょう。だから、話してみる勇気をぜひ持って! 好きな仕事はずっと続けてほしいです。
【こんなときにはこんな言葉】もしかしたら同僚や上司も「経験者」かもしれないと思って!
仕事が忙しい時間は避けて、「少しお話させていただけますか?」と時間を確保してもらいましょう。その上で、「不妊治療クリニックに通い始めたんです」と切りだしてみて。具体的に必要な配慮と、代わりにどんな働き方ができるかの提案も用意しておくと、落ち着いて話ができるでしょう。
【体験者アンケート】仕事をしながらの不妊治療は、どんなところが難しい?
●急に・頻繁に仕事を休むことが必要… 71.9%
●周期に合わせた通院が必要で、通院スケジュール管理が難しい… 47.3%
●まわりに迷惑をかけて心苦しい… 25.6%
●上司・同僚の理解を得られない・得難い… 13.0%
●治療のことを職場でカミングアウトすることが難しい… 12.7%
●ほかの人に代替が難しい職務内容… 9.9%
●治療中でも、仕事の都合で途中で断念せざるを得ない… 8.1%
●治療や投薬などの副作用で体調不良… 6.6%
●診療時間が平日日中のみ… 5.8%
●待ち時間が長い… 5.1%
※複数回答
回答で多かったのは、「通院日が予測できない」こと。そのため「仕事との調整が困難」であり、周囲に申し訳なさを感じたり、職場で誤解されたりして、職場にいづらくなるケースも。
職場でカミングアウトすること自体ハードルが高い、という声も多くみられました。
【体験者アンケート】働き方をどう変えた?
●退職した… 50.1%
●その他… 26.7%
●転職した… 21.4%
●休職した… 9.6%
●異動した… 7.0%
※複数回答
残念ながら現状では、「辞める」という選択肢が半数。これだけ不妊治療する人が多くなったのに、職場の理解はまだまだということがわかります。
データ出展:NPO法人Fine「仕事と不妊治療の両立に関するアンケートPart2」より)
【監修】NPO法人 Fine代表理事 松本亜樹子さん

アナウンサー時代から人材育成に携わったのがきかっけでコーチングを学び、現在は国際コーチ連盟認定プロフェッショナルサ―ティファイドコーチ(ICF PCC)として活躍。その一方で自身の経験を生かし、「NPO法人Fine~現在・過去・未来の不妊体験者を援する会~」を設立。
■イラスト/いいあい
■構成・構成/関川香織