「最先端技術と心ケア」が両立の不妊治療クリニックを取材
「不妊治療専門クリニック」ってどんなところ? 普通の婦人科とはどう違うの?
すでに通い始めている人も、その内部をもっと知りたかったという人も多いはず。
知れば知るほど心強くなる、3つのタイプのクリニックを編集部がルポ。
今回は、リラックスして治療が始められる「最先端の技術と心のケアが両立するクリニック」をご紹介します。
「行ってみました!ルポ 不妊治療クリニックってどんなところ?」 #2
※参考:「妊活たまごクラブ 不妊治療クリニック受診ガイド 2020-2021年版」
<ステップアップしたら・・・>明るい採卵室
★技術者が集中するためのほどよいリラックス感
診療を受ける場所で患者が緊張する必要はありません。
不妊治療をスタートしてすぐに、採卵室のような場所に入るわけではありませんが、いちばん緊張しそうな採卵室でもスタッフの気さくな笑顔があります。
ほどよいリラックス感と正確な医療のための空間。
胚移植後のリカバリールームが並ぶ廊下
肺移植後、休んだ場合と休まない場合では、妊娠率に差異はないという研究があるそう。
それでも、心も体もゆったり休めてほしいという配慮から、リカバリールームは個室に。
不妊治療の大まかなスケジュール例 (恵愛生殖医療医院の場合)
【人工授精(AIH)の場合】
(1)月経1~5日目ころ (必要な場合のみ)
完全自然排卵か排卵誘発剤を使用するのかを検討
(2)月経10~12日目ころ (必要な場合のみ)
排卵日を特定するために超音波検査で計測し、実施時間などを相談
(3)排卵日前日~人工授精当日
採取した精液を洗浄・濃縮して、子宮内へ直接注入
(4)排卵後
排卵と黄体機能の確認を行う
(5)妊娠判定
【体外受精の場合】
(1)排卵誘発開始 (月経3〜10日目ころ)
(2)採卵日決定 (月経9〜13日目ころ)
(3)採卵と受精 (月経11〜15日目ころ)
(4)受精卵の培養 (採卵から5日間)
(5)移植(新鮮胚移植・融解胚移植 ※移植周期の月経16〜20日目ごろ)
(6)妊娠判定 (移植から11〜14日目ころ)
気持ちに寄り添うスタッフ
★最先端技術のおかげで余裕が生まれる
診察を受けるとき、ゆったりした椅子に座れることは、とくに不安な初診では大事なポイント。
ここではカップルが並んで座れるベンチ型のソファで、医師の説明を受けられます。
さりげなく患者側に置かれたティッシュボックスにも、気持ちを出していい場所という印象が。
採血や注射などをする処置室
採血や注射などをする処置室は、広くはありませんが、患者さんが座る椅子は背もたれがあり、落ち着いて話を聞くことができます。
処置内容や自己注射の方法なども、専任の看護師がわかりやすく説明してくれます。
<ステップアップしたら…>最先端技術
★AIが正確に見守るからこその安心感
受精卵が分割して胚になるまでを見守り、適正に胚を凍結するのを管理するのは、手動ではなくAI(人工知能)。
スタッフは機械の操作につきっきりになる必要はなく、そのぶん人の手でなければできない仕事に専念することができます。
受精卵(胚)の発育を自動的に監視し、胚の質を判定するGeri(ジェリ)
AI機能を搭載し、受精卵(胚)の発育を自動的に監視し、胚の質を判定するGeri(ジェリ)。
タイムラプスで胚の発育の様子を見ることができます。
患者さん1人につき監視できる胚は16個まで。1台で6人分の胚が管理できます。
ロボット技術による全自動胚凍結機Gavi(ギャビ)
1回に4つの胚を凍結でき、従来かかっていた時間の約半分以下、20分で完了。
精子運動解析装置SMAS
精子運動解析装置SMASでは、高精細カメラとAIで精子の動きと数を正確にコンピューター解析。
顕微授精台は2基
精子を注入する針は、超音波による微振動を起こして卵を極力変形させずに穿刺し、卵に負担をかけないしくみで行われます。
こうした最先端技術をさらに、コンピューターで一元管理しています。
受付・待合室もリラックスできる場所
リラックス感のある受付と待合スペース。
安心して通院してもらうためにも、新型コロナウイルス対策も万全。
「タイミングを逃さずに治療を続けてほしいです」と林院長。
●恵愛生殖医療医院の院長 林博 先生
★機械に任せられる時間をスタッフが患者さんと話す時間に
最新のAI技術を投入した治療室というと、人の体温を感じない場所の印象があるかもしれません。実はこうした技術の導入は、スタッフが患者さんとの対話の時間を確保するためでもあります。
ほかのどんな医療現場でもそうですが、安全であることは第一。とくにミスが絶対に起きてはいけないのが生殖医療です。
正確性と作業に時間をかけることは別のことと考え、スタッフの時間に余裕を生み出すことで、患者さんにリラックスして治療を受けてもらうことを優先しているクリニックもあります。
恵愛生殖医療医院の院長・林博先生は不妊治療経験者。だからこその配慮があります。
「私自身も6回の顕微授精と移植を行い、4回の流産を経て、子どもを授かりました。そうした経験者という立場からも、患者さんの気持ちを大切に考えた医療を心がけたいです」
■恵愛生殖医療医院
埼玉県富士見市の恵愛病院に併設されていた生殖医療外来がスタート地点。
通院の負担が少しでも軽くなるようにと配慮している林博先生。世界最先端の次世代培養室AI-Laboをいち早く取り入れています。
■撮影/鈴木江実子
■イラスト/いいあい
■構成・文/関川香織